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「朝鮮新報」配達

 ある総聯支部委員長の「朝鮮新報」配達に同行した。この支部では4人で百数十軒を回る。この日、委員長はおよそ30軒。入り組んだ路地と商店街、さらに大通りを挟んで広範な住宅街を自転車で走り回る。午前中に行事があったため配達は昼の炎天下で行われた。

 ほとんどの家が留守で息つくまもなく走り回った。委員長は配達しながら配達先の同胞を一人ひとり紹介してくれた。家族をたどると必ずと言っていいほど知り合いに行きつくのは同胞社会のおもしろいところ。大学時代の先輩の実家や以前に取材した同胞の家、なかには当日の新報に掲載されていた行事に参加していた同胞の家もあった。まさか取材した記者本人が配ったものとは思うまいと、委員長と談笑した。

 委員長は、玄関に自転車がないのを見ては「顧問は病院に行ったのか」などと心配しながら配達する。委員長にとっては何十年、何百回と回ったコース。同胞の様子を思い浮かべながら汗を拭おうともせずひた走る姿に迷いはない。

 配達も終盤。あまりに入り組んでいて、3軒目くらいからどこを走っているのかわからなくなっていた記者は汗びっしょり、息もあがってお尻が痛い。二周りほど年上の委員長は余裕の笑みを浮かべている。首を痛めてから右腕の痺れが治まらないと言っていたはずなのに…。

 強がってみせたわけではない。後輩を思う支部委員長の心温かいエールだったのだろう。「この人たちが自信を持って配達できる新報を作ろう」。あらためて決意した瞬間だった。(泰)

[朝鮮新報 2006.6.28]