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熊本朝鮮会館への福岡高裁判決は不当、熊本の市民団体、市長に申し入れ書

「地域住民に開かれた施設」

 熊本朝鮮会館(熊本市九品寺)への熊本市の固定資産税等免除措置に関する福岡高等裁判所の不当な判決に対し、多くの市民団体や法曹界、マスコミ関係者らがその不当性を訴える声を高めている中、地元熊本の市民団体が市長に上告を促す申し入れ書を提出した。

記者会見に臨む「市民の会」のメンバーら

 今回、市長に申し入れ書を提出したのは、「熊本朝鮮会館問題を考える市民の会」(古沢千代勝代表)のメンバーら。メンバーらが市役所を訪れた10日、市長は不在で、担当者に申し入れ書を手渡した。

 申し入れ書を手渡したあと、記者会見が開かれた。

 記者会見では、宮川経範牧師が発言し、この問題は在日朝鮮人の人権問題であり、40数年間にわたり減免してきたのは公益性があるからだと指摘。今回の判決は国際人権規約に照らしてもおかしな判決であると述べながら、今後アジアとの交流を深めていかなければならない日本でこのような判決が出ると国際問題になってしまい、アジアの人々からの理解も得られないと強調した。

 そのうえで、熊本市が引き続き模範を示してほしいと訴えた。

 記者会見では、他のメンバーも発言し、「在日朝鮮人の人々は戦前戦後も苦労をしている。それに鑑みても、今回の判決はおかしい。熊本では日本と朝鮮の人々が仲良く暮らし、国際交流を深めていくべきだ。熊本市は上告して引き続きがんばってほしい」などと述べた。

 「熊本朝鮮会館問題を考える市民の会」が提出した申し入れ書は、福岡高裁が下した判決に驚きと憤りを持ったと指摘。熊本地裁が朝鮮会館の利用対象者、設備や利用実態、事業内容などから見て「公民館類似施設」にあたると明白な判断を示していただけに、なぜ朝鮮会館が該当しないのか理解に苦しむと強調した。

 また、過去何度にもわたって朝鮮会館を会場として会合を開いたこともあり、熊本市内に住む在日朝鮮人とは仕事や日常生活を通じて付き合っていると述べながら、彼らは永住権を有し納税義務も果たしており同じ市民として暮らしていることを強調した。

 そのうえで、市民である在日朝鮮人が主に利用する建物に「公益性」がなく「わが国社会一般のためにならない」という判決の論理を展開するならば、同じような活動内容の韓国会館やほかの在日外国人が建てた施設も「公益性」が否定されることになると指摘。一歩まちがえば外国人排斥という最悪の排外主義を助長し、国際人権規約にも抵触する内容という指摘もあり、国際社会からの反発も予想されると非難した。

 申し入れ書はまた、朝鮮会館への課税問題を拉致問題に対する報復に利用することは決して許されず、福岡高裁判決は日本社会の一部に存在するこうした危険な動きにお墨付きを与える可能性をはらんでいると指摘。熊本市ではこれまで、外国人が安心して暮らせる、人権に配慮したやさしい街づくりを目指して市政が運営されてきたとしながら、熊本朝鮮会館は地域住民やそのほかの市民にも開かれた施設であり、これからも日朝友好親善のかけ橋になる施設であると強調した。

 そして、福岡高裁判決は朝鮮会館の公益性の否定だけでなく、日本人と在日朝鮮人の間に溝を作るばかりか、多くの在日外国人を不安のどん底へと追いやる不当な内容だと非難。このような不当な判決を確定させないためにも上告し、最高裁の判断を仰ぐよう強く要望した。【熊本支局】

[朝鮮新報 2006.2.14]