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コリアン学生学術フォーラム 新時代生きる可能性追求へ

「研究と実践」深める多数の論文

テーマ別分科会のようす(「教育とアイデンティティー分科」)

 同胞学生による学術イベントが2日から3日にかけて、東京都内で開催された。2日の「コリアン学生学術フォーラム2006」(日本青年館ホテル)には、日本各地の留学同(在日本朝鮮留学生同盟)を中心に180余人の同胞学生、3日の「日本と朝鮮半島の『次代』を創る学生フォーラム2006」(中央大学駿河台記念館)には朝・日の学生、市民250人がそれぞれ参加した。イベントではさまざまな分野の研究成果の発表が行われ、朝・日両国の未来を担う若い世代が活発に意見交換を行い、交流を深めた。

 2002年の第1回以降、「発見、研究、実践」をスローガンに掲げ、同胞学生の研究発表の場、交流の場として定着してきた「コリアン学生学術フォーラム」。5回目の今回は「統一新時代、在日コリアンの可能性―新たな『コリアン・バリュー』を生み出せ!」をテーマに、学生らしい斬新な発想と視点をもって在日朝鮮人社会に寄与していこうと企画された。

 午前の部では、本紙朝鮮新報の姜イルク、南の月刊誌「民族21」の兪炳紋両記者による特別対談、「『6.15統一時代』を考える―記者が見た『6.15統一時代』 成果と課題」が行われた。

各賞受賞者たちで記念撮影

 姜、兪両記者は、2000年の6.15共同宣言発表後、和解と協力が進む北南関係の現場の雰囲気を伝えるとともに、核問題などで激変する朝鮮半島情勢を主体的に読み解く視点について語った。また、在日コリアンは北と南をつなぐかけ橋の役割を果たすことができると指摘し、学業に励み在日朝鮮人社会の発展と統一朝鮮の未来に貢献できる人材となれるよう準備していくべきだと語った。

 午後の部では、テーマ別分科会が自由論文と課題論文部門に分かれて行われた。計32編の応募論文(自由論文23編、課題論文9編)の中から、21編が発表された。

 「人権と福祉」「社会と歴史」「教育とアイデンティティ」など5つのテーマに分かれた自由論文部門では、朝鮮学校の学校保健のあり方をはじめとして現在まであまり顧みられてこなかった問題に光を当て、提言を行う論文が多く見受けられた。

 一方、@「統一コリア時代」、A「在住外国人運動における公益性、公共性」とのテーマが設定された課題論文部門でも、時代を反映した時事性のある研究発表がなされた。

 Aは、在日コリアンの視点から在住外国人運動の公共性、公益性を考察し、変化する時代に合わせ再構築していこうと今回新たに設けられたテーマ。行政や司法の場で総連施設に対する固定資産税減免措置を撤回し、在日朝鮮人運動の公共性を否定しようとする動きが相次ぐ中でのテーマ設定とあって、注目を集めた。

 優秀論文賞には、「朝鮮人強制連行に関する資料的研究―『産業殉職人名簿』整理事業を通して」(神戸大学・関西学院大学支部合同グループ)が選ばれたほか、「『福岡高裁判決』の不法性について―民族解放へむけて」(関西大学支部)、「民族統一運動から見る親日派問題」(呉仁済、立命館大学4回生)など5編が奨励賞を受賞した。「統一コリア賞」(最優秀論文賞)は、該当論文なしだった。

 「朝鮮人強制連行に関する資料的研究」は、在日本朝鮮人強制連行真相調査団から提供された「産業殉職人名簿」を約2カ月かけて整理し、その分析結果をまとめたもの。1942年当時在日朝鮮人の労働人口における死者の比率が日本人の3倍近くに上っていたとする分析結果は、全国を網羅した名簿の整理が初めてということもあって、地元の神戸新聞にも取り上げられた。

 論文を発表した李洪潤さん(神戸大学3回生)は、「同胞社会に自分たちの活動を還元したいと考えていたので、受賞はうれしい。これを機に名簿整理事業が全国的に普及していけばと願っている」と話した。

 また論文発表のほかに、会場参加型のウリマル講座やスピーチコンテストなども行われた。フォーラム終了後には懇親会が催され、交流を深めた(受賞論文の詳細は、http://www.advance-k.net/~forum/にて後日発表)。(李相英記者)

[朝鮮新報 2006.12.11]