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〈人物で見る朝鮮科学史−4〉 檀君とその時代(下)

朝鮮大学校(東京都小平市)の歴史博物館に保管されている琵琶型短剣

 一言で科学技術といっても、もともと科学と技術は別個のものである。科学は活動面から見れば新しい知識の探求であり、技術は労働手段として発生し後にその手段を創造する手段自体も技術となった。人間は技術によって自然に働きかけその過程で科学を発展させ、また科学は技術によって実践に移された。本欄ですでに述べたように、もっとも早い時期に始まった科学分野は医学と天文学であった。では、技術分野は何だろうか? それは、金属加工技術である。

 原始時代の道具は、狩猟や農業のために石を加工した石器であった。ゆえに、労働手段を技術とするならば石器が最初の技術となるかもしれない。それを、あえて金属加工技術としたのは、その道具をより強力なものとするために開発された青銅器、鉄器がその後の人類の歴史で決定的な役割を果たしたからである。実は、技術には労働手段とは異なるもう一つの側面があり、それは戦争の道具すなわち武器である。技術は人々の生活を豊かにしたが、反面、武器を開発し生活を脅かした。残念ながら有史以来現在に至るまで、武器の開発が科学技術発展の推進力となったことは否定しがたい事実なのである。

細型銅剣

 さて、古朝鮮が朝鮮半島における最初の国家として登場した背景も、強力な武器を手に入れたからにほかならないが、それが青銅である。青銅は銅と錫、その他若干の金属からなる合金であるが、そうすることによってより強固で加工しやすいものとなった。青銅器文化といえば古代中国の殷が有名で、しばしばその影響がうんぬんされるが、古朝鮮では独自の青銅器文化が発達した。青銅によって斧や鋤などの農器具、剣や矛などの武器、細文鏡や銅鈴などの儀器が造られたが、古朝鮮の青銅には亜鉛が混じっていることが特徴である。亜鉛は青銅よりも低い温度で溶けて気化するので、その合金を作ることは容易ではないが、古朝鮮の技術はそれを可能としたのである。また、形式においても琵琶型短剣は朝鮮固有なものとして広く知られている。

 このように独自の青銅器文化を誇る朝鮮であるが、植民地時代、日本の学者たちは石器時代以降に中国から朝鮮に金属文化が伝わり、それを併用した「金石併用期」があり、青銅器時代はないと主張していた。また、檀君神話も平壌付近の伝承にすぎず、檀君陵も実体のないものとされていた。ところが発掘調査の結果、約5000年前のものと鑑定された人骨が発見されたことは、すでに述べたとおりである。日本人の植民地史観による朝鮮史のわい曲はこれらに留まるものではなく、解放後、北南朝鮮の歴史学者によって一つひとつ是正されていくが、それらについて本欄でもしばしば言及することになるだろう。(任正爀、朝鮮大学校理工学部助教授、科協中央研究部長)

[朝鮮新報 2006.2.25]