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あったかい舞台裏

 舞台裏は、真っ赤なテールスープの良いにおいと炊きたてのご飯のあったかい湯気で包まれていた。

 9月16日に行われた福岡朝鮮歌舞団創団40周年記念公演の出演者たちにふるまわれた食事だ。

 最終リハーサルを目前に控え、慌しく走り回る現役団員をつかまえては「しっかり食べなさい。食べんと声が出らんよ」と、緊張で落ち着かない様子の団員にアツアツのスープを手渡す。公演の成功に向けて明け方5時まで作業をし、睡眠もろくにとれなかった団員は、あったかいご飯を口に入れもくもくとスープをすすった。

 オモニたちが持参したお釜からご飯がどんどん減っていく。1世の顧問たちも、OBの歴代団員たちも、裏方の朝青員たちも、「おいしい、おいしい」と胃袋を満たしていく。東京から訪れた舞台関係者も手作りの食事は「めったにないこと、ありがたい」と話す。

 「舞台は体力勝負。買ってきたお弁当じゃ力が出ないだろう」と言うオモニたちも実は出演者。「裏では飯炊き、舞台の上では女優」だと笑う。

 舞台裏に立ち込めるテールスープのにおいと、同胞たちのあったかみ溢れる光景。「今日はウリ歌舞団の公演。舞台からマヌル(ニンニク)とプッコチュ(とうがらし)のにおいがしたって、同胞は怒らんよ」とオモニたちは言う。

 記者にも「早く食べなさい。食べんといい記事書けんよ」とご飯とスープを準備してくれた。「同胞の愛情」で、お腹も気持ちもいっぱいになった。(陽)

[朝鮮新報 2006.10.23]