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〈担当記者座談会 06年朝鮮半島情勢を振り返るB〉 総書記の活動

経済指導、大きな比重

 朝鮮のミサイル発射訓練(7月5日)と核実験(10月9日)に対して国連安保理が「議長声明」を発表し、「制裁」を決議したことから朝鮮半島情勢は一気に緊迫した。そんな今年を反映するかのように、金正日総書記の活動も引き続き軍部隊視察を含めた軍関係の指導が61回と多数を占めた。一方で、経済部門に対する現地指導も19回で昨年と同数。とくに、核実験後の11、12月に経済分野への指導比率が多いことが注目される。

核保有国の自信

胡錦涛主席の特別代表として訪朝した唐家璇国務委員(左側手前から3人目)と会談する金正日総書記(10月19日) [朝鮮中央通信=朝鮮通信]

 A 今年も昨年同様、金正日総書記の活動は軍関係が多かった。

 B 朝鮮中央通信が報道した公式活動回数は61回(12月15日現在)。昨年の65回とほぼ同数で、全体の66%を占める。

 D ミサイル発射訓練や核実験で緊張が増したことが関係するのか。

 B 関係していると思う。実際、軍部隊視察の回数はミサイル発射訓練の前月である6月が12回と最も多く、その後は5月の10回、4月の9回、3月の8回と続く。3月から6月にかけて視察が集中しており、とくに5、6月が多いことから、ミサイル発射訓練を見越して軍部隊の士気を高める必要性があったともとれる。

 A 6月は1〜6日にかけてほぼ連日軍部隊視察が報道された。この時期、ミサイル発射訓練と関連して目立った動きはないが、南朝鮮外交通商部幹部が同月9日、ミサイル発射の兆候があることと関連して北側に憂慮を伝えている。

 D ミサイル発射訓練が行われた7月と、核実験が実施された10月に軍部隊視察が伝えられていないのも興味深い。

 B 逆に11月には3回、12月に入ってからは15日現在ですでに6回の視察が伝えられている。核保有国としての自信が、回数増加にも現れているのではないだろうか。

唐国務委員と会見

 A 核実験がらみで言うと、外交部門で最も注目されたのは、中国の唐家璇国務委員の訪朝(10月)だ。胡錦涛中国主席の特別代表として訪朝した唐国務委員一行と総書記が会見するかどうかが注目されたが、19日に会見が実現した。

 C この会談が核実験後に高まった緊張状態を転換させるポイントになったのは明らかだ。

 D 6者会談が年末に再開されたことだね。

 B そう。あの頃は2回目、3回目の核実験が行われるのではないか、などといたずらに騒がれていたが、総書記と唐国務委員との会見後、北京で朝米中3カ国の6者会談代表団団長が秘密裏に会談し、会談再開が決まった。

 A これを含め外交部門の活動回数は全3回。うち2回を中国関係が占める。もう一つは今年初めにあった中国訪問だ。

 D 9日間の滞在期間だったが、目的は何だったのか。

 C まず朝中関係強化の確認、そしてこう着状態に陥りつつあった6者会談について話し合うこと、3点目は中国の現代化(改革)の実情を把握することだった。

 B 総書記は胡主席との会談で「9.19共同声明」を履行する意思に変わりがないことを再確認しながら、金融制裁問題を克服して会談を引き続き進展させるために中国と共に努力することと語った模様だ。

 D これがうまくいっていれば、もしかしたらミサイル発射訓練も核実験もなかったかもしれない。

 B 一概にそうとは言えないが、少なくとも朝鮮側が金融制裁問題を話し合うために米国に再三働きかけたのは事実だ。それが6月1日のヒル米国務次官補訪朝呼びかけを拒否されてから途絶えた。そして7月にミサイル発射訓練実施。米国の対応を見極めつつ、二つのシナリオを準備していた可能性はある。

 A 「対話にも圧力にも準備ができている」というわけだ。

 C 総書記の訪中コースに武漢、広州、珠海、深圳など中部、南部地方訪問が入っていたことも注目された。というのも、これらは中国の経済改革の象徴だからだ。総書記は2001年1月に上海を訪問したあと、同年10月に経済管理改善方針を指示、02年7月1日から経済管理改善措置が施行された。

 D つまり、今回も訪中後に第二の経済管理改善措置が打ち出されたかもしれないということか。

 C そこまではわからないが(笑)。

 A そういえば今年は北南関係の活動が一つも報道されていない。ミサイル、核実験への対応と関連して北南関係がこう着状態にあることがそのまま反映されている。

「実利主義」を強調

月別活動回数

1月 7回
2月 7回
3月 10回
4月 9回
5月 13回
6月 16回
7月 2回
8月 4回
9月 5回
10月 3回
11月 8回
12月 8回
92回

 A 経済部門に対する現地指導も19回を数えた。これは昨年と同じだ。

 B 労働新聞など3紙の新年共同社説で決定的転換をもたらすよう強調しただけに、総書記の活動においても大きな比重を占めたといえる。

 C とくに今年の現地指導対象は発電所建設場が4カ所あった。黄海北道の礼成江発電所建設現場を訪れた総書記は、「近年、慈江道、平安北道、咸鏡南北道、江原道をはじめとする全国各所に多くの発電所が建設され効果を出しており、新しい発電所が続けて建設されている」として、近い将来電力問題解決で転換が起きると予測した。

 D 朝鮮で電力問題解決に引き続き力を入れている証拠だね。

 C もう一つの特徴は「実利主義」が強調されている点だ。例えば江界木材加工工場を訪れた際には、「企業管理で実利主義の原則を徹底的に保障している」と賞賛し、核実験後初めて訪れた元山牧場では、「実利主義原則を具現し展望を持って建設した誇らしい創造物」だと指摘した。

 B 03年に経済管理改善措置が施行されたあと、「実利社会主義」という言葉がしばしば使われてきたが、「実利主義」が経済部門において引き続き重視されていることを示している。

 D さっきの総書記の中国訪問と重ね合わせるとおもしろいね。巷では制裁などで経済が悪化しているという話もささやかれるが、実際はそうでもないようだ。

 A 昨年に比べれば活動回数は18回減っているが、総書記が精力的に活動していることに変わりはない。来年も総書記の動向から目が離せない。(整理=文聖姫記者)

[朝鮮新報 2006.12.23]