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「あんにょん・サヨナラ」国平寺で上映会 「朝・日共生の架け橋を」

小平の市民団体が企画 市民交流を深める

 「靖国問題」をテーマにした韓日合作ドキュメンタリー映画「あんにょん・サヨナラ」の上映会が16日、東京都小平市の国平寺で行われた。同市の市民団体「タリ(かけ橋)の会」が主催。「国平寺でいっしょに見ませんか−『あんにょん・サヨナラ』」と銘打たれた上映会には、日朝の市民、学生らたくさんの人びとが訪れた。上映後、参加者らは国平寺の尹碧巌住職の案内で寺を見学したほか、同映画の共同監督である加藤久美子さんを囲んで交流会を開いた。

地域から友好親善

約60人の市民が参加した上映会

 戦後60周年にあたる昨年、韓日で共同制作された「あんにょん・サヨナラ」は、アジアや欧米のさまざまな映画祭で上映され、大きな反響を呼んでいる。

 日本国内でも、市民団体などによる自主上映会が各地で開かれている。

今回の上映会を主催した「タリの会」は、小平市在住の市民や朝鮮大学校関係者らが中心となって今春に結成された。

 「地域の日本人と朝鮮人が過去の歴史を互いに見つめつつ身近に付き合うなかで、共に生きる道筋を探っていきたい」

 「タリの会」共同代表を務める平野慎一さんは、同会の発足趣旨をこう説明した。

尹碧巌住職の案内で国平寺を見学する参加者ら

 会の名称になっている「タリ」とは、朝鮮語で「橋」を意味する言葉。同会のメンバーである橋本久雄・小平市議は、「日本や韓国、朝鮮、中国など東アジアの国々を結ぶ架け橋を目指す思いからつけた」と話す。

 人口17万8000人の小平市には、約4100人の外国人が住んでいるが、そのうちの半数近くにあたる1900人あまりがコリアンだ。人口比率では、福生市に次いで都内で2番目に多いという。

 市内には朝鮮大学校があり、近隣には東アジアの人びととの共生を求める活動を積み重ねてきた人たちがいる。歴史問題をはじめとして、東アジアに横たわる溝は近年ますます深まっているが、身近な東アジアの人びとが互いの想いに触れるなかで、両者の間の対立と反目を解消する活動を小平でも始めたい、「暗い溝を埋める共生という名の『タリ(橋)』をかけよう」との想いから「タリの会」が生まれた。

つながりを大事に

 同会が活動の第1歩として企画したのが、「あんにょん・サヨナラ」の上映会だった。

 「日本と東アジア諸国との懸案である靖国問題を扱った映画を、朝・日の友好親善促進を目的としている国平寺で上映することは非常に意義がある」

 平野さんは、アジアの真の平和と友好実現のために、国家レベルの対立を超えた市民同士のつながりの必要性を強調した。

 東村山市在住の篠原勇さんは、映画の感想について、「日本が背負っている重い責任を実感した。過去の清算の問題をなおざりにしてきたツケが靖国問題などに表れている。日本は過去についてきちっと調査して事実を究明し、アジア諸国の人びとと歴史を共有する必要があるのではないか」と話した。

 娘と一緒に観にきたという水谷明子さん(東村山市)も、「靖国問題は、日本がこれからもアジアの中で生きていくうえで、憂慮すべきことだと思う。日本は完全に内向きになっている。弱者の権利が抑圧されている今の世の中で、市民がもっと声をあげて在日コリアンの差別や権利問題について広く知らせていくべきだと感じた」

 上映後、参加者らを前にしてあいさつした加藤久美子さんは、映画のタイトルについて、「こんにちは」と「さようなら」という2つの意味を持つ「あんにょん」という朝鮮語に、「対立と争いよ、サヨナラ、和解と未来よ、こんにちは」という意味を込めたと説明。「現在、日本と朝鮮・韓国との関係はよくないが、この映画が両者の友好親善について考えるきっかけになればうれしい」と話した。

 上映会には朝大生をはじめとして若い世代も多く参加した。また、「タリの会」の趣旨に賛同する近隣の市議会議員らも駆けつけた。

 「目標の人数には届かなかったが、1回目の活動としては満足している」と平野さん。

 同会ではこれから埼玉県金乗院へのフィールドワークや、強制連行犠牲者の遺骨問題に関する学習会なども計画している。

 橋本市議は、「これからも普通の市民の感覚を大事にしながら、一味違った日朝の市民交流を小平から発信していきたい」と力強く語った。(李相英記者)

[朝鮮新報 2006.9.22]