映画「送還日記」−4日より東京・渋谷で上映、人間味あふれるハラボジたちの姿 |
政治を描いたのではなく、人間を描いた―キム・ドンウォン監督自身がこう語っているように、映画では、「非転向長期囚」という固い<Cメージとは異なる、人間味あふれるハラボジたちの姿を見ることができる。 1992年春、キム監督が刑務所から出獄した身寄りのない2人の老人を引取るところから映画は始まる。長い獄苦から解かれた非転向長期囚、チョ・チョンソンさんとキム・ソッキョンさんだった。2人は監督の住む町で生活をすることになる。 その時から、監督は彼らの日常生活をカメラで追い始める。2人をはじめ、獄中を出て南で孤独に暮らす非転向長期囚たちの生活もとらえる。その一つひとつの重い&ィ語は、ここで書くより実際に見てほしい。
過酷な拷問に耐え切れず転向した同僚と再会するチョさん。そのシーンを撮影する監督の、転向者たちへのまなざしが温かい。 ある時には彼ら長期囚に対する拒否感を自覚しながらも、彼らを北へ送還させる運動に関わり始めるが、そのことが南当局の神経に障り、逮捕も経験する。しかし、それがかえって老人たちとの距離を縮めることになった。 2000年の6.15北南共同宣言を機に、非転向長期囚の送還も現実味を帯びてくる。だが、南出身の長期囚らが北に送還されるべきなのか、などのさまざまな葛藤が元長期囚たちの間で醸し出される。監督はそういった側面も丁寧に描いていく。彼らの送還に反対する「拉北者」家族の主張も紹介する。 そして、00年9月、彼らの送還が実現する。町の人々や支援者たちと別れるのはつらいが、数十年ぶりに故郷に戻る彼らの表情は当然に明るい。 北で暮らす老人たちの姿をカメラに収めようと、監督は訪北を試みるが、「国家保安法」違反の前歴のため当局から許可が出なかった。監督は訪北する友人にビデオレターを託し、彼らの姿を映してきてくれるよう頼む。 映画は、北で過ごす老人たちの姿でラストを迎える。「会えなくて残念だよ。あそこ(南)にいた時は言わなかったけど、(監督を)息子のように思っていたんだ」。チョさんの言葉に、老人たちとキム監督とのつながりの深さが凝縮されている。 2時間半の大作だが、長さをまったく感じさせない。 「こんなに泣きながら見た映画は初めて。同じ祖国統一という願いを込めて作った『JSA』を考えたら、恥ずかしく思う」。「オールドボーイ」のパク・チャヌク監督をしてこう言わしめた珠玉のドキュメンタリー映画だ。(聖) ※4日(土)〜24日(金)、渋谷シネ・アミューズにて上映。25日(土)〜渋谷シネ・ラ・セットにて引き続き上映。 2003年韓国映画、148分、キム・ドンウォン監督作品。宣伝、配給シグロ、シネカノン。URL=http://www.cine.co.jp/soukan。 [朝鮮新報 2006.3.3] |