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〈担当記者座談会 06年どう動く?〉 朝鮮半島情勢

米国のジレンマ

 A 朝鮮解放60周年を迎えた昨年、核問題を話し合う6者会談で共同声明が発表されるなど、冷戦時代の対立構造が残る朝鮮半島にも画期的な出来事が起きた。今年の情勢をどのように展望しているのか。

 B 第4回6者会談で発表された共同声明は朝鮮半島非核化に向けた原則を取りまとめたものだが、合意内容の核心は朝米の敵対関係清算と信頼醸成に基づき問題を解決するということだ。2006年は「共同声明の履行」というテーマに沿って6者間の外交交渉がより活発化するだろうというのが一般的な見方だと思うが。

 C ブッシュ政権の言動を見ていると楽観的な観測だけを述べるわけにもいかない。共同声明の発表後、米国は朝鮮に対する金融制裁を実施した。核問題とは別途に「人権問題」を取り上げ、朝鮮側の「譲歩」を引き出そうとする戦術も表面化している。こうした米国の姿勢を「共同声明の精神に反する」とする朝鮮側の指摘は至極当然だ。

 A 核問題解決においては「同時行動」が朝鮮の一貫した主張。米国が対朝鮮敵視政策を転換しない限り、共同声明の内容が行動に移されることはないだろう。昨年11月に第5回6者会談の第1ラウンドが開かれたが、第2ラウンドの開催は不透明だ。

 B とはいえ、ブッシュ政権に問題解決をいつまでも先送りする余裕があるだろうか。朝鮮が核保有を宣言したことで朝米の対立は文字通り「核」対「核」のレベルに達した。共同声明の発表は、最終的な朝米関係の行方を決定づけたといえる。米国は、朝鮮を主権国家として認めて共存するしかないことを、国際社会の前で表明した。それ以外に現実的な選択肢がなかったからだ。

 C 確かに米国はジレンマに陥っている。「人権問題」で強硬姿勢を示しても、共同声明を破棄するわけにはいかない。声明の履行時期が遅れるのも得策ではないだろう。朝鮮が核兵器を増産することを意味するからだ。

 B イラクを見てもわかるが、米国は相手が武装解除しても決して安全を保障しない。逆に、朝鮮のように武装解除しない相手は簡単に攻撃できない。核武装しているからなおさらだろう。今後も朝米関係は一進一退を繰り返すかもしれないが、「核保有国に対する攻撃」を回避しようとする以上、対話と交渉で解決するという方向性が大きく揺らぐことはないだろう。

北南の存在感

 A 昨年、北南関係にも転機が訪れた。金正日総書記が盧武鉉大統領の特使である鄭東泳・統一部長官と会った「6.17面談」がひとつの大きなきっかけとなった。北南会談でも重要な合意がなされ、6者会談でも北南の協力と対話が実現した。

 C 「6.17面談」をきっかけに北南関係は新たな局面に入ったが、北南の当局者たちはこれを「第2の6.15時代」と呼んでいる。2000年の6.15共同宣言の精神を具現することが可能な状況が生まれたとの認識が幅広い階層にも定着した。

 A 昨年11月に釜山で開催されたAPEC首脳会議では、アジア太平洋地域の国々が2020年を目標に巨大な自由経済地帯を創設することが論議された。さまざまな国や民族が共同体を追求する時代の流れに、同じ民族である北南朝鮮が積極的に対処することが求められている。昨年、北南は「有無相通ずる」新たな経済協力モデルの実現に合意した。今年はいくつかのプロジェクトが始動する。

 B 核問題や6者会談と関連して「朝鮮半島の平和と北南経済協力」というテーマで語る人も少なくない。平和的環境が整えば経済協力も推進され、同時に経済協力の推進がいっそう強固な平和をもたらすという発想だ。否定はしないが、一面的なとらえ方だと思う。

 C 北南が協力して朝鮮半島と周辺地域の変化においてイニシアチブを発揮するためには、最終的に民族内部の障壁を解消しなければならない。その障壁は経済の分野にもあるが、政治分野では「国家保安法」など対決時代に生まれた制度とそれに基づく対決の構図が和解と協力の障害になっている。この問題は年末に済州道で行われた閣僚級会談でも討議された。北南は相手側の思想と体制を認め、尊重しなければならないとの認識に基づき、そのための「実践的措置」を講ずることで合意した。

 A 6者会談共同声明が象徴するように、北東アジアの秩序は再編の動きを見せている。昨年、中国とロシアの首脳会談で調印された声明は、米国の単独覇権主義に反対する姿勢を明確に打ち出した。北南が「同じ民族」としての共同歩調を言葉でなく行動で実践するならば、北東アジアの国際関係の中で存在感を強くアピールできるだろう。ところで、6者会談の参加国の一つである日本は、どう動くだろう。

 B 6者の中で共同声明に公然と反対意思を表明する国は存在しない。日本も、会談の進展に伴い、朝鮮との直接対話のチャンネルを稼動させる必要に迫られた。しかし国交正常化交渉の再開が、過去の清算など朝・日間の基本問題の解決に結びつくのかどうか、朝鮮は日本の真意を見極める姿勢で臨むだろう。

朝米対話推進

 A 2006年は6者の枠組みによる対話にとどまらず、2国間対話も活発化するのものと思われる。とくに核問題の当事者である朝米の直接対話が注目を集めそうだ。

 C 6者会談共同声明は、非核化の問題だけでなく「朝鮮半島の恒久的な平和体制を樹立するための交渉」を直接的な当事国が行うことを明文化した。当事国には当然、朝鮮と米国が含まれる。共同声明は、朝米の関係正常化問題も明記したが、世紀を超えて続いてきた朝米対立の解消が北東アジアの政治、軍事、経済関係に与えるインパクトは大きい。

 A 北東アジアの国際関係は流動化の様相を呈している。昨年、歴史問題をめぐる中国、南朝鮮対日本の対立構図が表面化した。6者会談が始まった頃、米国は「米、日、韓」の緊密な協力関係によって朝鮮の「核放棄」を実現すると公言していた。だが、6者会談共同声明発表でも見られるような急激な構図の変化は、米国が想定する範囲を超えているのではないか。

 C 6者会談の進展は、北東アジア地域における多国間安保の可能性をも浮上させるものだ。ここで注目されるのが朝鮮の見解と立場だ。昨年、朝鮮労働党機関紙労働新聞は、北東アジア地域安保問題では「利害関係が同じで地続きの国」、すなわち北南朝鮮と中国が問題を討議すべきであり、「地域の平和をかく乱させる米国と日本は排除しなければならない」と主張した。

 B 6者会談共同声明の履行は、交戦関係にある朝鮮と米国の講和を意味する。2005年はそのプロセスが始まった年だった。今年は朝米間の「銃声なき戦争」が終結した「戦後」の世界、朝鮮半島と北東アジアの新たな国際秩序編成の動きが、6者の活発な外交により具体化することが予想される。(整理=金志永平壌特派員)

[朝鮮新報 2006.1.5]