top_rogo.gif (16396 bytes)

広島・尾道 1世オモニたちの集い 「クムビニョ会」を訪ねて

 女性同盟広島県東部支部尾道分会の1世ハルモニたちが毎月必ず集まる会がある。「クムビニョ会(금비녀회)」−「1世オモニたちの集い」という名で1991年の1月22日から始まった。それから毎月22日に欠かさず集まり15年が経った。互いの顔を見て健康や家庭でのことを話し合い、朝鮮料理をつつきながら他愛のない話で盛り上がり親ぼくを深めている。「これがあるからみんな元気。楽しみにみんな待っとる」。ハルモニたちの元気な笑い声が響く現場を訪ねた。

気兼ねなく、楽しい、生きがい

広島朝鮮歌舞団のメンバーとの楽しい交流

 22日の正午、ハルモニたちが集まった場所は三原市本郷町にある李花聲さん(83)の家だ。河川敷に位置し、隣には車が走る道路が見える。辺りに人が住んでいる気配はなく、住居といえば李さん宅しかない。当時の1世同胞に、住む場所がいかになかったかの歴史を教えてくれる場所でもあった。

 普段は、女性同盟東部支部の徐朝子副委員長兼尾道分会長(57)が経営する焼肉店に集まることが多いが、今回は李さんの家に集まることになった。

 机いっぱいに並べられたキムチ、チヂミなど朝鮮料理をほおばりながら、話に夢中のハルモニたち。当然ビールもすすむ。

 「そりゃ100歳まで生きたいわ」と語るあるハルモニに、李さんは「みんなに迷惑かかるからあんまり長生きしちゃいけん」と冗談ですかさず返すとその場は笑いの渦に包まれた。そんな屈託のない会話が続いた。

「クムビニョ会」のハルモニたちの楽しみは若い人たちとの語らいである

 広島朝鮮歌舞団は初めてここで慰労公演を行った。団員たちはハルモニたちの手をとり、民謡とチャンダンのリズムに合わせて一緒に歌って踊った。ハルモニも久しぶりの朝鮮の歌にオッケチュムを踊り、お皿と箸でリズムをとった。自分の孫の年にあたる若い団員たちの公演に「本当にありがたいわ」と笑顔を浮かべていた。

 団員の黄優鮮さん(28、舞踊手)は、「同胞の家で公演するなんて初めて。1世の同胞たちとこうやって近くで目線を合わせての公演がとても大切なものだと感じた」と語る。

 「クムビニョ会」の前身は「1世ハルモニたちの集い」。91年から始まった。当時は女性同盟尾道支部の行事だった。尾道、三原、本郷分会があり、同地域に住んでいたハルモニたちがたくさん集まった。尾道支部は6年前に福山支部と統合し、東部支部となっている。

 70〜80歳になるハルモニたちは電車、バス、タクシーなどを利用し集いに訪れる。送迎はなく、そのパワフルさに圧倒される。食事会や年に1回の旅行だけでなく、情勢の学習、時には日校生の公演などにも参加することもある。

 3代目会長の韓今菜さん(80)は、「集まって健康状態をお互いに確認して、話をすることがとても大切」とほほ笑む。「22日に行事が終わっていくらも日にちが経っていないのに、『まだ次来ないの?』なんて話し合ったりしてね。それだけみんなこの日を楽しみに待ってる」。

 今は、会をしっかり支えていこうと50代の女性たちがサポートしている。

 徐朝子分会長は、「みんなが楽しみにしているからなくしてはいけない。若い人たちで支えていきたい」と語り、去年の2月から手伝いに来ている朴善子さん(51)は「1世のハルモニたちは長く付き合っていくことがとても大切ですから」と語る。

 女性同盟広島県本部の李京順顧問は、ハルモニたちをずっと見守ってきた一人だ。「ここに集まるハルモニたちの苦労は、計りしれないものがあった。こうやって月に1回集まって陽気に過ごす姿を見ると、しっかりこの会を支えていかなくてはと思う」と感慨深げだ。

 「この場をミニデイハウスのような形にしていきたい」と語る女性同盟県本部の呉栄順委員長。「今後、看護師を呼んで健康チェックをしたり、もっと楽しめる場を提供していきたい」と考えている。

 忙しく動きまわる李花聲さんに台所の脇で話を聞いた。「ここに来ているみんなは30、40年もの付き合いがあるし、新しく出会った人でも15年も付き合っとる。なんの気兼ねもせんし、楽しいんや。それが私の生きがい、みんなの生きがい」と屈託のない笑顔を見せた。(金明c記者)

[朝鮮新報 2006.3.27]