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そこが知りたいQ&A−植民地支配下、朝鮮半島出身者の遺骨問題 日本政府の実態調査はどうなってるの?

各地で「ゼロ回答」続出 ようやく昨年から着手 不備相次ぎ再調査

 日本の植民地支配下で朝鮮半島から強制連行され、各地で犠牲となった朝鮮人の遺骨に関する日本政府の実態調査が昨年から行われている。しかし、調査不備が相次いで明らかになるなど、依頼を受けた自治体や寺院などから不満が噴出した。厚労省は今年に入り、遺骨問題の専門部署として人道調査室を設置。1月23日には再度、各自治体や寺院に調査依頼を行った。北海道、群馬県、茨城県、神奈川県下では新たな情報や手がかりがみつかっている。

 Q 朝鮮半島出身者の遺骨問題とは?

 A 日本の植民地支配下で朝鮮半島から強制連行され、各地の戦場、軍需工場、炭鉱などで働かされ、犠牲となった朝鮮人の遺骨問題だ。数十年間も日本各地に放置されてきた。日本の国策として連れてこられ命を落としたにもかかわらず、日本は遺族に通知すらしなかった。厚生労働省や自治体が管理していた遺骨に関しては、無断合葬や粉砕処理、偽物の安置といった信じがたい事実も発覚しており、労働現場付近に埋まったままのものも多い。創氏改名、そして関係省庁が資料を公開しようとしていないことにより遺骨、遺族探しは困難を極めている。南朝鮮政府の要請を受けて、日本政府はようやく重い腰を上げ、昨年から実態調査に取り組んだ。

 Q 遺骨、遺体の数は。

 A 朝鮮新報は昨年、北海道から沖縄にいたるまで調査し、遺骨、遺体、名簿、過去帳などから7千数百人分の情報を確認した。だが、それはごく一部でしかない。朝鮮人の元軍人、軍属は、厚生労働省の発表によると総数24万2341人、うち「戦傷病死者」は2万1909人。一方、1953年作成の公安調査庁の資料では、総数36万4186人、うち死亡、行方不明が1万6363人とされている。

 いわゆる「民間」の強制連行については、日本政府は過去に約67万人という数字を提示したが、百数十万人以上というのが定説だ。犠牲者は、専門家の間では5万人から6万人とされている。日本外務省北東アジア課が62年2月19日に作成した資料では「4万6306+α」(45年3月現在)との数字も示されている。しかし、広島、長崎の原爆、東京、大阪大空襲などの犠牲者については全容が明らかにされていない。

 Q なぜ遺骨が残っているのか。

 A 解放後、南朝鮮には約9000人分の「遺骨」が返還されたが、位牌だけのものが多く、後に本人が生きていたことが判明したケースもある。また、解放直後に同胞が南朝鮮に持ち帰ったか、あるいは近年、送還された遺骨が数千人分あるとされているが、北には1体も返還されていない。日本はこれまでにばく大な資金を投じて戦没者の遺骨発掘調査を行ったが、朝鮮人については一度も正確な調査を行ってこなかった。「民間」の強制連行に関しては、日本政府と関連企業の責任のなすり合いによって放置されてきた。北海道や九州の炭鉱、各地の労働現場で働かされ事故や病気で命を落とした朝鮮人に関しては、まともな墓も造られず付近の山林に放置されたまま今でも発掘されていないケースも多い。

 Q 日本政府の実態調査はどこまで進んでいるのか。

 A 日本政府は昨年、各自治体、強制連行関連企業、全国の寺院に調査と情報提供を依頼した。だが日本政府の調査に取り組む姿勢、調査、返還のガイドラインがあいまいだったため、自治体では混乱が生じ、遺骨の存在が明らかであるにもかかわらず「該当なし」と回答するケースが相次いだ。結果、昨年9月の集計では約900人分しか得られなかった。今年に入り、厚労省は遺骨問題の専門部署として人道調査室を設置、1月23日には再度調査依頼を行った。しかし、人道調査室のメンバーはたったの3人で、調査依頼も何ら強制力をもたずあいまいなまま。またも自治体から不満が噴出している。

 Q どのような対応、調査が必要なのか。

 A すでにみつかっている遺骨については、何よりもまず、日本政府関係者が現場に足を運んで事実を調べ、遺族に直接謝罪するよう努めなければならない。そのうえで強制連行、強制労働現場周辺や寺院に遺骨が存在しているのかしていないのか、調べる必要がある。強制連行被害者、目撃者などの証言、寺院にある過去帳、自治体が管理している埋火葬許可証などが強力な情報源だ。厚労省やすべての関係省庁が総力をあげて調査し、資料や名簿をすべて公開、全容を明白にする必要がある。(李泰鎬記者)

[朝鮮新報 2006.4.11]