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〈ざいにち発コリアン社会〉 サーフィン国際大会開催に尽力 大阪在住の梁俊也さん

「民族心」から広げたサーフィン 「一度の波」、乗った感触が魅力

 サーフィン好きが高じ、広める過程で釜山で国際大会を開催するまでに至った在日同胞がいる。サーフィン歴22年、大阪市在住の梁俊也さん(41)だ。現在はヘルパー2級の資格を生かした介護業と、フリーでツアー客のガイド通訳や翻訳もしている。一方で在日本朝鮮大阪府青年商工会幹事として地域の同胞行事やウリハッキョ支援のためにも東奔西走。そんな中、ヒマを見つけては週に1度、必ずサーフィンに出かける。南でサーフィンを広めたその思いは「やっぱり民族心から」と熱いコリアン魂を見せる。

地道な指導

「サーフィンは一生続けていきたい」と語る梁さん

 真っ黒に焼けた肌、引き締まった体つきから、すぐにマリンスポーツに勤しむ姿を連想させる。「在日の間でもサーフィンしている人は多いけど、大会を開催したと聞いてみんな驚くんです」。

 今年9月に行われた「第2回釜山国際サーフィンフェスティバル」には、地元釜山はもとより全国各地から約100人のサーファーが参加した。「第1回大会が約40人だったから、その広がりようにびっくりした」と話す。

 梁さんは、大会開催への貢献から来ひんとして招かれ、本番では審判をつとめた。その功績の大きさは地元サーファーからもお墨付きで、梁さんの姿を見た人たちは「話はよく聞いています」とあいさつに来るほどだ。

 「同じ民族として、好きなサーフィンを純粋な気持ちから広めたい」−今から7年前、サーフボードだけを手にして済州島を訪れた。ビーチに着いて驚いた。「その頃、やっている人は2、3人。台風の時に波に乗っていたら、海上警察がやってきて警笛を鳴らされて陸に上がらされたりもした(笑)」。

 当時、サーフィンはマイナースポーツだった。「やる人間がいなければ広まるはずもなく、波に乗る場所もわからない」。

波に乗る梁さん

 それから梁さんの指導が始まった。知り合った地元の大学生に教えることから始めた。まったくの素人を一から育て上げ、その教え子が今では大会主催者となって運営に当たっている。「広がりが本当に早くて驚いている。教えた子たちが毎年大会を運営していくことができるようになれば、サーフィン人口は自然と増えていくだろう」。

 そして、「サーフィン市場は南ではほとんど誰も手をつけていないので、ビジネスチャンスにもなっている」という。大会がきっかけで「ダブルドラゴン」という南では初のサーフィンブランドも誕生した。梁さんには現在、同サーフィンブランドを始め、スポンサーが4つもついている。「いろんな意味で貢献できたことは素直にうれしい」と笑顔をみせる。

生活の一部

 サーフィンを始めたのは大阪朝鮮高級学校を卒業後。地域朝青支部のサッカーもやったりしたが、正直興味は持てなかった。そんな時、知り合いに連れられてウインドサーフィンをはじめた。

サーフィンフェスティバルに参加した仲間と共に(中央が梁さん)

 「波乗り」の魅力に取りつかれ、すぐにサーフィンに転向。昼は喫茶店、夜はスナックとオモニが経営する店で働きながら、暇があれば和歌山などの海に出かけては腕を磨いた。25歳の時に日本サーフィン連盟(NSA)公認の3級を取得。アマチュアの大会にも数度出場した。

 「波はやっぱり怖い。頭を10針縫い、あばら骨を折り、右足首のじん帯損傷も経験した。それでも乗りたいって気持ちの方が強い」

 そのうちに、もっとサーフィンをできる環境に身を置きたいという気持ちが募り、家業を手伝うのをやめた。会社員としても働いたが3年で退職。波への思いは募るばかりだった。

 33歳からの約4年間、バイトをしながら大きな波に挑戦しようと海外へ赴いた。20代の頃に貯めたお金をはたいて、インドネシアの島々へ向かった。バリ、スンバワ、ロンボク、レンボンガン、ギリアイランド。「一気に世界が変わった」。この時期、ホームヘルパー2級の資格も取得。結婚とともに子どもにも恵まれ、「妻の理解なくしてはできなかったこと」と苦笑いする。

 その後、4年間の「サーフィン漬け」を抜け、大阪で2年間焼肉店を営むが今年の1月に閉めた。そして現在の仕事へ至る。どれもこれもサーフィンを続けるためだが、そのフットワークの軽さに誰もが脱帽する。

 「2人目の子どもができて簡単には海外にいけないけど、行きたい気持ちは強い」

 一度しか来ない大きな波に乗った時の感触―そこに最大の魅力があるという梁さん。

 「サーフィンは生活の一部。これからは釜山での大会がもっとしっかりとした物になっていけるように支えていきたい。サーフィン? 一生続けていきたい」と目を輝かせた。(金明c記者)

[朝鮮新報 2006.10.27]