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〈多民族共生教育フォーラム2006愛知〉 兵庫、静岡に続く協議会を

2年目の実りは全国ネットの発足 共通課題は「学校認可」

 名古屋市で開かれた多民族共生教育フォーラム2006愛知(12日)。東海地方には外国人学校の新顔といえるブラジル学校が集中しているが、朝鮮、韓国、フィリピン学校も経営が厳しいという点では一致している。昨年のフォーラムでは、学校認可に向け、外国人学校同士の連帯を強化していく方向性を打ち出したが、今年は認可取得のための課題がより鮮明に浮かび上がった。

3割が不就学

フォーラムには群馬から沖縄まで約400人が参加した

 南米にルーツを持つ子どもたちは、各種調査から推計するとほぼ半数が日本の学校、3割ほどが外国人学校に通い、残る2、3割が不就学の状態だ。不就学の子どもが多いのは、日本の学校に行っても日本語が通じず母語で意思疎通が図れないためで、行き場を失った子どもたちの問題は深刻だが、日本政府は外国籍の子どもに「義務教育の権利」はないとしているため、この状態は放置されている。

 一方のブラジル学校は、その多くが各種学校の認可を取得できず私塾形態で運営されていることから、授業料に消費税がかかり、自治体の補助金も支給されないなど学校認可取得が大きな課題になっている。また、ブラジル学校の先輩格である朝鮮学校は、各種学校資格を取得しているものの、日本政府からの補助はいっさいなく、学校の卒業資格も認められない。このように、学校として認められない点は各外国人学校に共通している。

 フォーラムでは東海地方はもちろん、群馬、京都、大阪、沖縄の外国人学校関係者がそれぞれ直面する課題について次々と吐露していた。

 岐阜県のブラジル学校・HIRO学園の川瀬充弘学長は、借家で2人の教師から学校を始めたことを紹介し、ブラジルの子どもの中には学校に行かず、街に出入りする過程で非行に走るケースがあると報告。教員たちはほとんどが無給でがんばっており、その情熱に胸を打たれたと語った。

第2部では東海地方の朝鮮、韓国、フィリピン、ブラジル学校の紹介が行われた

 滋賀のブラジル学校関係者からは、2歳から高校3年までの子どもを抱え、毎日朝5時50分から夜8時半まで対応しているとの報告があった。これに対し会場からは、学校の処遇改善とともに、日系ブラジル人が置かれた長時間労働の改善に目を向けるべきだとの指摘もあった。

 春日井市の朝鮮学校教員は、「学校がなくなれば、民族の心を伝えることは難しい。会社が倒産し、3人目の子どもを仕方なく日本学校に通わせた保護者がいた。次世代が学べる教育環境を整えなければならない」と痛切に訴えていた。丹羽雅雄弁護士は「国家に翻弄されているのが子ども。子どもがそこにいれば学習の権利はあり、母語、文化を学ぶ権利は人権の基本だ」と外国人学校問題を考えるうえでの原点を強調していた。

兵庫にインパクト

 在日朝鮮人をはじめ戦前から日本に住む外国人がリードしてきた権利運動。外国人社会の多様化に伴い、互いに手を取り合い行政や日本政府に対する要請を重ねることが、実際の権利獲得につながることが実証されている。

愛知での協議会結成を握手で約束する愛知朝鮮学園・文理事長(左)とブラジル学校のパウロ校長

 フォーラムでは1995年結成の兵庫県外国人学校協議会、今年3月結成の静岡県外国人学校協議会の報告があった。兵庫が報告した「阪神・淡路大震災」後の10年間に県の補助金を4.5倍に増やした実績は、参加者に多くの希望をもたらしていた。今年9月に開校した芦屋インターナショナルスクールが新たに加盟するなどネットワークは広がっている。

 静岡県協議会の朴栄基事務局長は、県内に20校の外国人学校があるが、協議会結成により交流が始まったと指摘。10月末に初の文化交流を行ったと報告した。朴事務局長は、県知事に表敬訪問を申請したところ断られるなど行政の対応に問題はあるが、当面ブラジル学校の各種学校認可取得のため、勉強会を始めたいと抱負を語った。

 第3部のパネルディスカッションでは、愛知朝鮮学園の文光喜理事長とブラジル学校・エスコーラサンパウロのパウロ・ガルヴォン校長が壇上で愛知での協議会結成を握手で確認し、会場を盛り上げた。東海地方ではこの間、朝鮮、韓国、ブラジル、フィリピン学校同士の交流が進められてきた。これは以前には見られなかった動きだ。兵庫の経験が、静岡、愛知へと広がっている。文理事長は、「愛知県では行政と手を携え多文化共生を進めていきたい」と抱負を語っていた。

来年は東京で

 第3部のパネルディスカッションでは、学校認可を取得するための課題が浮き彫りになった。田中宏龍谷大学特任教授は、「憲法は国民の納税の義務を定めているが、所得税法などには居住者とあり、外国人からも税金を徴収している。しかし、その税金は国民にだけ使われている。外国人の子どもが日本の公立学校に通えば年間100万円の公費が費やされるだけに外国人学校にも当然、一定の補助金が支給されるべきだ」と述べ、憲法論議を尽くすべきだと語った。横浜山手中華学校の潘校長は、外国人学校の中でもインターナショナルスクールにのみ優遇税制を認める日本政府の政策の矛盾を突いた。

 学校認可というゴールに向かって始まったフォーラムは今年で2回目。前日の11日に「外国人学校、民族学校の制度的保障を実現するネットワーク」が発足したことは大きな意味を持つ。同ネットワークは当面2〜3年の取り組みとして、13項目をあげているが、これこそ運動の洗練度を示すものだ。

 来年は首都東京での開催(張事務局長談)で、国会議員や世論の関心を喚起する大きなチャンスだ。冒頭、あいさつをした兵庫県外国人学校協議会の林同春会長は、「今日集まった人数が、全体から見て少なかったのか、多かったのかを一人ひとりが真剣に考える必要がある。フォーラムで学んだことを10、100、1000と広げていこう」と参加者に奮起を呼びかけた。助成金の獲得、ブラジル学校の認可など、各地方の取り組みが来年に向けた優先課題だ。(張慧純記者)

[朝鮮新報 2006.11.20]