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〈みんなの健康Q&A〉 睡眠時無呼吸症候群(上)−予防と対策

 Q:「春眠、暁を覚えず」というわけで、やたら眠い季節がやってきました。実はですね、私のいびきがひどくて家族から迷惑がられているのですが…。

 A:自分のいびきはわかりませんが、他人のいびきがうるさくてなかなか寝付かれなかった、最悪の場合は一睡もできなかった、というつらい経験はどなたにもあると思います。ところで、この「いびき」は単にうるさいというだけではすまされない問題もかかえていることが、近年明らかにされつつあります。疫学調査によれば、いびきをよくかく人は高血圧、心臓病、脳卒中などを発症しやすいのではないかといわれているのです。

 Q:いびきをしていて急にやんだ時に、まるで息が止まっているように見受けられることがありますが、どういうことなんでしょうか。

 A:空気の通り道である鼻の奥から喉にかけての部分を上気道といいます。ここが狭くなっているために生じる現象がいびきです。最近注目されている睡眠時無呼吸症候群の特徴的な臨床症状の一つにあげられています。

 Q:えっ? とてもおそろしげな病気のように聞こえますが、いったいどういうものなのですか。

 A:この病気は2003年2月26日の新幹線運転手の居眠り事故で、一躍世間の脚光を浴びました。

 Q:はい、大変話題になりました。

 A:これは、睡眠時の呼吸異常が昼間にまで影響を及ぼすことが明らかになってきて注目され始めた病気です。「いびきをかいてよく眠っている」といわれますが、実際は熟睡していないことが多いのです。

 Q:もう少し具体的に説明していただけますか。

 A:睡眠時無呼吸とはいかなるものなのか、説明しましょう。

 普通、呼吸する時には鼻または口を使います。寝ている時も同じで、鼻がつまっていなければ鼻で、鼻がつまっていれば口で呼吸することになります。

 無呼吸とは臨床医学的には「呼吸による鼻または口での気流が十秒以上停止した状態」をいいます。無呼吸には大きく二つの型があります。「閉塞型」の無呼吸は、呼吸の努力をしているにもかかわらず、通り道がふさがっているために気流が止まっている状態です。

 もうひとつは「中枢型」とよばれ、何らかの原因で呼吸運動自体が抑制され、気流も止まってしまっている状態です。

 Q:この病気は体型に関係するのですか。

 A:大いに関係ありです。一般的に問題になるのはほとんど肥満による閉塞型無呼吸と考えてもいいくらいです。また、高血圧とも関連するといわれています。

 人間はいざ眠るという時には横になる、すなわち、だいたい仰向けになります。こういう姿勢だと、重力の関係で舌の位置が背中側、つまり奥に落ち込んできます。そのままこの重力に従うと、舌によって空気の通り道である上気道が塞がってしまいます。その時に呼吸を保とうとして働く力が、上気道を広げようとする筋肉の力であり、それを指令しているのが脳神経です。これらがうまくかみ合って睡眠時でも上手に呼吸ができる仕組みになっています。

 ところが、太っていると上気道周囲の脂肪組織も多くなり、上気道内径が解剖学的に狭くなり、気道抵抗が高くなっています。そのため、健常人と同じ吸気量を保つためには、より中に引き込む力を強くする必要があります。睡眠時にはただでさえ上気道開大筋の働きは抑制されているので、容易に気道が閉塞する結果となります。いびきをかきやすい原因もここにあります。

 Q:ちゃんと寝ているはずなのに、なぜ昼間眠くなるのですか。

 A:ここが大事な点です。この病気で問題となるのは、いびきから無呼吸状態におちいって、その後再びふだんと同じ呼吸をし始める直前におこる脳波上の覚醒反応です。つまりいったん目覚めてしまうのです。これは意識しておこるものではなく、呼吸をしないまま永遠の眠りにつかないようにするための、生体の防御反応ともいえます。この過程で生体は一瞬起きた状態になり、閉じていた上気道が開き、呼吸が再開することになります。当然のことながら、この覚醒反応は睡眠を分断するものであり、そのくり返しにより質的な睡眠不足を招きます。その結果、目覚めがすっきりせず、日中やたらと眠くなり、集中力が欠如します。(金秀樹院長、医協東日本本部会長、あさひ病院内科、東京都足立区平野1−2−3、TEL 03・5242・5800)

[朝鮮新報 2006.3.17]