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〈みんなの健康Q&A〉 睡眠時無呼吸症候群(下)−予防と対策

 Q:前回のお話で、いびきが無視できない場合があることがよくわかりました。

 A:とくに太り気味で習慣性にいびきをかく人が、しょっちゅう昼間眠くてたまらないという時は、睡眠時無呼吸症候群(略してSAS)である可能性が高く、要注意です。SASにおいては、眠気、集中力低下による交通事故、作業能率および学業成績の低下が大きな問題点であることは当然ですが、それ以外の話題として、高血圧、高脂血症などの生活習慣病を合併しやすいことが近年示唆されています。また一方では、心臓病、たとえば狭心症、不整脈の原因あるいは悪化因子になりうるともいわれています。

 Q:診断するためには特別な検査を行うのですか。

 A:はい、もちろん客観的に証明する必要があります。ただし、まず日常生活における眠気の傾向を分析評価することにより病気の疑いがあるかどうか調べます。昼間の眠気状況を知るため、別掲のような問診票がよく用いられます(昼間の眠気指数評価)。その合計点数で11点以上を異常に眠くなる傾向あり、すなわちSASの疑いありと判断しています。

 Q:点数が高い人に対して、睡眠中の呼吸状況を直接調べることはできますか。

 A:睡眠中の無呼吸の有無や重症度、睡眠の深さなどを調べる検査を「終夜睡眠ポリグラフ検査」といいます。この検査には単に呼吸状態を調べる簡易検査と、脳波、眼電図、呼吸筋の機能なども同時に調べる精密検査とがあります。簡易検査は在宅で施行され、1時間あたりの無呼吸と低呼吸の合計数が20〜40の場合はさらに精密検査をすすめます。40以上の場合はほぼ診断確定ということで、すぐにも治療を受けなければなりません。

 Q:検査のためには入院しなければなりませんか。

 A:できるだけ自宅での実生活と同じ条件下で検査を進めたほうがよいのですが、精密検査の場合、顔などにセンサーを着けるだけでなく、ほかに複雑な機器を扱うので入院が望ましいです。

 Q:SASの診断には慎重でなければなりませんね。治療適応の決定もむつかしそうです。

 A:単なるいびきだけで昼間の眠気がひどくない人は、あえて治療の対象になりません。また、睡眠時に呼吸は止まるけれど、昼間の眠気、集中力低下といった自覚症状がなく、高血圧などの合併症もなければ、同様に積極的な治療適応にはならないと考えられます。

 Q:誰でも長びく会議や読書で眠気をもよおし、ついついうとうとしてしまうことがあります。

 A:眠気に関しては自分で感じているのと、他人から見た時の判断が異なる場合があるので注意が必要です。自分では眠くないと主張していても、他人から見ると居眠りばかりしているようだと、やはり問題ですね。

 Q:明らかにSASと診断がついた場合には、当然治療が必要になってくるわけでしょうが、その治療法について教えてください。

 A:主な治療法として、減量療法をはじめとする日常生活改善、鼻マスク療法(経鼻式持続気道陽圧治療)、耳鼻科的な処置、手術、口腔内装具の作成装着などがあります。

 軽症の方は、食事療法、運動療法による減量や飲酒を控えるなどの生活習慣の改善により症状が軽減し、うまくすればまったくなくなることもあります。ちなみに10%の体重減少により睡眠中の閉塞型無呼吸はおよそ30%減少するといわれています。肥満治療についてはここでは詳しくお話しする余裕がありませんが、実際には減量は困難なことも多く、また有効な減量が達成できるには長期間を要します。SASがあると生活するうえでとても不便ですから、すぐにでも症状を改善したいものでしょう。それゆえ、先に述べたような現実的で即効的な治療を実施することがすすめられます。

 Q:鼻マスクを使う方法などですか。

 A:今のところ、経鼻式持続気道陽圧呼吸装置による治療が第一選択とされています。これは鼻マスクにより患者の鼻から一定の陽圧をかけ、常に空気が流れるようにして、睡眠中の気道の閉塞を防ぐというものです。自宅でできて、慣れれば鼻の違和感も感じなくなります。この治療がうまくいけば無呼吸、いびきの消失が認められ、睡眠の質が向上します。ただし根治的治療ではないのでたいてい毎晩行わなければなりません。また、適切な機種、マスクを選定しないと、鼻や口腔との相性が悪くて上手に利用できないこともあるようです。

 Q:そのほかの治療法についてはどうですか。

 A:鼻マスク療法の適応に満たない軽症例には口腔内補助装具が使用されることもあります。こういった装具や減量、側臥位睡眠、睡眠剤、抗うつ剤などの薬剤服用、就寝前アルコールの禁止、鼻や喉の手術等々を適宜組み合わせて治療することも可能です。たとえば、肥満がない人の扁桃肥大例にはその部位の形成手術が有効であることがよく知られています。

 自分の生活様式、身体状況をよく把握することが、適切な治療法を見いだすのに重要です。(金秀樹院長、医協東日本本部会長、あさひ病院内科、東京都足立区平野1−2−3、TEL 03・5242・5800)

昼間の眠気指数(Epworth Sleepiness Score) 

次の設問に0〜3で答えてください

 ・座って読書をしている時
 ・テレビを見ている時
 ・会議、劇場などで積極的に発言などをせずに座っている時
 ・乗客として、一時間続けて車に乗っている時
 ・午後に横になることがあるとすれば、その時
 ・座って人と話をしている時
 ・アルコールを飲まずに昼食をとったあとに、静かに座っている時
 ・自動車を運転中に渋滞・信号などにより数分間止まった時

 0=眠くならない
 1=眠くなるかもしれない〜まれに眠くなる
 2=1と3の中間(しばしば眠くなる)
 3=まちがいなく眠くなる

 各設問に対する答えの合計点数が11点以上あれば、SASの疑いがあります。

[朝鮮新報 2006.3.24]