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〈本の紹介〉 「正義なき国、『当然の法理』を問いつづけて」

 本書は東京都の保健師である在日2世・鄭香均さんが、94、95年に管理職試験を「当然の法理」を理由として、拒否されたことについて、その違憲性を正すべく提起した裁判についての記録。

 とりわけ、本書の第二章「個をつかむ」で明らかにされた最高裁判決のあとに、鄭さんに向けられた誹謗中傷とバッシングの凄まじさに憤激する。「公務員失格、保健師失格、人間失格のあなたは早く日本から出て行きなさい」「一分、一秒でも早く日本から消え失せなさい」「気が狂った反日外国人分子に、この美しい日本の地を踏み、空気を吸ってほしくない」などの罵詈雑言がつづられた6000通ものメールが送りつけられたという。

 拉致報道のあと、在日朝鮮人やウリハッキョの子どもたちへの暴言、嫌がらせ、暴行事件が多発したが、それを彷彿させる陰湿な排外意識が牙を剥き出している。

 本書はそうした不当な国籍差別や民族差別に立ち向かった人間としての抵抗の軌跡が刻まれている。

 口を開けば、「多民族、多文化共生社会」などという居心地のよい言葉があふれている日本。しかし、これが戦前の「五族協和」とどう異なるのか。主人と奴隷の「共生」ではない、在日外国人の人権を尊重してこそ、共生社会は生まれるのである。

 隣人と共に生きることを徹底的に拒む日本社会の執拗さ、不条理にふつふつと怒りがわいてくる。(鄭香均編著、明石書店)(粉)

[朝鮮新報 2006.3.15]