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〈投稿〉 在日朝鮮人への人権侵害は過酷そのもの

 日本政府が7月5日、「万景峰92」号の入港禁止措置を取ってから3カ月近くになろうとしています。1959年12月、在日朝鮮人の祖国への帰国実現以後、約半世紀にわたって元山−新潟間を行き来した人道主義の航路は、政治的理由で遮断されました。

 在日朝鮮人は帰国している10万人の肉親に会う道を閉ざされ、懐かしい親子、兄弟、親戚に会えなくなったのはもちろん、病気見舞いや肉親の死に目にもあえないなどの深刻な人道上の問題が起こっています。

 在日朝鮮人の帰国問題は、朝・日赤十字社間の協定で実現したものであり、元山−新潟間の航路は人道主義航路として歴史的に位置づけられ、「万景峰」号が普通の船とは違う人道上の船である事は周知の事実です。戦争中、交戦国間でも赤十字船の往来は認められるのに、政治的理由によって「万景峰」号を遮断するのは許されないことです。

 さらに7月5日以降、日本政府は法務省入国管理局長名で通達を出し、永住在日朝鮮人の海外旅行に際し日本再入国に制限措置を取る人権抑圧を始めました。在日朝鮮人は過去、強制連行や徴用などで日本に連れて来られた人々であり、その子孫であるにもかかわらず、戦後日本政府は在日朝鮮人の海外旅行の自由を認めず、30年近くにわたって「島囚」状態に置き人権侵害をしました。

 しかし、国際世論などもあり法務省は有効期間4年の再入国許可を認め、その間、何回の出入国も認めて来たのに今回はそのつど1回のみとする種々の制限、条件を加え実質、旅行の自由を侵害し再び人権抑圧の挙に出ました。

 険悪な社会風潮の中、朝鮮学校の児童、生徒が電車内や路上で嫌がらせに遭い、暴言、暴行を受ける事件が頻発していますが、誰一人としてこの問題に触れたり止めさせる発言をした日本の為政者、政治家はいません。

 現在、在日朝鮮人に対するいじめ、人権侵害、人道蹂躙はまさに極みに達しています。たとえ国や民族が違っても、またどんな複雑な政治問題があってもそれを理由にして基本的人権を侵害したり崇高な人道問題を踏みにじることは許されません。

 いま、在日朝鮮人は「万景峰」号の入港禁止措置に快哉を叫ぶ人々や、偏狭なナショナリズムと排外心を煽るマスコミの異常な報道の下で関東大震災時の朝鮮人狩りの雰囲気が醸成されはしないかと戦々恐々としています。先進国と言われる日本に住む少数他民族がまさに現代世界で想像もできない過酷ないじめと苦難を味わっています。

 私たちは、日本政府が「万景峰」号の速やかな入港を認めるよう要請し、朝鮮学校児童、生徒に対する嫌がらせを止めさせるため適切な措置を講じるよう求めます。(朴在魯、都内在住)

[朝鮮新報 2006.9.15]