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9.19共同声明発表から1年 「金融制裁」解除以外に方法なし

6者会談再開、米側の譲歩必要

 第4回6者会談第2ラウンドで9.19共同声明が発表されてから間もなく1年。6カ国の当局者はこぞって会談を通じた朝鮮半島核問題の平和解決を唱えているが、米国の朝鮮に対する「金融制裁」が足かせとなって6者会談は再開の見通しすら立たない。

「相互が忍耐心を」

 北の核問題において何よりも早急に求められるのは、6者会談の早期開催のために力を注ぐことだ―中国の温家宝総理は11日、第6回アジア欧州サミット(ASEM)でこう述べた。温総理は、各当事国が大局的な視点に立ち冷静さと自制心をもって、対話を通じて葛藤を減らし相互信頼を増進することで、朝鮮半島と東北アジアの平和安定を維持するよう望むと強調した。

 温総理は10日には、同じくASEM参加のためにヘルシンキを訪れている盧武鉉大統領と会談。「(北の核問題を)対話を通じて平和的に解決する」という点で意見の一致を見た。そのためにも6者会談の速やかな開催と9.19共同声明の履行が緊急に必要であることを確認しあった。

 一方、米日は北に、6者会談復帰とミサイル問題に関する「国連決議」順守に向けた圧力をかける方向で合意。6者会談米側首席代表のヒル国務次官補と日本側首席代表の佐々江賢一郎・外務省アジア大洋州局長が4日、東京で会談し「ほかの6者会談当事国とともに、北に6者会談復帰と国連決議順守、ミサイル再実験または核実験の自制を促すことが重要だという点で合意した」(5日発連合通信)としている。

 6者会談支持はロシアも同じだ。ロシアのイタル・タス通信が7日に伝えたところによると、カラシン外務次官はこの日、6者会談を通じた解決が最上の方案であると改めて強調。「ロシアは朝鮮半島の核こう着状態を6者会談の枠内で政治的に解決することを支持する」と述べている。

 5者とも、朝鮮半島の核問題を平和的に解決するには6者会談の再開しかないことを認識している。

 しかし、日米と中韓では微妙に立場が異なる。すなわち、日米は「北に6者復帰を促す」と、今のこう着状態が全面的に朝鮮に責任があるとするのに対し、中韓は「相互が忍耐心をもって持続的な交流、協力を通じて不信を解消」(温・盧会談)すべきだとしている。米国にも問題があるという立場だ。

「さらにやりたい」

 肝心の朝鮮はといえば、もちろん6者会談再開を望んでいる。

 朝鮮外務省スポークスマンは8月26日の談話で、「合意(9.19共同声明)が履行されれば我々の得るものがより多いのだから、6者会談をさらにやりたい」との立場を明らかにした。

 6者すべてが望んでいるのに会談が再開されないのはなぜか。それは、再三指摘されているとおり、米国が朝鮮に「金融制裁」を科しているからだ。

 8月26日の外務省スポークスマン談話でも、「米国が、我々が会談に出られないよう金融制裁を加えていることが決定的な障害」と、この問題がネックになっていることをあらためて指摘した。

 談話はさらに、「金融制裁問題は、単に凍結されたいくらかの資金を取り戻す実務的な問題ではなく、6者会談はもちろん、9.19共同声明履行とも直結した政治問題であり、米国の対朝鮮政策の変化を見通せる尺度の一つだ」と述べた。

 米財務省は9.19共同声明採択直後の昨年10月21日、「大量破壊兵器の拡散に関わった」として朝鮮の貿易会社など8社を制裁すると発表した。これに先立ち「偽ドル流通」にマカオのバンコ・デルタ・アジアが関係していると指摘、朝鮮との取引が中断された。

 11月に第5回6者会談第1ラウンドが開催されたものの、「金融制裁」をめぐる応酬で議長声明採択にとどまり、共同声明履行問題は実質的に話し合われなかった。会談はこの後、実質的に中断し現在に至っている。

ヒル次官補訪朝も

 結論的に言えば、6者会談再開のためには「金融制裁」解除以外に方法はない。

 7日、民族統一中央協議会の主催によりソウルで開かれた「北のミサイル発射以後の南北関係の展望」と題した討論会で発言した李鳳朝前統一部次官は、「6者会談のこう着を解くため、米国が6者会談復帰を前提に金融制裁を猶予し、ヒル米国務省東アジア太平洋担当次官補の訪北を約束しなければならない」と主張した。

 彼は「北を対話の枠外に置いて変化を待つのは非効率的」だとして、どんな形にせよ対話の枠内に引き込むために米国が融通を利かせなければならないとしている。米国に譲歩を迫ったわけだ。

 米国内でもかねてから、「唯一のオプションは6者会談と対北直接対話を通じて真しに交渉に臨むこと」(ニューヨーク・タイムズ紙7月11日付)との意見が出ていた。アーミテージ元国務副長官、プリチャード元朝鮮半島担当大使なども「最終的には米朝2国間対話が望ましい」としていた。

 そもそも7月5日のミサイル発射も、ブッシュ政権の対北政策の失敗がもたらしたものと見る向きが少なくない。6者会談のこう着がミサイル発射訓練の遠因とも言えるからだ。

 ヒル国務次官補は中国に滞在中、6者会談朝鮮側団長の金桂官外務次官との面談を要求したが断られたという(12日の連合ニュース)。朝鮮側はヒル次官補の訪朝を何度か招請したことがある。金次官との会談を望むなら、ヒル次官補が訪朝し朝米直接対話を行うのも一つの方法だろう。(文聖姫記者)

9.19共同声明(要旨)

 1、6者は検証可能な方法で朝鮮半島非核化を平和的に実現することが6者会談の目標であることを再確言

 朝鮮民主主義人民共和国は全ての核兵器と核計画を放棄。遠くない時期に核拡散防止条約(NPT)に復帰し国際原子力機関(IAEA)との核保障措置協定履行を公約

 米合衆国は朝鮮半島に自国の核兵器がなく、核または通常兵器で朝鮮民主主義人民共和国を攻撃、侵攻する意思がないことを確言

 大韓民国は自己の領土内に核兵器が存在しないことを確認。朝鮮半島非核化共同宣言(1992年)に沿って核兵器を搬入、配備しないとの公約を再確言。朝鮮半島非核化共同宣言は順守、履行されねばならない

 朝鮮民主主義共和国は核エネルギーの平和的利用権を所持。他の参加国はこれを尊重。適切な時期に軽水炉提供問題を討議することで合意

 2、6者は相互関係において国連憲章の目的と原則、公認された国際関係規範を順守

 朝米は互いの自主権を尊重し平和的に共存。双務的政策に従って関係正常化のための措置

 朝・日は平壌宣言に従って不幸な過去と懸案の憂慮事項解決の基礎のうえで関係正常化のための措置

 3、6者はエネルギー、貿易、投資分野で双務的及び多角的方法で経済協力推進を公約

 中華人民共和国、日本国、大韓民国、ロシア連邦、米合衆国は、朝鮮民主主義人民共和国にエネルギー支援提供の用意表明

 大韓民国は朝鮮民主主義人民共和国に200万キロワットの電力提供と関連した2005年7月12日提案を再確言

 4、6者は東北アジアで恒久的な平和と安定を実現するために共同で努力することを公約

 5、6者は以上の一致した合意事項を「公約対公約」「行動対行動」の原則に沿って、段階別に履行するための調和のとれた措置を取ることで合意

[朝鮮新報 2006.9.14]