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〈解放61周年 「過去清算」諸問題〉 被害者遺族 置き去りに

 朝鮮の解放、日本の敗戦から61年が経った。61回目の「8.15」は、過去を反省しアジアの友好、平和を目指す勢力と、過去をわい曲し再び軍国主義の道を歩もうとする勢力の衝突が顕在化した一日となった。なかでも注目されたのは「靖国問題」。小泉首相をはじめ日本政府高官らの靖国参拝は、過去の清算を蔑ろにする日本政府の立場を象徴するものとなった。日本の侵略戦争による被害国とその犠牲者、遺族らの思いがいつになったら伝わるのか。

日本軍「慰安婦」問題−「死ぬのを待っているのか」

遺骨問題解決を求め日本政府に要請を行った南の遺族ら

 8月7日、日本軍性奴隷被害者の朴永心さんが亡くなった(享年85、平安南道在住)。日本によって人生を狂わされた女性が、無念を晴らせぬまま生涯を閉じることになった。朴さんは亡くなる前、「恨みを晴らしてほしい」と家族らに訴えたという。

 朝鮮・日本軍「慰安婦」および強制連行被害者補償対策委員会は14日、談話を発表。日本政府に対し「被害者たちが死亡することで過去の犯罪の責任から逃れられると打算し時間稼ぎをしている」と指摘。「われわれ朝鮮人民はみな、日帝による被害者であり遺族である。代を継いででもわが民族が強要されたすべての人的、物的、精神的被害の対価を必ず受け取る」とし、一日も早く過去の清算に取り組むよう求めた。

 南朝鮮に住む被害者のハルモニたちも、日本大使館前での「水曜デモ」とともに、9日には日本、カナダ、オーストラリア、米国など世界27カ所で開催された世界連帯集会に参加。「日本政府は自分たちの死を待っているのか」としながら、国連とアムネスティ・インターナショナルの勧告に従い被害者たちに謝罪し補償するよう訴えた。

遺骨問題−各地で集会、遺族の声に涙

 日本軍「慰安婦」にされた被害者は20万人とも言われる。生存者たちは高齢で、近年相次いで亡くなっていっている。のみならず、強制連行被害者や犠牲者の遺族らの高齢化も深刻な問題となっている。

 7月29日から始まった全国集会「韓国・朝鮮の遺族とともに−遺骨問題の解決へ2006夏」は、13日までに日本各地26カ所で集会を開催。曹洞宗壇信徒会館(東京都港区)、統国寺(大阪市天王寺区)などでは犠牲者の遺骨を前に追悼会が行われた。

 集会では強制連行犠牲者の遺族らが肉親を奪われ厳しい生活を強いられた「ハン(恨)」を語った。肉親の遺骨を無断で合葬、粉砕処理され、60年以上も死亡通知さえ受けていないなどの非人道的な扱いに、集会に参加した同胞、日本人らは胸を痛めた。参加者たちは、肉親の遺骨を探し、痕跡を追う遺族らの願いを聞き、遺骨問題解決に取り組む決意を新たに固めた。

 全国集会の実行委員会代表らは遺族の代表2人とともに11日、内閣府を訪れ、日本政府に対し遺骨問題に「人道上の見地から誠意をもって真剣に」取り組むよう求める小泉首相あての要望書を提出した。

 要望書は▼遺骨の所在、死亡の経過、遺骨残留の経緯などの調査、▼遺骨返還の際、遺族に直接経過を説明し謝罪すること、▼朝鮮の遺族の入国拒否措置の撤回などが盛り込まれている。

 父の行方を追って来日し、要請に同行した遺族の李今壽さん(62、ソウル市在住)は、持参した布袋を掲げながら「アボジが行った場所の土を持ち帰り、オモニの墓に埋めてあげたい。アボジを捜すのはオモニの遺言でもあり私の責務でもある」と涙ながらに訴えた。

 日本政府は、延期させてきた南朝鮮政府との遺骨返還のための合同実地調査に応じた。7日、福岡県田川市で初めて調査が行われた。共同調査団は今後、保管先の同意が得られたところから順次、実地調査を進める。名前や本籍地などを調べ、遺族を捜していく。遺族らの要請が受け入れられることが求められている。

靖国問題−問題は無断合祀、戦争美化

15日、内外の反対を無視し、小泉首相が参拝した靖国神社

 一方、15日に内外の反対を押し切って断行された小泉純一郎首相をはじめ石原慎太郎・東京都知事など日本の政治家らの靖国神社参拝は、過去の清算とアジアの友好、平和を願う人々を失望させた。また、靖国問題の論点がA級戦犯分祀の可否や首相参拝の是非などに傾くことで、遺族や戦争被害国の人々の声が置き去りにされている。

 それらの論点は本質を隠すための煙幕にすぎない。靖国問題の本質は、遺族を無視した合祀と侵略戦争の正当化にある。

 近年、遺族に無断で靖国神社に合祀したことが問題となっており、生存者を合祀していた理不尽な事実も明らかになった。2004年に父親が靖国神社に合祀されていることを初めて知らされた朝鮮の遺族らは、怒りと悔しさを露わにし泣き崩れたという。南朝鮮の遺族やA級戦犯の遺族を含む日本人の遺族からも、合祀取り消しを求める声が挙がっており、靖国神社を相手取った訴訟も起きている。沖縄靖国訴訟原告団長の金城実さん(67)は「アジア諸国の怒りに火をつけた」と指摘する。

 靖国神社境内に併設された遊就館は、「日本の過去の侵略行為を正当化し戦争を美化する日本の軍国主義を象徴する戦争博物館」と内外の批判を集めている。日本が引き起こした戦争を「自衛のため避けえなかった」とこじつけ、無謀な戦争に駆り出され命を落とした人々を「英霊」として祀り、遺書や遺品を添えその死を「武勲」と称えている。

 15日の参拝者数は約25万8000人。前年比26%増加した。テレビの取材を受けた日本の若者らが「他の国に指図される問題ではない」とコメントしていたことが耳に残る。「煙幕」で目がくらんだのか、単に無知なのか、軍国主義の野望の「成果」が着々と表れているようだ。

 南朝鮮の盧武鉉大統領は15日、ソウル市内での式典演説で、日本での憲法改正論議に懸念を表しながら、「過去について心から反省し、これまでの謝罪を裏打ちする実践をもって、再び過去のようなことを繰り返す意思がないことを明確に証明すべきだ」と指摘。日本の次期政権に向けくさびを打ち込んだ。(取材班)

[朝鮮新報 2006.8.17]