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鳥取コリアン子どもたちの未来と教育を考えるシンポジウム、民族教育と向き合っていきたい

民族教育の重要性を再確認

 鳥取コリアン子どもたちの未来と教育を考えるシンポジウムが3日、米子市福祉保健総合センター(米子市錦町)で行われた。地域同胞、日本学校教師、市民ら100余人が参加した。シンポジウムでは「社会教育」「学校教育」「家庭教育」の3つの視点から民族教育が分析された。

「子ども観」と指導法

「鳥取コリアン子どもたちの未来と教育について」講演した岐阜初中の李統鮮校長

 シンポではまず、総連鳥取県本部の朴井愚委員長が祝辞を述べた。

 朴井愚委員長は「異国の地で中等教育実施60周年を迎えたことは、まことに歴史的なことだ。民族の自主を守り、血のにじむような努力で受け継いできた民族教育をともに再確認しよう」と語り、若い世代がシンポジウム成功に向け尽力したことを高く評価した。

 続いて「鳥取コリアン子どもたちの未来と教育について」と題し、岐阜朝鮮初中級学校の李統鮮校長が講演した。

 李校長は「子ども観」とそれに即した指導法、在日コリアンの子どもたちの民族教育について「教育はすべての子ども、家族、地域社会において生命線であるが、昨今では多くの問題に直面している。子どもたちは元来強い学習意欲を持った存在であるにもかかわらず、学習意欲を喪失した子どもがいるのは、子どもたちに対する理解不足のためだ」と指摘した。具体的には、習得スピードの個人差を許さない教育システムの問題点、子どもの要求と社会の要求の相違、「能動的存在」に対する無関心、無理解の解消、自己肯定心の尊重などをあげ、子どもには何の罪もないと指摘した。

 そして、文化、風習、知識の個別的な習得だけでは民族心を得ることは難しく、民族に対する共感を通して民族への愛情を表現していかなければいけないと強調した。

社会、家庭、学校の連帯

「在日コリアンとしての誇りを持って堂々と生きてほしい」と語る学父母代表

 スライド「鳥取民族教育の歴史」(製作=朝青鳥取)の上映に続き、パネルディスカッションが開かれた。

 黒多淳太郎氏(県立米子養護学校教論)のコーディネートのもと、三谷昇氏(鳥取県在日外国人教育研究会倉吉代表)、李実氏(四国朝鮮初中級学校教務主任、「香川土曜児童教室」講師)、午後夜間学校「ウリ」教室の学父母代表が出演した。

 三谷氏は、通名で学校に通わざるをえない子どもたちと現場の教員は、認識不足から向き合うことができていないと指摘し、文化が近いものになったとはいえ、フード、ファッション、フェスティバル(3F)だけでは入り口を通っただけで「ふれあう」には及ばないと言及した。そのうえで県内の在日外国人の状況、学校教育と在日問題について述べた。

 李実氏は、児童教室開講の経緯から子どもたちの肯定的な変化、問題点について述べ「『内なる国際化』が叫ばれる中で、『民族の自負』が今以上に問われるだろう未来の社会において子どもたちが堂々と生きていくためには民族についての意識をしっかり持たせる必要がある。そのために社会、家庭、学校教育の連帯が必要」だと力説した。

色眼鏡を外して

参加者らは民族教育の重要性を再確認する場になったと述べ、第2回開催に期待を寄せた

 学父母たちは「在日コリアンとしての誇りを持って堂々と生きてほしい」と、周りの在日コリアンに対する認識不足をあげ、コリアンの子どもたちを色眼鏡で見ないでほしい、歴史を知ったうえで正しい知識を子どもたちに伝えてほしい、社会が今以上に開かれることを願ってやまないと話した。そして、シンポを準備するにあたり薄れていた自分たちの民族心に再度気づき考えさせられ、民族意識を持って民族教育を行っていくいい機会になったと思いを語った。

 黒多氏は「社会、学校、家庭教育の重要性が話された。それぞれの教育を別々に動かすのではなく連帯を深め、力強いネットワークを形成しよう。またシンポジウムを開こう」と呼びかけた。

 参加者からは「日本の学校行政が単一民族を前提にしたものでしかないということがよくわかった」(40代、男性)、「小さい子どもを持つ親として民族教育の大切さをあらためて実感した。子どもたちが在日コリアンとして堂々と生きていけるようにがんばっていきたい」(30代、女性)「日本に住んでいるすべての民族、すべての個人が自分の持つ文化を知り味わう機会が必要だと思った。在日外国人教育、異文化間教育を進めていきたい」(20代、男性)、「保護者の発言に『ハッ』とした。日本学校に通うことを拒む生徒の背景にある息苦しい社会と差別性。教育に携わるものとして自信の差別性を思い出していくことが解消につながると信じる」(30代、男性)といった反応が返ってきた。継続開催を望む声も多数あった。

 シンポジウムを成功裏に終え、実行委朴永道委員長(朝青非専従副委員長)は「民族教育の重要性を再確認することができた。民族教育はすべての基本だと思う。一人の親として、朝青員として民族教育と向き合っていきたい」と決意を述べた。(鄭尚丘記者)

[朝鮮新報 2006.12.25]