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遺骨問題全国集会 「韓国、朝鮮の遺族とともに」各地で開催

強制連行犠牲者の遺族ら悲痛な訴え 「遺骨手に祭祀したい」

南の遺族らと北の遺族らの写真(7月29日、東京集会)

 朝鮮人強制連行犠牲者の遺骨問題解決に向け日本の平和市民団体と宗教団体が約1カ月にわたり28カ所で開催する全国集会「韓国、朝鮮の遺族とともに−遺骨問題の解決へ2006夏」が各地で行われている。強制連行された肉親の遺骨や資料を探し求める遺族の「生の声」に、参加者たちは熱心に耳を傾けた。

 7月28日、集会の全国実行委員会が招請した南朝鮮の遺族8人と実行委員、日本の国会議員らの参列のもと、曹洞宗壇信徒会館(東京都港区)で追悼会が行われた。総連中央の高徳羽副議長と民団中央の夫昇倍副団長がともに参列した。

 追悼会では、旧日本軍軍属として強制連行され解放直後に「浮島丸爆沈事件」で犠牲となった全壽巌さんの遺骨と北海道に強制連行され犠牲となった10人の同胞の位牌を前に、曹洞宗の有田惠宗・宗務総長(全国実行委員会共同代表)らが法要を行い、遺族らが朝鮮式の祭祀を執り行った。

 全壽巌さんの息子の全承烈さん(64、全州市在住)は、遺族を招請し祭祀を行えるように尽力してくれた主催団体と曹洞宗関係者に感謝し、「父の遺骨を故郷に持ち帰りたい」と心境を語った。同時に、日本政府に対し「なぜ遺骨が祐天寺にあるのか」「なぜ60年以上も遺骨のないまま祭祀をせざるをえなかったのか」、謝罪とともに文書できちんと説明してほしいと訴えた。

60年の「恨」晴らして

400人が参加した東海集会(7月30日)

 追悼会後、衆議院第2議員会館(東京都千代田区)で院内集会と記者会見が行われた。遺族らは日本の国会議員や記者たちに、肉親を失い遺骨も受け取れないでいる悲痛な思いを伝え、日本政府が遺骨問題に真摯に取り組むよう訴えた。

 強制連行された父が長崎県の伊王島の炭鉱で亡くなり遺骨が南朝鮮の「望郷の丘」に安置されていたことが昨年明らかになった魚根栄さん(63、ソウル市在住)は、「遺族に伝えないまま遺骨が物のように扱われたことに納得がいかない」と訴えた。

 また、父が強制連行され解放直前に亡くなっていたという崔圭Gさん(78、全羅北道在住)は「このような集会は本来、日本政府が開くべき。60年以上も積もっている遺族の恨を一日も早く晴らしてほしい」と訴えた。

 全国実行委員会の代表らは日本政府が北側遺族らの入国を拒否したことに対し強く抗議した。南側遺族らも「同じ遺族として彼らの怒りと悲しみを思うと胸が張り裂けそうだ」として、日本政府の非人道的な対応を非難した。

 この問題では、朝鮮人強制連行真相調査団、強制連行・強制労働犠牲者を考える北海道フォーラム、真宗大谷派(本山、東本願寺)なども、入国拒否を非難する声明を発表しており、日本の国会議員からも非難の声が挙がっている。

 全国実行委員会と遺族らは日本政府に対し、遺骨調査を人道的な見地から誠意をもって行うことを求めると同時に、一方的に無期延期した南朝鮮政府との共同実地調査を予定通り実施し、北側遺族の入国拒否を即時撤回するよう訴えていく。

北の遺族、ビデオで

 集会は7月29日の東京を皮切りに、各地で行われている。

 各地の集会では、入国拒否された北の遺族3人の証言ビデオが上映されている。ビデオはフォトジャーナリストの伊藤孝司さんが2001年から朝鮮で撮影したもの。肉親が強制連行され犠牲となった遺族らが、父や夫の帰りをいつまでも待ち続けた家族の悲しみや一家の主を失った苦労について語っている。

 父が軍属として強制連行された金勇虎さん(69、平壌市在住)は「アボジがトラックに載せられ連れて行かれたときがオモニにとって(夫との)最後の別れとなってしまった…」と声を詰まらせる。

 14歳の時に婚約したばかりの夫が連行され障害を負って戻ってきた申金女さん(75、咸鏡南道)は、生前の夫から聞かされた証言を生々しく伝える。申さんの夫は、日本で米軍の空襲にあったとき、「朝鮮人は出て行け」と防空壕から追い出された。逃げる朝鮮人が火を消そうと飛び込んだ貯水池は「血の海になってしまった」と話していたという。

日本自ら事実明らかに

 遺族の証言や思いを聞いた集会の参加者らは、「このようなつらい思いをしている遺族が何万人、何十万人といることを考えると胸が痛い」(東京)、「遺骨問題や強制連行の問題が現在進行形の問題であることをあらためて知らされた」(愛知)、「遺骨問題を外交問題にすべきでない」(神戸)などと感想を述べた。

 東京集会であいさつした恒久平和議員連盟の近藤昭一幹事長(民主、衆議院議員)は「遺族が『遺骨がどこにあるのか』『持って帰りたい』と思うのはあたりまえのこと。日本が自ら歴史の事実をはっきりさせるときがきている」と述べた。

 全国実行委員会の内海愛子共同代表は「一体一体の遺骨には朝鮮植民地支配の歴史がつまっている。一人一人が背負っている歴史的事実を記し学ぶべきだ」とし、遺骨問題解決に取り組んでいく決意を述べた。

 総連、民団、日本の市民団体、仏教界、朝鮮学校などから約400人が参加した東海集会(7月30日、名古屋市)では、総連、民団、市民団体などで構成される「朝鮮半島出身者遺骨調査会」(仮称)の発足について発表された。また、愛知朝鮮中高級学校の生徒らが公演「ハラボジ、ハルモニが残してくれたもの…」で朝鮮の歌や踊りを披露した。(取材班)

[朝鮮新報 2006.8.3]