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〈同胞法律・生活センターPART2 A〉 医療、介護の改革の中で-上-

 はじめに

 今年はトリノ冬季オリンピック、サッカーW杯開催の年。世間はスポーツの祭典でにぎわっているが、その裏では高齢者の生活を脅かす出来事が始まる。いや、もうすでに昨年秋から始まっているのだ。日本政府は今月10日に医療制度改革関連法案を閣議決定した。主たる内容は、後期高齢者(75歳以上)の医療費の負担金を一挙に倍増させるもので「年金で老後はゆとりの生活」は根底から揺るがざるをえない内容になる。すでにその前段として、介護保険による施設入所者が家で生活するために必要な食費、光熱費なども同等に徴収する法案を可決し、昨年10月よりホテルコスト(居住費、食費の保険外負担)として利用者から徴収しはじめた。こうなっては、高齢者は病に倒れて医療や介護を受けるどころでなく、一生就労を余儀なくされるかもしれない。

 超高齢化社会をむかえて

 あと10年もすれば団塊世代が高齢者となり、日本においては4人に1人が65歳以上の高齢者となる。今春の医療保険及び介護保険制度改革、報酬改定により高齢者の生活が脅かされることになる。今回、同時改正を機に医療と介護の改正部分を検証し、とりわけ在日高齢者の影響についてシリーズとして3回に分けて考えてみる。

 介護保険制度が創設され早くも6年が経とうとしている。診療報酬(※1)は3年に一度、介護報酬(※2)は2年に一度、改正することが決められている。すなわち今年2006年は同時改正の年でありこれは制度創設後初めてのことである。改正により患者(利用者)は窓口負担が変わることになり、保険医療機関や介護保険施設側も報酬のいかんにより一喜一憂するのである。一方、今春施行される障害者自立支援法(※3)では、福祉サービスを利用する障害者に原則1割負担が求められる。

介護保険制度の中身

 入所施設の食費、居住費(部屋代)を全額利用者負担に

 昨年、介護保険施設入所者のホテルコストの導入によって利用者の所得(年金収入、同居家族の所得)に応じて非課税世帯は3段階の軽減措置がとられた(保険料区分、別表参照)。しかし段階によっては従来の負担に比べて明らかに増加する。(洪東基、ケア・マネージャー、共和病院医療福祉課)

洪東基:1978年3月、大阪朝鮮高級学校卒業。同4月、医療法人同友会共和病院就職。現在同医療福祉課課長、NPO法人生野南同胞生活相談センター副所長、大阪市生野区策定委員会委員、大阪医療社会事業協会副会長、介護支援専門員。46歳。

用語解説

 (※1)診療報酬:医師の診療行為に対して医療保険から支払われる報酬。 手術や検査などの診療行為に対し、医療保険は病院などの医療機関に診療報酬を支払う。医療制度改革の中で、診療報酬の引き下げが大きな課題にあがっている。 現在の医療保険制度は、すべての国民が国民健康保険などのいずれかの医療保険に加入する「国民皆保険」となっている。加入した医療保険に保険料を納める代わりに、病院などの医療機関で診療を受けたときには、医療費の7割〜8割程度を医療保険で負担し、患者本人の負担が軽くなる仕組みだ。 それぞれの診療行為には公定価格が決まっており、医療機関は診療報酬明細書(レセプト)を提出して医療保険の支払い機関に医療費を請求する。社会保険診療報酬支払基金などの機関は、レセプトを審査したうえ、請求のあった医療機関に診療報酬を支払うという流れとなる。 このような仕組みを悪用し、医療機関が不正請求や水増し請求をして、医療保険をだまして金銭を受け取るといった事件もあとを絶たない。 診療報酬は、物価や人件費などの変動に合わせ、2年に一度のペースで改定されている。厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会で改定案をまとめ、点数表示された公定価格は、厚生労働大臣が官報で告示する。

 (※2)介護報酬:介護保険給付の対象となる各種サービスの費用の算定基準は、医療保険の「診療報酬」にならって「介護報酬」といわれる。表示は地域保険を前提とする地域別単価であることから「点」ではなく「単位」となっている。介護サービスを提供した事業所、施設は、そのサービスの対価として、保険者である市町村から介護報酬の支払を受ける(介護報酬の請求事務は事業所ごとに行う)。もっとも、各事業所、施設がそれぞれの市町村から介護報酬の支払を受けるのは事務手続きが煩雑になることから、各都道府県の国民健康保険団体連合会が代行して審査、支払を行う。介護報酬額は在宅サービスにおいてはサービスの種類ごとにサービスの内容、事業所が所在する地域などを考慮した費用であり、施設サービスでは入院、入所者の要介護度や施設が所在する地域などを考慮した費用となる。3年に一度改定(見直し)する。

 (※3)障害者自立支援法:支援費制度の財源確保が困難なため、今後、障害者本人および生計を同じくする家族に介助サービス費用や医療費などでかなりの自己負担金を求めるというもの。厚生労働省はいまだ公式に介助派遣サービスの一時間当たりの単価は発表している。しかし、介助を多く必要とする重度の疾病患者や障害者は上限額を支払わなければならないことは確実で、本人及び家族への経済的負担は深刻となる。また、重度障害者医療費免除も廃止され、今後障害者が病院などにかかった場合、1割の医療費を支払わなくてはならない。さらに介助サービスの内容、支給時間などの決定は認定委員会という誰かもわからない専門家たち≠ノよって決められることになる。つまり、介助サービスを利用する障害者たちは1カ月の外出時間や入浴回数などを他人によって決められることになると等しい。

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△介護保険施設による「保険料区分」

ア.多床室(2人部屋以上)

対象者 保険料区分 1割負担 居住費 食糧 負担合計
生保受給者 第1段階





老齢福祉年金 15.000 9.000 24.000
課税年金収入額と合計所得が80万円以下の方 第2段階 15.000 9.600 11.700 36.300
2段階以外の方(年金収入が80万円超266万円未満の方) 第3段階 24.600 9.600 19.500 53.700

課税世帯

第4段階 37.200 9.600 41.400 88.200
イ.従来型個室
対象者 保険料区分 1割負担 居住費 食糧 負担合計
生保受給者 第1段階 14.700   14.700





老齢福祉年金 15.000 14.700
(9.600)
9.000 38.700
(33.600)
課税年金収入額と合計所得が80万円以下の方 第2段階 15.000 14.700
(12.600)
11.700 41.400
(39.300)
2段階以外の方(年金収入が80万円超266万円未満の方) 第3段階 24.600 39.300
(24.600)
19.500 83.400
(68.700)

課税世帯

第4段階 37.200 49.200
(34.500)
41.400 127.800
(113.100)

単位:(円)

[朝鮮新報 2006.2.21]