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京阪神シンポ「東北アジアの平和と日朝国交正常化」、平壌宣言に戻り対話すべき

在日朝鮮人への抑圧 「日本の国益にならない」

 京阪神シンポジウム「東北アジアの平和と日朝国交正常化」(同実行委員会主催)が13日、大阪市立北区民センターで行われた。日本当局が朝鮮に対する「圧力」を強化し、総連弾圧を行う一方、6者会談再開合意が報じられるなどの情勢を反映してか、会場は近畿地方の同胞と日本市民ら約500人で埋め尽くされた。シンポジウムには、東京大学名誉教授の和田春樹、ジャーナリストの清水美和、総連中央参事の金明守、「日韓分析」編集人の北川広和(コーディネーター)の各氏が出演。それぞれの立場から日朝国交正常化の道筋について発言をした。日本政府および地方自治体の政治キャンペーン「北朝鮮人権侵害問題啓発週間」に行われた同シンポは、各地で日朝国交正常化のため尽力している人々が集まり日朝の市民連帯を築いていこうという初の取り組みだ。

日朝の現状と課題

13日に行われた京阪神シンポのコーディネーターとパネリストら

 和田春樹氏は「日本の状況が悪い。気分が悪い」と切り出した。そして、2002年9月17日の「日朝平壌宣言」に帰着すべきだと強調し、宣言の内容と成果について言及した。

 また、「日朝交渉断絶路線」を取る「拉致問題対策内閣」の安倍首相が「啓発週間」開始日付の新聞で、「(拉致)被害者全員の奪還に総力をあげて取り組んでいる」「(拉致被害者を)全員生きたまま返せ」といったような主張をしたことを挙げ、「『最重要課題』らしいが、これでは交渉にならない」と述べた。和田氏は何よりも国交正常化交渉を進めなければならないと強調し、「6カ国協議が進展すれば日朝関係も変わるだろう」と展望。「在日朝鮮人と日本人は同じ船の乗客」と述べながら、「日朝関係を転換するのは国民の『良心の声』だ。それにより日本政府は変わる。やらなければいけないことをしなくてはならない」と力説した。

 金明守氏は、警視庁公安部による朝鮮総連と在日朝鮮人への「見せしめ的」かつ過剰な強制捜索は「いつか来た道」を彷彿させると指摘した。朝・日は「信頼し合うことが大切」だと説き、日本政府に対し在日朝鮮人に対する不当な抑圧の中止と「万景峰92」号の速やかな運航再開を求めた。また、今年のような人の往来(朝鮮からの訪日者11人、日本からの訪朝者約400人)の少なさでどう情報共有ができるのか、考えてほしいと訴えた。

中朝関係と東北アジア

会場は日朝国交正常化に尽力する人々の市民連帯を築いていこうという熱気に包まれた

 清水美和氏は、中国から見る朝鮮半島について、経験則を包括的かつ客観的に解説した。国際社会が注目する中朝関係について自身の訪朝体験を踏まえながら、平壌の大同江中洲、羊角島ホテルの地下商店や統一街の市場には中国製の商品が目に付き人でごった返し活気にあふれていたと報告。中国の存在が増していると強調した。

 また、「(中朝関係の発展は)確固不動の戦略的方針」と言い切った中国首脳の言葉を引用しながら、日本の対朝鮮貿易と対照的に朝鮮にきわめて積極的な援助をしていると語った。

 清水氏は開城工業団地の活気に象徴されるように、朝鮮戦争で大きな被害を被った朝鮮半島が統一へと進むのは「不動の歴史的潮流だ」と強調した。

 そして、日本の現状について、朝鮮とは国益を考えた関係構築が必要であると述べた。「在日朝鮮人への嫌がらせは国益につながらない」と強調しながら、「日本は近い将来の南北統一を見据えた新たな朝鮮政策を取るべきだ」と指摘。

 「安倍首相は対北朝鮮外交を変えるべきだ」と主張した。

南朝鮮の反米感情

 北川広和氏は南朝鮮の映画「グエムル」「ようこそトンマッコルへ」に触れ、「いずれも反米映画ではないが根底に反米思想が流れている」ことが大ヒットの背景にあると指摘。さらに、朝鮮の核実験以降の世論調査で「核実験を招いた責任は、朝鮮より米国に」あると感じている人が多い事実などを紹介した。一方、潘基文外交通商相が10月、ライス米国務長官から「朝鮮の核開発資金になっている」と、金剛山観光、開城工業団地での南北協力事業をやめるよう圧力を受けたことに触れ、南北の今日の状況はもはや止められないと語った。

 また、平澤の米軍基地拡張計画に関して、農民、学生、国会議員らが阻止しようと闘っており、農民の間では米国の朝鮮に対する先制攻撃を容認する声は皆無だとし、「反米、南北統一につながる闘いを南の民衆は繰り広げている」と指摘した。

 シンポでは最後に、北川氏が「在日朝鮮人の人権を守ろう。われわれが最低限やるべきことだ。隣人と仲良くし明るい社会を作るためにも『差別、抑圧を許さない』との声を挙げていこう」と強調した。

 シンポでは、大阪朝高生が特別アピールをし、集会アピールが採択された。(李東浩記者)

京阪神シンポ 集会アピール(要旨)

 私たちは今日、このシンポジウムで朝鮮民主主義人民共和国の核実験がどのような背景で行われたのか、朝鮮半島と東北アジアの非核、平和をどう築くか、日朝国交正常化への道筋はどうか、などをパネリストの貴重なお話を聴きながら、それぞれの課題を整理してきました。あらためて朝鮮半島の非核化と朝米国交正常化を謳った昨年9月19日の第4回6者会談共同声明の遵守と誠実な履行が求められており、重ねて指摘されている日朝平壌宣言に従った両国関係正常化の早期実現が喫緊の課題であると確認しました。

 私たちは朝鮮学校生徒の特別アピールに胸を痛め、大人の責任を痛感しながら過去、日本の誤った朝鮮植民地支配の結果、日本に住むことを余儀なくされた在日韓国、朝鮮人の人々の人権を擁護し、その違いを豊かさに変え、ともに生きる社会をつくることを求めていきます。

 私たちは、一度に不特定多数の人びとに情報を送る手段を持ちません。しかし、一人ひとりに語りかけていく限りない力があります。「草の根」の手法を私たちの手に取り戻し、真実を伝え広げましょう。

 勇気をもって隣人に語りかけましょう!

 東北アジアの平和と日朝国交正常化の早期実現のため、ともに連帯しましょう。

 2006年12月13日

 12.13京阪神シンポジウム「東北アジアの平和と日朝国交正常化」参加者一同

[朝鮮新報 2006.12.22]