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〈教室で〉 東京第1初中 初級部1年担任 李香任先生

歌、動作、掲示物で興味惹きつける

「じょうずに書けたかな?」と李先生

 「こくごの じかんに なったよ! ララララ ラララ パチ! パチ! パチ!」

 李香任先生(45)のオルガンの音に合わせて、東京朝鮮第1初中級学校(東京都荒川区)初級部1年生たちが力いっぱい手を叩きながら歌をうたう。

 児童たちはまだ幼さの残る頬や唇をモグモグ動かしながら緊張をほぐし、朝鮮語の母音「豹、描、秒、錨」を歌いながら体を使って表現。同じく「カ、ギャ行」「ナ、ニャ行」も力強く唱える。

 「ランドセル」「筆箱」「学習帳」「教室」「机」など、身の周りの物をメロディーに乗せて歌う1年生たちは、朝鮮学校に入学してまだ100日も経っていない。

目で見て話す

先生に次いで元気に音読する1年生たち

 李先生は1年生たちが喜びそうな歌と動作を豊富に取り入れながら、色とりどりの掲示物を提示して児童たちの興味を惹きつける。

 「みなさん、『ㄹ』は子どもの字(子音)ですか? オンマの字(母音)ですか?」

 李先生の質問に児童たちは「子どもの字です!」と元気いっぱいに答える。

 李先生は「ㄹ」のついた単語−「노루(ノロ鹿)」「오리(あひる)」「다리(足、橋)」が描かれたカードを提示し、児童たちに「話し言葉」の練習をさせる。

 先生−なあに?

 児童−あひるだよ。

 先生−なんですか?

 児童−あひるです。

駅前通の掲示物に「横断歩道」をかける

 相手によって言い回しを使い分ける練習。朝鮮語の話し言葉の教育に力を注ぐ李先生の熱意をうかがえた。

 つづいて行われた「言葉遊び」では、2つの単語を使ってリズムに乗って絵についての説明をする。

 「しかが パチ! パチ! たべます パチ! パチ!」「あひるが パチ! パチ! あそびます パチ! パチ!」「あしで パチ! パチ! あるきます パチ! パチ!」「はしを パチ! パチ! わたります パチ! パチ!」…。

 李先生が次に取り出したのは「街」の大型掲示物。

 「三河島駅前通りですよ…」という言葉と同時に現われた大型掲示物を見て、児童たちは「わぁ!ー」と歓声をあげた。

 「車道」「歩道」「横断歩道」「信号」…。

 児童らは通りに見える物を一つひとつ声に出して言ってみる。

「むずかしい・・・」

 教科書の本文にある「誰が通りに行くの? お姉ちゃんが行く。私も行く」という文章が黒板に提示されると、児童たちはいっせいに、「ウ…むずかしい…」と、悲鳴にも似た声を出した。

 子どもたちの不満気な様子に李先生は、「難しいかな? 学びましたよ」とほほ笑み、児童たちをなぐさめる。一字、一字、先生に次いで文字を追い発音する児童たち。

 「ほら、ご覧なさい。全部読めたでしょう。たいへんよくできました」

 李先生の褒め言葉に子どもたちの表情がやわらぐ。

 李先生は黒板の前に立ち、一文字ずつ、単語で、文章で、自分に次いで読むよう指示し、それを数回繰り返した。その後は子どもたちだけで音読させた。次に登場人物を「お姉ちゃん」だけではなく、「お父さん」「お婆ちゃん」「弟(妹)」「お爺ちゃん」「お母さん」「お兄ちゃん」に変えて、主語に合わせて「行く」と言う言葉を「行かれます」「行く」に変化させた。

 授業のむすびでは通りに出て「気をつけなくてはならないこと」について説明した。

 「自動車、バイク、自転車に気をつけて、交通ルールを守りましょう」

 李先生の言葉に、1年生たちは元気良く声をそろえて「はい!」と答えた。

夏休みの注意事項

 教員生活21年。初級部1年生から中級部3年生まで、すべてを担任した経験を持つ李先生は、「朝鮮語のつづり方などの基礎学力を身につけるのは初級部1年生のとき。朝鮮学校では民族教育の特性から母国語教育に多くの比重を割いているため、国語の実力がなければその後の学力にどうしても差が出てしまう。だから、低学年を教えるときはとくに子どもたちをよく見たい」と話す。

 1年生たちはこの夏、初めての「夏休み」を迎えた。学校生活にようやく慣れた児童らが長期休暇中に気をつけることを李先生に聞いた。

 李先生は、@起床、就寝時間をよく守り、A習慣づけられたあいさつと歯磨きを忘れず、B夏休みの宿題を毎日決まった時間にきちんとして、C食べ物の好き嫌いをせず、暑いからと言って冷たいものをたくさん食べないこと、D外出する時には必ず帽子をかぶり、E交通ルールをよく守って、F学校で学んだ朝鮮語を積極的に使うことと話した。

 先生はまた、1学期の間に習慣づけられた起床、就寝時間をよく守れなければ、子どもたちが9月から新学期を迎えたときに生活のリズムを整えるのに苦労する。中には始業直後に熱を出したり、体の調子が悪くなる子もいると言いながら、宿題も一度に全部してしまうのではなく、毎日30分ぐらいずつ机に向かって勉強する習慣をつけるのが大切と話した。

 そして、この時期、自転車に乗れるようになる子どもが多いことから、「活動範囲が広がるぶん、1人で出かける時にはとくに気をつけさせるように。どこに遊びに行って何時に帰ってくるかを親にしっかり約束させ、夏休み中にも防犯ブザーの携帯を義務付けるよう」強調した。

 李先生は「夏休みをどう過ごすかによって、1年生が2学期を耐える力が左右される」と指摘しながら、子どもたちの健康と生活を家庭で注意深く見てくれるよう願っていると語った。(金潤順記者)

※1961年生まれ。滋賀朝鮮初中級学校、京都朝鮮中高級学校(高級部)、教員短期養成班修了後、滋賀初中、東京中高、東京第4、東京第1で教べんを執り、現在東京朝鮮第1初中級学校初級部低学年国語指導委員会、1年1組担任。

[朝鮮新報 2006.8.5]