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〈金英男さん、平壌記者会見C〉 「ヘギョンを大切に育てる」

 Q 先日、金剛山で英子さん(姉)に会った際にめぐみさんの遺骨に他人の骨が混ざった可能性があると言ったというが、そう考える理由を聞かせてほしい。

 A 金剛山で母と姉に会い興奮しているときだったが、そのような話をした覚えはない。彼女を思い出したときには保管していた遺骨に触れることもあったが、なぜ(DNA)鑑定で私のものではなく他人のものが出たのか、という話はした。他人のものだとすれば、私のものや火葬をするときに手伝ってくれた人のものが出てくるはずだ。遺骨を鑑定した人に一度会って、一体どうしてこのような結果が出たのか聞きたい。記者のみなさんが少し助けてくださればありがたい。遺骨が偽物だとするなら、日本に置いておく必要はあるまい。返してくれればよいではないか。私がそれを大切に保管して、ヘギョンが大きくなったら「母の遺骨」だと言って渡そうと思う。

 めぐみの両親の心情は十分理解できる。娘が生きていてほしいと望むのは当然だし、またそれは大切なことだ。しかし私はめぐみの夫で、めぐみは私の初恋の人だ。そんなめぐみが生きているとしたら、死んだと言ってほかの女性と再婚できるわけがない。ヘギョンを見るたびめぐみを思い出す。顔かたちなどすべてが似ているからだ。今日この場所に来ながらも、めぐみのことをあらためて思い出していた。今日のネクタイは結婚式のときのものだ。ほかにネクタイがないからではなく、彼女への思いをあらためるつもりでつけてきた。

 (記者らに現物を見せながら)これが結婚式の時の写真だ。写真の裏に「1986年8月3日 新しい出発の日を記念して」と書いためぐみの直筆が残っている。これはヘギョン1歳の誕生祝いの時、めぐみと一緒に写したものだ。

 薮中三十次氏に会ったときもこれらの写真をすべて見せたし、すべての現実を受け入れて私に静かな暮らしを取り戻してほしいとも頼んだ。ところがうまくいかなかった。何の目的でこうなるのか納得がいかない。この機会にみなさんが私に対する真実をありのまま報道してくれるよう望んでいる。そして、めぐみの両親が真実をよく知らずに話しているようだが、どうかそばでそっと助けていただき、めぐみの分身であるヘギョンのためにも現実を直視するようお願いする。薮中氏との面談で十分に論議されたにもかかわらず、引き続き私の問題をめぐって私自身を苦しめるような世論が形成されるのは、明らかに約束違反であり、家庭問題に対する侵害だと思う。日本で誰がこのような企みをしているのか。立場を明らかにして謝罪しなければ、今後こういうような席を設けようとは思わない。

 母と姉が私の消息を知りたくて蓮池さんに会ったことを、本人たちの口から聞いた。彼が、私のことを心配している母と姉のことを考えて話してくれれば良かったのだが、私がここで苦労して、食べるものもなくてうろついているかのように話したそうだ。母と姉は彼の話を聞いて失望し、さらに心配を募らせたという。とくに母は寝込んでしまったそうだ。私は蓮池さんの人柄をよく知っている。彼が私を知るほどに、私も彼を知っているが、彼はそんなことを言う人ではない。彼がここで苦労せずに暮らしたなら、私も同じだ。ところがなぜ彼が母と姉に会った際、私について真実を話さずわい曲された話をしたのかについて考えてみた。善人である彼が真実でない話をした理由は、彼の立場から十分に理解できる。だから姉にもそのように理解してほしいと話した。

 最後に、日本にいるめぐみの両親に再び私のあいさつを伝えてほしい。めぐみがこの世に生まれて残していった血筋であり、彼女の分身であるヘギョンがさらに幸せになることを願い、私の家庭と立場を理解していただければありがたい。娘を失った悲しい感情を自制していただき、私に一度会いに来てほしいし、ヘギョンにも会ってほしい。すべてがうまくいくことを心から願うと伝えてほしい。

 Q 横田めぐみさんの拉致という事件の性質上、彼女の死亡に対する物的証拠がなければ納得できないという日本の世論の存在を理解してほしい。めぐみさんが本当に死亡したことを証明する遺骨やそれに代わる新たな証拠を提示する考えはないのか。めぐみさんがまだ生きているという考えを持つ一部日本の人々に対して、彼女の死亡を証明する最も確固たる証拠になるだろう。再びそのような証拠を提示する用意があるのか。

 A 先ほども述べたが、めぐみの夫である私自身がめぐみは死亡したと言っている。(あなたの質問は)私が今まで話したことを信じないと言っているようなものだ。夫である私が言うのにそれ以外、どんな物的証拠が必要なのか。(めぐみは)生きているのに死んだと、私が嘘を言っているというふうにしか聞こえない。その質問は少し度が過ぎている。

 (会見場にヘギョンさんが姿を現す)

 みなさんの関心が高いと思ってヘギョンを連れて来た。

 ヘギョンです。よくご存じでしょう。日本にいらっしゃるヘギョンの母方の祖父、祖母にごあいさつ申し上げ、このように健やかに暮らしているということを伝えてほしい。ご存じのようにヘギョンはわが国の最高学府である金日成総合大学で、21世紀情報産業時代にふさわしくコンピュータ学科に籍を置いている。

 めぐみの分身とも言えるヘギョンを大切に育てるつもりだ。あまり心配なさらないようにみなさんが助けてください。

 (ヘギョンさんに)

 Q 日本にいる母方の祖父母に何か伝えたい言葉はないか。

 孫娘はここで元気に育っているとだけ伝えてほしい。孫に本当に会いたいとおっしゃるならこちら(平壌)にいらしてください。

 Q 金剛山で金英子さんと会ったとき母(めぐみさん)の記憶はないと語ったいう話が伝わっているが、本当にそう言ったのか。

 A 私は19歳で、もう子どもではない。

 父と継母(パク・チュンファさん)が一緒にいる席で、実の母(めぐみさん)の話をすることが、父をつらくさせることぐらい知っている。私によくしてくれる継母(パクさん)にすまない気持もあって話さなかった。

 (最後に金英男さんへの質問)

 Q めぐみさんの両親と第三国や日本で会おうという考えはないのか。

 A ここに私がいるのに第三国に行く必要があろうか。お越しになれば、いつでもお会いする。大変なことだが、あまり複雑に考えないでほしい。

 Q 両親に仕えるのが朝鮮の礼儀ではないか。

 A 日本と朝鮮との間に複雑な問題が横たわっている。解決する意思を伝えてくれねばならないのに、なぜしきりに、違う、めぐみは生きていると言うのか。私自身理解に苦しむ。第三国まで行きたいという考えもない。(おわり)

[朝鮮新報 2006.8.7]