〈舞・朝鮮舞踊研究所設立10周年記念公演〉 映画記録「海女のリャンさん」を舞踊化、「4.3事件」をテーマに舞踊劇「願い」 |
分断の痛みを統一の喜びへ
大阪府内3カ所で教室を開いている「舞・朝鮮舞踊研究所」(任秀香代表)設立10周年記念公演が1月28、29の両日間、大阪国際交流センターで行われた。 同舞踊研究所は1996年、大阪で育つ新しい世代に朝鮮舞踊を専門的に学ぶ場を設け、先代たちが築き上げた民族文化を代を継いで継承していく目的で設立された。 公演初日の第1部では、「チェンガンの舞」「楽しい山登り」「サンモチュム」「慶鼓舞」
など研究生たちとOG、講師たちによる公演が行われ、2日目の第1部では、同舞踊研究所の「民族の心を舞う」をはじめ大阪朝鮮歌舞団の「響け! ウリ チャンダン、統一の願いをこめて」、文芸同大阪支部舞踊部青年部の「トゴの舞」、成人部の「ムダンの舞」ほか、金姫玉韓国舞踊研究所の「胡笛 シナウィ」、呂英華韓国伝統芸術院の「大阪アリラン」など、大阪を拠点に活動する芸術団体の舞踊公演と安聖友マジックショーなどが行われた。
両日の公演第2部では、2004年に製作された記録映画「海女のリャンさん」(原村政樹監督)をもとに創作した短編民族舞踊劇「願い」が披露された。 舞踊劇は、済州島のある村と大阪を舞台に、「済州島4.3事件」によって幼い娘と生き別れてしまった主人公・ポクシリの悲劇と祖国統一への願いを表現した。
演出、構成を任秀香代表、演出、構成指導を平壌音楽舞踊大学振付科の金洛栄講師(人民俳優、人民芸術家)、音楽を平壌国立民族芸術団の申英K(人民芸術家)、韓鉄作曲家(功勲俳優)、演奏を平壌国立民族芸術団管弦楽団が引き受けた。また、主題歌の作詞を文芸同中央・金正守委員長、作曲を朝鮮大学校教育学部音楽科・崔振郁主任がした。振り付けは、同舞踊研究所の講師たちが引き受けた。 出演者は6歳から46歳まで総84人。任秀香代表は、「作品を表現するのに先立ち映画を見て、『4.3事件』と在日朝鮮人の歴史について学習した。とくに、これまで舞踊と言えば農楽舞や民俗舞踊など喜びを表したものを踊ってきた幼い生徒たちが、このような戦争、悲劇をテーマにした作品を表現するのは大変だったと思う」と話した。
公演を観た観客の中には戦争直後の状況を思い出して涙を流す老姉妹の姿もあった。徳原貞子さん(73)と高山八茂子(83)さん姉妹は、「戦争直後の大阪・猪飼野の映像が映し出され、当時の状況が目の前に浮かんだ。1部、2部とも公演はすばらしかった。とくに2部の舞踊劇は、当時の状況をよく現わしていたと思う」と語った。また、37歳のある同胞女性は、「映画を見たのでとても感慨深かった。映像をこのように舞踊化したことがすばらしい。4.3事件の民間人殺りくのシーンと混乱の中で母子が生き別れる場面では涙が出た。音楽と歌もとても良かったし、解説も良かった。何より昨年から生徒たちと大人たちがひとつになってともに公演を成功させたのが立派だし、その根底には在日1世から脈々と受け継がれてきた民族の心があることを実感できた」と感想を述べた。 2日間の公演を総連大阪府本部・金奉亨委員長と文芸同中央・金正守委員長、記録映画「海女のリャンさん」の主人公・梁義憲ハルモニ、その息子の金世正さんが同胞たちと学生、日本の市民、南朝鮮の人など約1400人とともに観覧した。(金潤順記者) [朝鮮新報 2006.1.31] |