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〈本の紹介〉 「メディアを人権からよむ」

 あらゆる差別を禁じた憲法施行から半世紀が経とうとも、依然として根強い差別は残っている。部落問題、在日外国人問題、ハンセン病問題…。

 著者は、35年間あまり通信社に勤務し、人権、平和、司法、教育など、幅広いニュース報道に関わってきた。

 本書は、1995年から10年間、部落解放、人権研究所の月刊誌「ヒューマンライツ」に連載してきたコラム「メディアをいま人権から読む」をまとめたもの。

 「私を受け入れる準備はできていますか」と題された97年7月付けのコラムでは、マスターズを史上最年少の21歳で制覇、マイノリティにゴルフへの道を広く開いたタイガー・ウッズを取り上げて、時代の変化を切り取った。

 ウッズはテレビコマーシャルで「米国には私の肌の色のせいで、私がプレーできないコースがいくつかある。世界よ! 私を受け入れる準備はできていますか」と訴えた。

 著者は、「さて、日本はどうだろう? スポーツ、芸能界のスターでも、部落出身者や在日コリアンはウッズのように胸を張って出自を語ることができない。相撲の世界でも、外国人力士には日本への帰化の圧力がかかる。民族教育への圧迫、公務員の国籍条項…。マイノリティを阻む世界の厚い壁が、社会のすみずみに張り巡らされている」と指摘する。

 日本では04年2月、法務省入管管理局がホームページで「不法滞在等の外国人情報」を一般市民からメールで受け付ける窓口を設け、この現代版「密航奨励制度」は現在も存在している。

 麻生発言、ことばと差別、強者の側に立った報道姿勢など65のコラムには、日本のマスメディアを改善したいと考える著者の願いが込められている。(中川健一著、解放出版社、TEL 06・6561・5273)(潤)

[朝鮮新報 2006.4.3]