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〈投稿〉 兵庫・甲陽園地下壕トンネル跡のフィールドワークに参加して

2003年にトンネル内で行われた甲陽園地下壕でのフィールドワーク。現在は入ることができない。

 留学同兵庫は9月17日、兵庫県西宮市にある甲陽園地下壕トンネル跡のフィールドワークを行った。

 ここは第2次大戦中に特攻隊につかわれた「紫電改」という戦闘機を生産する軍需工場として掘られたトンネルで、強制連行によって連れてこられた中国人、朝鮮人が危険な掘削作業などに従事させられていた。トンネル内の壁に書かれている「朝鮮国独立」の文字は強制労働の事実を伝える強烈な歴史的証拠として有名である。

 しかし、近隣住民からの苦情や崩落危険性などの理由により、昨年から市が見学許可をおろさなくなり、今はもうトンネル内に入ることができなくなっている。

 この日のフィールドワークもトンネル内に入ることはできなかったが、この地下壕トンネル跡について長年案内をされているソ・ウォンスハラボジについてもらい、7号まであるトンネルの場所や記念碑などをまわりながら、トンネルやここでの強制労働に関するいろいろな話を聞かせていただいた。歩いて回ったあとも、トンネルについて報道されたニュース映像や当時の写真なども交えて、より詳細に説明していただいた。

 話はトンネルのみならず、協和会手帳や5回の国籍変更を示す外国人登録証明書など、ハラボジがこれまで集めてこられた貴重な資料を見せていただきながら、自身の体験話もしていただいた。

 まっすぐな目を向けてハラボジの話に聞き入る参加者たちの表情が、遠いものであった「過去」をリアルに感じ取っていることをうかがわせた。

 フィールドワークを通して、歴史的事実をしっかり知ること、伝えていくことの大切さ、そしてしっかり伝えるためにも歴史的事実を示す証拠がとても大事なんだということを強く感じた。

 2年前に一度このトンネル内に入ったことのあるわたしは、市が見学の禁止したことに憤りを感じざるをえない。過去にトンネルの文化財保護について言及し何の動きもなかった市が、今になって住民の苦情や崩落危険性を指摘しトンネル内に立ち入ることを禁止するのは、歴史的事実を伝えていくことを拒否する姿勢の表れではないだろうか。

 在日朝鮮人問題を克服するうえで、わたしたちと同時に日本もこの問題解決に尽力せねばならないもう一方の当事者である。その日本の国家の機関である行政が、解きほぐさなければならない歴史的問題について、あたかもそれらの歴史的事象を軽んずるような姿勢をとることに、わたしたちは今まで以上に敏感になる必要がある。(鄭弼溶、留学同兵庫、神戸大学4回生)

[朝鮮新報 2006.10.30]