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〈本の紹介〉 「21世紀 民族を語る」

 「祖国統一は民族問題だ」「大事なことは民族、民族自主である」。著者は生前こう語り続けた。先日、在日と南の有志が発起人となって東京で行われた出版記念会でも、あいさつに立った人々が口々にそのことを強調していた。

 今回日本語版が刊行された本書(原題は「21世紀 わが民族のはなし」)にも、著者のそんな思いが凝縮されている。

 著者は韓国版まえがきでこう述べている。

 「六.一五共同宣言後、四年というさほど長くはない期間に達成した成果は、まさに驚異的であるといえる。半世紀以上にわたる冷戦時代に形成された南北間の相互不信と対決意識は構造的に崩壊の過程を進んでおり、われわれは『ひとつの民族』であり『おなじ血脈』『兄弟姉妹』であるという民族的自覚と意識をもつにいたった」

 「統一の里程標である六.一五共同宣言の実践においては、何よりも全民族的自主権の確保が基本的課題であり、これは『わが民族どうし』の民族共助によってのみ解決可能であるといえる。韓半島(朝鮮半島)の矛盾構造が『南北のわが民族対外勢』という関係なので、なおさらである」

 少し長めに引用したのは、この部分が著者の考えを最も反映していると思えるからだ。

 本書は4章に分けられている。第1章は、先軍政治、強盛大国論、民族論、統一論、「わが民族第一主義」など朝鮮の今を知るうえで重要なキーワードをわかりやすく解説した。あくまで、朝鮮の立場に立って、著者の主張をまとめたのが特徴だ。

 ぜひ一読をすすめるのは第2章「講演と対談」。とくに「統一時代を拓く九つの話」と題して行われた故文益煥牧師との最後の対談は、1993年に行われたにもかかわらず、今の時代にも通じる示唆に富んだ内容だ。統一運動に生涯をかけてきた両元老の対談だけに、単なる時事対談にとどまらず、マクロ的な視点に立って統一問題の本質を多面的かつ深く分析している。

 同胞読者にとっては、月刊誌「統一評論」の崔錫龍編集長、祖国平和統一協会の康民華・広報局長との鼎談も必読。金南植氏が講演のため来日した2003年7月に実現した。

 著者は昨年1月、来日中に急逝した。まさに、本書の出版を準備するための来日だった。この本をとくに若い在日同胞に読んでほしいと願っていた著者。その遺志を、在日と南の有志が力を合わせて見事実現させた。6.15時代が生んだもう一つの貴重な財産である。(21世紀 民族を語る」編さん委員会訳 金南植著 統一評論新社 TEL 03・5800・5101)(聖)

[朝鮮新報 2006.4.10]