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7大陸最高峰に挑戦中の鄭義哲さん 「最大の目標」難関マッキンリー登頂に成功、残すは3つ

「来年までにセブン・サミット制覇」

 本紙既報のように7大陸最高峰(セブン・サミット)の登頂に挑戦中の鄭義哲さん(34、東京都在住)が、昨年3月のアフリカのキリマンジャロ(5895メートル、タンザニア)、オセアニアのコジウスコ(2230メートル、オーストラリア)に続いて、新たに2つの山の登頂に成功した。山頂の「統一旗」と共に写る鄭さんの写真はこれで4枚目。「とても精神が充実しているし、今が一番気力に満ちている時。残り3つ。来年中には制覇したい」とその決意は固い。

「凍る魔の山」

アラスカのマッキンリー山頂で「統一旗」を広げる鄭義哲さん(6月)

 鄭さんは、昨年12月にアルゼンチンのアコンカグア(6960メートル)、今年6月に「最大の目標」と掲げた北米大陸最高峰・アラスカのマッキンリー(6194メートル)登頂を果たした。

 「自分の総合力を試す格好の山だったし、単独での登頂は今後の大きな自信になった。自分の中で一番大きな目標だった山を登頂できて本当にうれしい」

 昨年5月に一度登頂に失敗している。やむなく下山した自分が許せなかった。その時からマッキンリーへの思いはいっそう募った。「次は必ず制覇する」と心に誓った。

 マッキンリーは8848メートルもあるエベレストを登頂するより難しいとも言われる。別名「凍る魔の山」。とにかく苛酷な環境で知られる。

 北極に近いため天候がすぐに変わり、マイナス60℃という観測記録もあるほどで、想像を絶する寒さとの戦いが続く。道はつねに氷河の上を歩いているような感覚、真っ白な雪の下に隠れるクレパスが大きな口を開けて待っている。そこに落ちると生きては帰れない。

 気がつくと周りが真っ白になる「ホワイトアウト」の現象が起こると、見えるのは自分の手足だけ。一緒にいた仲間が突然消えるわけだ。普通の人はこれを聞いただけで足がすくむが、世界から年間約1000人の勇敢なクライマーが訪れる。登頂率は5割。無残にも凍傷で手足をなくす人もいれば、命を落とす人もいる。

 それだけに鄭さんは今回の登頂に腹をくくっていた。「遭難、救助に関する生命保険もかけたぐらいですから」。

情熱を「山」に

アルゼンチンのアコンカグア山頂で(昨年12月)

 マッキンリー登頂のための訓練を、2月に日本の富士山、3月〜4月の約3週間はネパールのローチェシャール(8400メートル)の5250メートルのベースキャンプにまで登って、「6000メートルの山に登れる体を作って万全を期した」。

 短期決戦の1週間での登頂を試みた。荷物も軽量にして着替えは手袋と靴下だけ。6月8日にスタート。それから順調に事が運び、4日間で5250メートルのハイキャンプまで一気にいった。サミットまであと一息だったがここからが長かった。「マッキンリーはそう簡単に登頂させてはくれなかった」。

 登っても天候が悪く下山も数度に渡った。下山したら自分のテントが1000メートル下まで吹き飛ばされ、大事なものがなくなるというハプニングにも見舞われた。さいわいレンジャーがキャンプ地に確保していたためテントを取りに下山した。

 その間、借りた緊急用の寝袋があまりにも寒く、「この時、事の重大さに気付いた」。食料、燃料の節約、水を作るのに3時間もかかる…。そんな毎日を繰り返して18日、やっとの思いでハイキャンプに戻った。1000メートルを登るのに9時間半もかかった。

 19日、山頂へ向かったがホワイトアウトにやられ下山。「今回も無理なんじゃないか…」。そんな事が頭をよぎった。再チャレンジの20日、天候がよく登りは順調だったが途中、「デナリパレス」という5500メートル地点での強風により、現地の人が「これ以上進むのはクレイジーだ」ということでみんなが引き返した。

 しかし、鄭さんは一人だけ残った。「下から人が来るまで待とう」。するとどんどん天候がよくなり一気に山頂へ。12日目の快挙だった。

 極寒の地で過ごしたため鼻と手が軽い凍傷にかかり痺れが残ったが、大きな傷にならずに済んだ。「このために1年間やってきた。この感動は言葉にならない…」。

 鄭さんの頭の中は寝ても覚めても山のことばかりだ。経営するカフェは従業員に任せっ放し。とにかく今は時間も労力もお金もすべて「山」に注ぎ込む。

 「人生は一度きり。やらないで後悔するより、やって後悔した方がいい」。そして続けた。「自分の心の中にはつねに7大陸最高峰制覇という目標があって、それを実現させて初めて自分の中でゴールできる」。

 「最近行くことの意味が少しわかった気がする」−その意味を探しに、残り3つの山に挑戦する。そして7月初旬、ロシアのエルブルース(5633メートル)へ向かった。

 順調に行けば年末には南極のビンソンマシフ(4897メートル)、来年には世界最高峰、アジアのエベレスト(8848メートル、ネパール)に挑戦する予定だ。(金明c記者)

[朝鮮新報 2006.7.20]