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朝鮮人被爆者協会 厚労相に要請書、人道的措置強く求める

 朝鮮の被爆者団体である「反核、平和のための朝鮮人被爆者協会」は、人道的措置を速やかに講じるよう求める要請書を川崎二郎厚生労働相あてに提出した。要請書は3月30日、平壌で行われた同協会の総会で採択されたもの。在外被爆者の支援を続ける金子哲夫元衆議院議員が仲介し、12日に担当者に手渡された。15日、広島市役所で会見した金子氏は、「政府による在外被爆者救済措置が進む一方、国交のない北朝鮮の被爆者は放置されている」と現状について説明した。

「二重三重の被害者」

 要請書は、朝鮮人被爆者に対する日本政府の無責任な態度と差別的で非人道的な処置をこれ以上座視することができないと述べながら、朝鮮人被爆者は広島や長崎において被爆した数万人の朝鮮人のうち、日本の敗戦後、九死に一生を得てさまざまなルートで祖国に戻ってきた人々だと指摘。彼らは現在も被爆の後遺症による精神的、肉体的苦痛に苛まれ、そのうちの多くがすでに亡くなったと強調した。

北南の被爆者が集まった日本の過去清算を求める国際連帯協議会第3回会議(2005年9月、平壌) [朝鮮中央通信=朝鮮通信]

 また、被爆者らは過去、日本帝国主義の強制連行政策によって、核の被害まで被った二重三重の被害者であり、日本政府は当然、被爆者に対する国家的な謝罪と補償をなすべき国際法的、道徳的義務を負っていると強調。日本政府は自国の被爆者には「援護法」等を制定して定期的に調査を行い、被害補償、治療支援の名目で毎年数千億円を支給しているにもかかわらず、朝鮮人被爆者に対してはいかなる対策も講じていないと指摘した。

 要請書は、日本政府が遅まきながらも昨年4月、在外公館を通じて外国人被害者の健康手当申請を受け付ける措置を取ったが、朝鮮の被爆者には通報すらしなかったと指摘。すでに死亡した被害者に対する補償問題を伏せたばかりか、国交のある国の一部の被爆生存者にいくばくかの金銭を手渡すことで、外国人被爆者への補償問題をうやむやにしようとする茶番に過ぎないと非難した。

 また、朝鮮の被爆者はほとんどが70〜80歳の高齢者であり、重い後遺症の中で晩年をすごしているとしながら、被爆の遺伝的影響により子孫にも精神的、肉体的苦痛が引き継がれているため、朝鮮人被爆者への補償問題は国際法的な見地からも、日本による過去の被害者の人権回復と治療という見地からも、これ以上遅らせることのできない問題と強調した。

 そのうえで、日本政府が引き続き朝鮮人被爆者について傍観し、自らの国際法的義務や道徳的責任を回避しようとするならば、国際的にさらに激しい非難と糾弾を浴びるだろうと述べながら、日本政府が心から謝罪、補償し、@朝鮮人被爆者に関するあらゆる文書、資料を直ちに公開すること、A朝鮮人被爆者のための治療に必要な専門的な医療設備や支援金の提供などの人道的措置を取ること、などを強く求めた。

政策是正へ他団体と連携

 同協会は要請書のほかにも、4月に「朝鮮人被爆者問題と関連した調査報告書」を発表。被害者の発生経緯と被害状況などについて詳細に言及しながら、朝鮮人被爆者を支援するための「特別法」の制定などを求めた。

 被爆者のリ・ケソンさん(65)は、「『被爆者援護法』をはじめとする日本政府の援護措置は、朝鮮在住の被害者を念頭においていない不十分なもの」であり、「私たちに残された時間は限られている。被害者たちが望んでいるのは、自分たちが受けた苦痛をこれ以上次世代に引き継がせないためにも、日本政府が誤った政策を是正し、補償することだ」と指摘した。

 同協会によると、これまで把握された被爆者の総数は1953人だという。そのうち生存者は約900人と見ているが、「この数はあくまで登録されたものであり、諸般の事情から正確な実態を把握するには至っていない」(協会関係者)。

 協会では今後、日本国内の被爆支援団体や反核平和運動団体、総連の関係機関と連携を取りながら、日本政府の政策是正を促す活動を展開する予定だ。

[朝鮮新報 2006.6.22]