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強制連行遺骨問題 北南の遺族招き 市民団体が集会計画

 【平壌発=李相英記者】戦後61周年を迎える8月を前に日本の過去の清算を求める声が高まるなか、朝鮮人強制連行犠牲者遺骨問題の解決へ向けた朝・日民間レベルの取り組みが活発化している。

父の名簿を探す強制連行被害者遺族の金勇虎さん(20日、平壌市内で) [撮影=盧琴順記者]

 日本の市民団体、活動家らが中心となって北南朝鮮から犠牲者の遺族20人を招き、7月28日から8月25日までの約1カ月にわたる全国行動「韓国、朝鮮の遺族とともに―遺骨問題の解決へ2006夏」が行われる。遺族の声を伝え問題解決へ向けた世論を喚起していこうというもので、北海道から鹿児島まで日本全国約25カ所で集会や追悼行事、要請活動などを予定している。

 北側からは金勇虎さん(70)、金元鏡さん(65)、申金女さん(76)の3人が招待されている。

 これに先立ち、行事実行委員会の清水澄子共同代表(I女性会議常任顧問)が報道関係者らとともに17日から21日まで朝鮮を訪問した。一行は上記の3人を含め日本による人権蹂躙犯罪の被害者およびその遺族から証言を収集した。また朝鮮側被害者団体と遺骨問題に関する今後の協力についても話し合った。

 実行委員会側は今後、日本政府に対し朝鮮側遺族の入国要請活動を行っていくという。

 日本の植民地統治下で肉親を失い、いまだその遺骨すら手元に戻っていない遺族は、「犠牲者の尊厳を冒とくする日本当局の対応」を激しく非難し、日本が自らの過ちを謝罪し遺骨問題の解決に真摯に取り組むよう迫っている。

「日本の仕打ち許せない」

千里馬文化会館で公開された強制連行被害者名簿には、市民が高い関心を示した

 訪日を予定している北側遺族3人のうち、金勇虎さんと金元鏡さんは2004年12月に東京で行われた遺骨問題関連の集会に参加し肉親の遺骨を引き取るはずだったが、日本当局により入国を阻まれた経緯がある。

 厚生労働省の資料によれば、勇虎さんの父、金龍均さんは平安北道で日本海軍の軍属として徴用されたあと、1943年9月南太平洋ギルバート諸島のタラワ島で「戦死」した。東京・祐天寺に保管されていた金龍均さんの遺骨が偽物であり、靖国神社に合祀されていた事実が04年末に明らかになっている。

 勇虎さんは訪朝団との面会の席で日本への怒りをあらわにした。

 「父の命を奪っただけでなく、遺骨すらぞんざいに扱うとは、世の中にこれほど非人道的で無情な仕打ちがあるのか。かつて父を戦場に駆り出し、今日その遺骨の返還を阻んでいるのは一体誰なのか。日本は自らの行為について謝罪し、われわれの無念を晴らすべきだ」

 20日、訪朝団同席のもと行われた強制連行被害者名簿公開の場で元鏡さんも、「戦後60年以上過ぎた今になって私が被害者名簿を見ていること自体が正常でない。全世界が日本政府の不当な措置について知るべきだ」と語気を荒げた。

 「今も父が『お前は父の恨みを晴らすため今日一日何をしたのか』と問いかけている気がする。いつか必ず遺骨を持ち帰り、父の霊前に報告したい」

過去清算運動に拍車を

 朝鮮国内での対日感情はかつてないほど悪化している。外務省や国内被害者団体の関係者の間でも、過去の清算に関する日本の対応に不満と怒りの声が噴き出している。反人道的犯罪については別途補償が必要との立場から、朝鮮には遺骨問題に関してもすぐに必要な対策をとるよう強く求めていく構えだ。

 被害者と遺族の証言を聴取した清水氏は、「過去清算の問題を放置してきた日本政府の罪は重い。日本の理不尽な対応が彼らに与えた傷の大きさをあらためて感じた」という。「亡くなってもなお犠牲者はその尊厳を回復されないでいる。日本政府は遺族に対して、遺骨の返還を含め可能なすべてのことを行う当然の歴史的責任がある」。

 訪朝団に同行した朝鮮人強制連行真相調査団朝鮮人側の洪祥進事務局長も、「遺族の声を伝えていくことは、問題の本質を浮きぼりにし、解決へ向けた広範な世論を喚起するうえで重要なこと」だとして、今夏の行事を「『拉致騒動』以降、一時的に足踏み状態だった過去清算運動に再び拍車をかけるきっかけにしたい」と話した。

[朝鮮新報 2006.6.29]