元山牧場 運営方式が話題に、金正日総書記の現地指導後 全国へ |
工場、企業所が飼育、生活費負担 【平壌発=金志永記者】江原道にある元山牧場を金正日総書記が現地指導したニュースは11月5日に伝えられた。以来、市中心部から数十キロ離れた同牧場は、一気に全国区になった。その主な理由としては、朝鮮が核実験を行ったあと、初めて報道された総書記の経済部門に対する視察であることがあげられる。同牧場は平壌−元山高速道路に隣接する山間部に位置しているが、以前には道路利用者の大多数がその存在を知らなかった。同牧場のリ・ソンド支配人の表現を借りるなら、「大して誇れるものもない、田舎の平凡な畜産基地」にすぎなかった。 「実利獲得」の原則で
江原道が乳製品や肉の需要を満たすため牧場の建設に着手したのは2001年のこと。04年には基本的な工事が終了した。昨年に乳加工設備を建設、今年からは肉の供給も正常化された。牧場で生産された乳加工製品は元山市内の幼稚園や託児所、小学校に通う子どもたちに供給されている。 ヤギ、豚、ウサギなど各種家畜を飼育している同牧場の特徴は、その独特の運営方式にある。 それは、元山市内の工場や企業所が家畜の飼育に直接的に関わるというもの。牧場で働く従業員たちは畜産の専門家でありながらも、市内の工場や企業所に在籍している。つまり、工場、企業所の委任を受けて飼育活動に従事しているわけだ。従業員らが生産した肉は、彼らが在籍する市内の工場、企業所に供給されることになっている。 牧場で働く従業員の生活費は、工場、企業所が保障する。また、畜産に必要な飼料などの費用も負担する。一方牧場は、独立した企業所として畜産の技術指導と防疫活動にあたる。市内の各経済単位は、生産された肉を供給されることになるが、乳加工製品は別途購入しなければならない。その売り上げが牧場の収入になっている。牧場は「実利獲得」の原則に従って経営管理を行い、元山市内の子どもたちに乳加工製品を供給するための財源を確保している。 「世帯別参与方式」も リ支配人は、「これからは市内の各単位に対する肉の供給量を増やすことができる」と、自信に満ちた表情で話す。 牧場は、共同運営のパートナーが工場や企業所よりも小規模な「世帯別参与方式」も試験的に導入している。現在、2組の家族が同牧場で畜産に従事しており、「規模の小さい作業単位ほど責任感が強い」(リ支配人)という。 総書記の現地指導が行われるまで、元山牧場のこのような取り組みと経験について地元以外の人々は関心すら示さなかった。 一方、リ支配人はこんなエピソードも披露した。牧場のある山あいには小川が流れている。上流には鉱山があるが、鉱物を採掘し加工する過程で出る廃棄物のせいで、川に白く濁った水が流れ出した。このことを知った総書記は、小川の水を汚染させる鉱山の採掘事業を中断させる措置を講じたという。 「敵対国の圧力と封鎖に立ち向かわなければならない国が、一つの鉱山を建設することは、決して簡単なことではない。しかし牧場の運命と人民の食の問題を解決するために、総書記は迷うことなく決断を下された」 リ支配人は30代まで軍隊に服務した。国の軍優先、軍重視路線を当然のことと受け止めている。一方で畜産を学び、03年にはスイスで世界トップレベルの畜産を学んだ。 「スイスの人々は、朝鮮と同じような圧力と封鎖を受けていたら、スイスは経済を発展させることができなかっただろうと言っていた。われわれが山間地方で何の心配もなく畜産業に専念できるのも、国が『先軍政治』を行ってきたからだ」 核実験実施後、国内では経済復興に邁進できる環境と条件がようやく整ったという雰囲気が高まっている。状況は依然として厳しく、不足しているものも多いが、強力な戦争抑止力の保有が平和的な経済建設の大前提になることを人々は確実に認識している。 核実験後、初めて報じられた総書記の経済部門に対する視察は、国内の人々をあらためて奮起させている。 現地指導が報道されてから1カ月あまり、東海岸から遠く離れた首都・平壌でも、「元山牧場の仕事ぶりに学ぼう」といった声が人々の間から自然とわき起こっている。 [朝鮮新報 2006.12.8] |