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東京でシンポ 日朝連帯の輪で「制裁」にストップ、各地の日本市民、NGO、労組がエール

東北ア平和の鍵は国交正常化

 「東北アジアに非核・平和の確立を! 日朝国交正常化を求める連絡会」などの呼びかけによる緊急シンポジウム「東北アジアの平和と日朝国交正常化」が11日、東京都千代田区の総評会館で行われ、同胞、日本人ら約400人が参加した。

外交的努力で解決を

シンポジウムには約400人が参加した

 朝鮮が軍事訓練の一環としてミサイルを発射したあと、日本政府が「万景峰92」号の入港禁止などの「制裁」を発動し情勢が緊張している中で開かれたシンポジウムは、2002年の日朝平壌宣言、2005年の6者会談共同声明を基礎に、「制裁」や対決ではなく、対話による外交的努力での懸案課題の解決を求めるとともに、そのための打開策を探ろうと開催された。多くの団体、日本人らが賛同した。

 シンポジウムに先立ち来ひんとしてあいさつした村山富市・日朝国交促進国民協会会長(元首相)は、ミサイル発射に対して日本がどこよりも早く反応し、国連安全保障理事会での制裁決議を目指していることに疑問を呈し、冷静な対応を訴えた。また、6者会談の議長国である中国と「腹を割って話せない」日本の外交の現状、ミサイル基地に対する先制攻撃を容認する主張の台頭に憂慮を示した。

 前半のパネルディスカッションでは、櫛渕万里・NPOピースボード事務局長がコーディネーターを務め、李鍾元・立教大学教授、吉田康彦・大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター客員教授、和田春樹・東京大学名誉教授(日朝国交促進国民協会事務局長)、ジャーナリストの斎藤貴男氏が発言した。

 発言者らは、「ミサイル問題」に憂慮を示しながらも、制裁に向かう日本の対応に疑問を呈し、これまでの朝鮮との外交、国内情勢などにおける問題点を指摘。両国が日朝平壌宣言を遵守、履行し、国交正常化に向けて進むよう訴えた。

一人ひとり尊重を

シンポジウム「東北アジアの平和と日朝国交正常化」(11日、東京)

 李教授は、「ミサイル発射」を受け日本がいち早く国連安保理に制裁決議案を提出したことは、北東アジアの平和を脅かすことになりかねないと述べた。決議への対応しだいで中国を追いつめることになる日本政府のこの「戦略」が妥当なのか疑問だとする李教授は、軍事行動につながりかねず、問題がこじれることで中日、韓日関係が悪化し親米路線が強まることになると危惧を表した。

 一方、当初米国は国連制裁決議の「強行突破」を図ろうとしていたが、中国の仲裁に期待を示し、非公式6者会談での米朝直接対話の可能性を示すなど変化の兆しがあることにも言及した。

 吉田教授は、ミサイル発射実験は国際法違反ではなく、47カ国が弾道ミサイルを保有し、年間100回以上のテストが行われ、事実上野放しの状態だと指摘。朝鮮半島が分断状態にあり、朝鮮が米国と「戦争状態」にあるとして、これを平和状態に変えることが「ミサイル問題」や「核問題」を解決する道だと強調した。

 日朝関係については、日朝平壌宣言に明記された過去清算と経済協力など「約束」が実行されず、国交正常化を阻止しようとする勢力が拉致問題の解決を阻むなど、「ミサイル発射のモラトリアム延長の意向を変えてしまったこと」が対立を生んだとし、宣言の履行を求めた。

 和田教授は、朝鮮が交渉を求めている状態でも、日本は「拉致問題解決至上主義」で(横田めぐみさんの)遺骨問題についての朝鮮の反論や過去清算を求める声に耳を貸さないだけでなく、「北朝鮮人権法」を成立させたと指摘。これは朝鮮から見れば体制転覆を図るものであり、平壌宣言の精神に反すると指摘した。和田教授は「平壌宣言はわれわれの資産」である点を強調しながら、日本政府はそれに見合う政策、見通しと骨格を示すべきだと述べた。

 斎藤氏は、これまでマスメディアが煽り立てることで「北朝鮮に対しては何をやってもいい」という風潮がつくられ、日本国民の不満もピークに達し、好戦的な雰囲気も生まれていると語った。これは、自分より弱い立場の人や民族を差別することで心のバランスを取る、つまり「差別が癒し」になっていると指摘。冷静な対応が必要としながら、人間一人ひとりを尊重しなければならないと述べた。

 また、自衛隊が中国や朝鮮を敵とした先制攻撃容認論に基づいて2003年にすでに演習を行っていた事実が発覚したこと、「国民総動員体制」という言葉が一部で使われていることなどを挙げ、メディアに過敏に煽られては、自衛隊が米軍の一部に取り込まれ「米国の侵略態勢に乗せられてしまう」と警鐘を鳴らした。

女生徒の訴えに涙

 パネルディスカッションに続いて、各地での日朝友好への取り組み、訪朝報告、過去清算への取り組みについて飯田敬次・日朝長野県民会議代表委員、河野達男・日朝友好促進をすすめる区議会議員連絡会・新宿区議、清水澄子・フォーラム平和、人権、環境副代表から意見表明があった。

 東京朝鮮中高級学校の金蓮喜さん(高3)は、チマ・チョゴリを着て通学する電車内で、男子中学生に「テポドン恐い」「北朝鮮恐い」と言われ、侮辱を受けた瞬間に自分が朝鮮人であることを自覚させられたことがとてもショックだったと心情を吐露した。また、「万景峰92」号の入港禁止のため、祖国に修学旅行に行けなかった寂しさを語った。そして、19歳を迎えるときは「侮辱」ではなく「平和」という日本語を覚えたいと訴えた。

 司会を務めた筒井由紀子・KOREAこどもキャンペーン事務局長は「子どもたちを泣かすようなことが絶対にあってはならない」と声をつまらせた。

 最後に福山真劫・フォーラム平和、人権、環境事務局長が厳しい時期に400人を超える人が集まったことが大きな力になる、制裁の先に平和はないと強調、平壌宣言と6者協議共同声明に基づいて運動の輪を拡げ、在日朝鮮人に対する人権侵害に反対し、支援活動を力強く繰り広げようと締めくくった。(李泰鎬記者)

[朝鮮新報 2006.7.13]