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〈性教育は命の教育(上)〉 兵庫県朝鮮学校保健活動報告 「生まれてくれて、生んでくれてありがとう!」

はじめに

 兵庫県下のウリハッキョに担当看護師制を導入し2年目を迎え、私たちの活動はさらに学校側に定着してきた。2005年度は、昨年実施した保護者へのアンケート調査での多くの意見から、保健活動への理解と協力を得るために、事前、事後の配布物の充実を図り「顔の見える担当看護師」に取り組んだ。また、中級部への性教育授業の開始を視野に入れ、助産師の協力を得て、担当看護師、保護者との意交換会を実施するなど、担当看護師と保護者間の関係が深まっている。

 一部の学校ではオモニ会からの要請で、担当看護師が「子育て支援講演」を行い、また、一部の学校では担当看護師が卒業生の保護者に「性と心の成長」に関する本を贈り、喜ばれている。

 私たちは昨年度から引き続き初級学校の全学年に性教育授業を行ってきたが、中でも授業に使う教材を家庭で準備させる低学年の性教育授業は、一般社会がイメージする「性教育」とはほど遠く、親子がそれぞれに大切に生んでくれた親への感謝、元気に生まれてくれた喜びを語り合うもので、その授業内容は生徒、保護者、教員らに大きな感動を呼んでいる。

 これら、2005年度の新たな取り組みを、順を追って報告し、低学年向けの「命の教育」の授業風景を紹介する。

保護者アンケートの結果

保護者に対する啓蒙も重要な課題となっている

 アンケート調査は2004年2月に、県下各初級部5、6年生の保護者を対象に実施し、合計138世帯から回答を得た。

 回答者の属性は表2のとおり。1世帯あたりの回答者が複数に渡るため、世帯数と回答人数は同一ではない。

 回答者からは、看護師が性教育を行うことについては「非常に良いことだと思う、今後も続けてほしい」「どんなことを習ったのか確認したいので、教えたことに関する資料が欲しい」「5、6年生だけではなく、ほかの学年でも実施してほしい」という意見が多く見られた。

 家庭での性教育の現状(表1参照)については、「月経や精通について、普段から話して聞かせている、気軽に話せる雰囲気がある」という意見が多くみられた反面、「友だちなどから情報をもらい自然に覚えるので話していない」「話をしなければと思うが、恥ずかしくてできない」という答えもあった。

 2004年度に導入された保健教科書については、「とてもよいことだと思う。もっと以前から取り入れてほしかった」という肯定意見が多く、同時に「性教育の部分は今後も看護師にお願いしたい」という答えも多く見られた。また、保健教科書の存在を知らなかったという答えも見られ、保健教科書が全校に行き渡っていない現状も知ることができた。

 学校担当看護師の活動については、「ウリハッキョの養護教諭として、もっと回数多く学校に来てほしい」「運動会で医療班活動をしてもらい安心できた」「学校検診に参加したり、校内設備の点検をしていることを知っている」と、その存在と必要性を感じている意見が見られる反面、「担当看護師がいることを知らなかった」という答えもあり、私たちの存在を知らない保護者もいることがわかった。

今年度の新たな取り組み

 1、配布物の充実

 アンケート調査の結果を踏まえ、2005年度の新たな取り組みについて報告する。

 まず、「顔の見える担当看護師」を目指し、配布物の充実を図った。年度始めに学校長あてに「年間活動計画」と「保健教育の目標と指導目標」を、授業実施日には保護者あてに「保健授業だより」を発行した。

 「保健授業だより」は授業を実施した日に生徒に配布し、自宅に持ち帰ってもらった。各学年に応じた授業内容を展開しているので、各学年ごとに内容を変えている。

 2、保護者とのかかわり

 2005年度は保護者と担当看護師のかかわりも深まっている。以前より一部の学校で試行されていた生徒へ向けてのスクールカウンセリングは、対応困難事例に関わる教員へのカウンセリングや、子育てに悩むオモニへのカウンセリングへ発展し、オモニ会主催の「子育て支援講演」が開催され、担当看護師が講演をするに至っている。この保護者に向けた「子育て支援」活動は担当校の枠を超え、今後、ほかの学校でも要請に応じる準備をしている。

 また、ある学校では、担当看護師が卒業記念に中1むけの「性と心の成長」に関する書籍を贈呈し、保護者に読んでもらえるよう働きかけたところ、オモニたちから「親自身が勉強になった」「このような本を通してちゃんとしたことを学べるのでよかった」と好評を得ることができた。

 中級部生徒への性教育授業開始にむけて、西播初中級学校でオモニ委員の方々と担当看護師、協力助産師による意見交換会を開いた。

 このように保護者に対する啓蒙と連続性のある保健教育を目指した活動の助走を開始し、中級部への取り組みは2006年度の大きな課題になっている。

家庭での性教育の現状

月経や精通について、普段から話して聞かせている

月経や精通を迎えたときに話をした、するつもりである

身体のことだけでなく、心の成長に関しても話をしている

自然に覚えるので話していない

話をしなければと思うが、恥ずかしくてできない

アンケート回答者

兵庫県下ウリハッキョ5、6年生保護者

回答138世帯

続柄 人数 年齢 人数
30〜39歳 53
135 40〜49歳 83

[朝鮮新報 2006.1.14]