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〈みんなの健康Q&A〉 花粉症−症状と対策

 Q:今年もつらい花粉症の季節がやってきました。すでに昨年12月から薬を服用している人がいると聞きました。

 A:ご存知のように、2月になるとそろそろスギ・ヒノキの花粉によるアレルギー性鼻炎、結膜炎が発症します。

 鼻は外からの空気がはじめに通過する道であるだけでなく、嗅覚という重要な機能を担っています。また、加温加湿作用、ちり、ほこりから防御する作用、局所免疫作用、共鳴作用など、比較的小さな器官の割に実に多くの仕事を任されています。鼻づまりや鼻水によってこれらの機能が麻痺しても命にかかわることもないし、身体的機能低下はほかの全身疾患と比べてそれほどでもないのは事実です。しかし、全体的健康感が薄れ、活力の低下から社会生活機能に支障をきたし、精神面での落ち込みも予想以上に大きいものです。

 Q:風邪とよく似た症状ですが、見分け方はありますか?

 A:風邪はウィルスという病原微生物が原因で起こる病気で、咳、鼻水に熱や頭痛を伴うことが多いけれども目のかゆみは少なく、通常1週間程度で治ります。花粉症の場合は、鼻症状に加え、眼、痒感、眼球結膜の充血、流涙、皮膚、耳、咽喉頭のかゆみ、場合によっては眠気、めまい、頭痛など多彩な症状が出現します。原因となる花粉が飛んでいる間、このような症状がずっと続きます。

 Q:花粉症を予防するためには、ふだんどんなことに気をつければよいですか。

 A:できれば風の強い晴れた日は、外出を控えめにしたほうがいいでしょう。外出しなければならない時は、覆い付きのめがね、ゴーグル、マスク、スカーフ、帽子を着用するのも方法です。服は花粉が付きにくいスベスベした素材のものを選び、髪は小さくまとめて、花粉がつきにくくしてください。また、家に入る前は、玄関先で衣服や髪、持ち物に付いた花粉をはらうようにします。さらに心がけていただきたいのは、外から帰ったら手、目、鼻を洗い、うがいをすることです。洗濯物は花粉のつきにくい場所に干しましょう。最近は街中でも違和感なく装着できるデザインの花粉制御メガネ、口紅がつきにくく呼吸や会話も楽にできる立体構造のマスクなども市販されています。花粉除去専用のブラシや花粉のつきにくい素材でできた外套も売り出されています。

 Q:そういえば、花粉が飛んでくるのは何時ごろが一番多いのですか。

 A:みなさんが最も気になる重要な問題ですね。やはり風の強さと関係がありますが、午前10時頃までは霜や露などの影響もあり、花粉が大気中に放出されることは非常に少ないのです。それからが気温の上昇とともに花粉放出の準備が整います。結局、花粉が数10キロ離れた都市部にまで到達する時刻は、午後3時半頃からピークは5時半頃となります。夕方に一番たくさんの花粉が飛散しますが、少なくとも午後8時にはそれも収まります。

 Q:花粉症によいという売り込みで、飲み物や食べ物が続々と登場していますが、効果のほどはいかがでしょうか。

 A:効果が高いなら、その成分を使った薬剤がとっくに出ているはずです。あまり過度の期待はしないほうがいいでしょう。

 Q:となると、やはり病院にかかって薬で治療するのが最善の方法となりますか。

 A:病院では問診や診察をきちんとして、薬の処方もその時々の症状に合わせ、きめ細かく替えています。大事なことは、花粉飛散情報や患者の例年の症状を参考に治療計画をたてることです。今日では、初期治療という考え方が広まり、花粉飛散の1〜2週間前から薬物投与が行われるようになりました。この方法により諸症状が軽減され、そのシーズンを楽に過ごすことができたという人が増えています。すでに眼症状、鼻水、鼻づまり、くしゃみなどの症状が出現していても、そのうちどれが主体かによって処方をある程度選択できるようになっていますので、自分の症状をよく医師に伝えることが大切です。

 点鼻、点眼薬は即効性があり、局所使用なので全身的な副作用が出にくいという利点があります。初期療法に組み入れられることも多くなりました。

 Q:そのほかにもこれといった治療法はありますか。

 A:大量の花粉飛散が予測される場合、例年の症状が強い症例、薬物治療が奏効しないあるいは薬物治療に対して抵抗感がある症例にはレーザー治療も考慮されます。レーザー治療は前年12月から当年1月までに施行します。飛散開始後はかえって症状が悪化する可能性が高いのですすめられません。手術治療には各種レーザーのほかに、アルゴンプラズマ、化学剤手術などがありますが、これらはアレルギー自体を根治しているわけではなく、あくまで対症療法だということを認識してください。

 Q:筋肉注射という治療法もあると聞きましたが。

 A:それは「ステロイド」という成分を用いたものですが、重い副作用の問題があることと、今日では内服、局所療法および多角的な併用治療で十分に症状を予防、抑制できるとの観点から、第一選択の治療とは認められていません。ほかのすべてのアレルギー治療を行って効果がなかった場合に考慮する方法と思ってください。

 Q:妊娠している女性には、どのような治療が行われますか。

 A:漢方薬を使ってみたり、シーズン前に鼻粘膜を焼灼するのを勧める場合もあります。ともかく花粉防御を徹底することが一番です。

 Q:今後期待される有望な治療法は。

 A:減感作療法といって、原因となる花粉の成分をわざと注射することによって、人為的にアレルギー成分に慣らしてしまおうという予防接種的な治療法が試みられています。問題は2年半という長期にわたる治療なので、かなり根気が必要なことです。現在、舌下減感作療法という注射によらない方法が検討されていて、大いに期待されています。

 Q:気になる今年の花粉飛散傾向について教えてください。

 A:2005年の春は花粉が大量飛散し、各地で過去最高を記録しました。06年は気象条件、木の生理、実地検分から分析された報告をもとに、全国平均でみると05年の1/3以下と予測されています。ただし、例年の平均値と比較すると60〜80%の地域が多く、楽観はできません。飛散開始時期は、関東から東海、近畿、四国の太平洋側が最も早く2月10日頃、関東内陸部から西日本一帯が2月20日頃、東北南部から北陸、山陰にかけての地域が3月1日頃とみられています。また、飛散の終息時期は早めになり、4月中旬頃には花粉シーズンが明けるだろうと予測されています。(金秀樹院長、あさひ病院内科、東京都足立区平野1−2−3、TEL 03・5242・5800)

[朝鮮新報 2006.2.3]