〈本の紹介〉 「チョムスキー、民意と人権を語る」 |
本書は20歳のレイコ(岡崎玲子)が、77歳になる反骨の知識人、ノーム・チョムスキーに、突撃インタビューしたもの。 レイコは16歳で新書デビューし、第3回黒田清日本ジャーナリスト会議新人賞を受賞した逸材である。 50歳以上の年齢差を超えて、米国の外交政策、イラク侵略戦争、日本と東アジア、日本と朝鮮、京都議定書を含めた環境問題、安保理のあり様などについて縦横無尽に語り合っていく。 チョムスキーは、戦後の米国の世界支配の飽くなき野望について、一貫して批判しており、とくに9.11の同時多発テロ以降、彼の事実にもとづく政治評論と発言は、米国内外で高い注目を集めている。本書も、レイコの好奇心に満ちた問いに、的確な答えを導きだし、米国の欺まんと虚構を見事に暴いていく。 とりわけ「米国の北朝鮮観」についての二人の息のあった会話は、知的なエスプリに富んで示唆的だ。 レイコ 「日本では、北朝鮮情勢が心配の種です。最近も新たなが報じられています。…そんな中、アメリカ国民が朝鮮半島の抱える問題をどのように捉えているのかは、あまり伝わってきません」 チョムスキー 「米国に滞在していた時から気づいているでしょうが、ここは極端に狭量な社会でもあり、国民の大部分はフランスの場所さえ答えられません。多くの人は、北朝鮮がどこにあるのか、さっぱりわからないでしょう。知っているのは、核兵器で攻撃を仕掛けてくる寸前だ、極悪非道だ、という聞き慣れた情報だけだ。…背景にある事情を少し探ってみれば、米朝枠組み合意や『まずはアメリカが威嚇を止めることだ』という北朝鮮側の要望にも重大な意味があるのに気づく。アメリカ国民に浸透しているイメージは、強力なプロパガンダ組織によって創り出されているのです」 米国のメディアにも触れて、報道機関はもはやジャーナリズムを気取ることもせず、まるで「地元チームをあと押しするチアリーダー」と揶揄するチョムスキー。人間の良識に訴える知的な一冊。(粉) [朝鮮新報 2006.2.1] |