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〈多民族共生教育フォーラム2006愛知〉 基調報告(要旨)

 多民族共生教育フォーラム2006愛知で、「外国人学校、民族学校の制度的保障を実現するネットワーク」事務局長の張學錬弁護士が発表した基調報告の要旨は次の通り。

 1、外国人学校、民族学校の抱える共通の課題を解決していくには、外国人学校、民族学校が相互に理解し連携することが不可欠である。ここ愛知にはオールドカマーの学校とニューカマーの学校の両者が存在するが、今回のフォーラムが連携の契機となることを願う。

 2、日本政府は、戦後直後から朝鮮学校を弾圧した。1965年には「朝鮮人としての民族性または国民性を涵養することを目的とする朝鮮人学校は、わが国の社会にとって、各種学校の地位を与える積極的意義を有するものとは認められないので、これを各種学校として認可すべきでない」との文部事務次官通達を出し、外国人学校、民族学校の意義を否定した。また、1966年以降数年にわたり、外国人学校、民族学校を監視、規制の対象としてのみ扱う外国人学校法案を上程した。

 1970年以降、当事者や住民運動、教育運動によって、自治体は外国人学校、民族学校を1条校に準じて扱うように変わってきた。しかし、政府の日本の外国人学校、民族学校を差別する考え方は現在まで基本的に改められていない。

 3、現在日本には朝鮮学校が約100校、ブラジル学校が97校、その他のナショナル・スクールとインターナショナル・スクールが数十校存在している。

 現在、在日コリアンの子どもたちの8、9割は日本学校、1割が民族学校に通い、中南米系の子どもたちの約半数が日本学校、3割前後が外国人学校、2、3割が不就学と推定される。外国籍、民族的マイノリティの子どもたちは、そもそも教育を受ける権利を人権として保障されていない。アイデンティティの確立に不可欠な母(国)語教育、継承語教育を受ける権利も、日本語教育を受ける権利も保障されていない。

 4、外国人学校、民族学校は、原則として日本における正規の普通教育、学校教育を行う1条校になることはできない。1条校に準ずる専修学校になることもできない。都道府県知事の認可を受ければ、料理学校などと同じ各種学校となることができる。

 各種学校となると、固定資産税、不動産取得税等の免除、授業料の消費税免除、地方自治体からの補助金などのメリットがあるが、他方、1条校との差別は著しく、卒業資格はなく、国庫助成が得られない。学校への寄付金への税制上の優遇措置は、一部のインターナショナル・スクールに対してのみしか認められていない。

 5、しかし、本来、自由権規約や社会権規約、子どもの権利条約等の国際人権諸条約によって、すべての子どもたちには教育を受ける権利が保障されている。また、民族的、宗教的、言語的マイノリティの子どもたちが、母(国)語を学び、使用する権利が保障されている。憲法もそのように解釈されるべきである。

 6、政府は、政策を改め、国際人権諸条約および憲法に基づいて、外国籍、民族的マイノリティの子どもたちの教育を受ける権利を保障し、日本学校においても、外国人学校においても、子どもたちがそのルーツにかかわるアイデンティティを確立でき、人格を全面的に発展させる教育を保障すべきである。そのために、外国人学校、民族学校を積極的に、支援する法制度を作るべきである。

[朝鮮新報 2006.11.20]