〈みんなの健康Q&A〉 変形性膝関節症−痛みと原因 |
Q:歳をとると膝の痛みで歩くのが困難になる人が多いようです。高齢者の膝の痛みの原因は何ですか。 A:膝周辺の骨折の後遺症、関節リウマチ、骨壊死、というような特殊な病気をもっている人でなければ、ほとんどは変形性膝関節症という病気です。膝関節は大腿骨(ふとももの骨)の下の部分と脛骨(すねの骨)の上の部分の組みあわせです。この2つの骨のあいだには、骨と骨が接触しないように関節軟骨という滑らかな部分があります。変形性膝関節症はこの関節軟骨が摩耗(すりへること)したり、摩耗が進行して骨と骨が接触したり、さらに進行して骨が破壊されたりして膝関節の痛みと変形が起こる病気です。 Q:その変形性膝関節症という病気の原因は何ですか。 A:たとえば太りすぎている人とか、何十年も重労働をしていた人など、膝関節にかかる力学的負荷に起因する場合もありますが、この病気になる人のほとんどは、原因がわかりません。同じ家族内で多数発症することもあるので遺伝的素因の関与が推測されていましたし、また関節内の細胞の研究から自己免疫機構(自分の免疫が自分の身体の一部を傷害する)との関連が報告されてきましたが、現時点ではまだ確立されたものはありません。また、お年寄りに多い病気なのですが、若年発症の場合、30歳より前で発症することもありますので、高齢者に限った病気でもありません。 Q:軽い痛みなら、歳をとると誰でも感じることはあると思うのですが、痛みがつらくなるとか、歩きにくくなると治療したいと思います。どうしたらいいのでしょうか。 A:治療方法は大きく分けると手術療法と手術以外の方法があります。手術は一部の重症の人に行いますが、ほとんどの人は手術以外の治療方法がまず選択されます。手術以外の方法は、薬、注射、物理療法(温める、電気をあてる、など)、運動療法、装具、食餌療法(減量)、さらにはサプリメント、鍼灸、カイロプラクティックなど、いろいろなものがあります。 Q:手術はしたくありません。サプリメント、鍼灸、カイロプラクティックなどもお金がかかりそうですね。手術以外の方法で、できればつらい思いをせずに、お金のかからない運動療法があれば教えてください。 A:ストレッチ訓練と筋力強化訓練が有効とする報告が多いようです。変形性膝関節症になると膝を完全に最後まで曲げたり伸ばしたりできなくなることが多いのですが、お風呂で身体が温まっていると普段よりも膝を曲げたり伸ばしたりすることができるようになりますので、そのときにできるところまで曲げたり伸ばしたりします。これがよく行われているストレッチ訓練の方法です。筋力強化訓練で有効なのは大腿四頭筋(ふとももの前の筋肉)の強化です。あおむけに寝ながら膝をまっすぐ伸ばしたまま股から下の脚全体を上げ下げする、いすに座りながら膝をゆっくりと曲げ伸ばしする、などの方法です。要するに膝関節に体重の負荷をかけずに筋力を鍛える方法です。できれば一日に5〜10分を習慣づけてやるようにしましょう。力がなくて上げ下げや曲げ伸ばしができない人は力を入れようとするだけでもいいですよ。 Q:体重の負荷をかけない運動をするということは、歩かない方がいいのですか。 A:いいえ。骨と関節軟骨は適切な体重の負荷が加わることによって正常な代謝を維持していますので、膝関節に体重をかけてやらずに安静にしすぎるとかえって骨と関節軟骨の質が悪くなります。負荷を与えすぎるのも症状の悪化につながりますので、どの程度歩くのが良いかというと痛みに応じてです。最近の研究報告では、痛みがないときは一日に20分以上、歩いていて途中で痛くなったときはその時点まで、歩く最初から痛いときは100歩から200歩、歩けないときは物につかまって足踏みを100歩から200歩、というぐらいが推奨されています。 Q:わかりました。ではこのような方法で良くならない場合はどうすればいいのでしょうか。手術を受けなければいけないのですか。どういう手術が行われ、また、危険性はどうなのですか。 A:どんなに悪くなっても、手術をやらなければならない、という状態はありません。膝が痛くて歩けなくなり、手術以外のすべての治療をしても良くならない場合でも、本人がその状態を許容できるのなら手術も何の治療もしないということも一つの選択肢です。ただ、医師の診断がまちがっていなければ変形性膝関節症は手術で痛みがなくなる可能性が高い病気です。手術には骨切り手術(骨を切って悪いところに負荷がかからないように骨の形を変える)、人工関節手術(関節を切り取って関節と同じ形をした人工物と入れ替える)、などがおこなわれています。とくに人工関節手術は、痛いところを人工物と入れ替えることによって痛みがまったくないようになるので、外科のすべての手術の中でもとくに手術後の患者の満足度が高いものです。ただし、まれなことですが、あまり健康でない人が手術をされると手術後の合併症などで命を落とす危険性があり、症状に対する医師の診断がまちがっていると手術をしても痛みが変わらない、失敗すれば障害がひどくなる、というような問題もあります。手術を受けるかどうかと考えるのなら、難易度の高い手術ですので、なるべく同じような手術をたくさんやっている医療機関を受診して相談してみましょう。どこに受診したらいいのかわからなければ、まずは近くの整形外科医、かかりつけ医などを受診して、どこに行ったらいいのかを調べてもらって、紹介してもらうと良いでしょう。(富永病院(整形外科医)、金トルセ、日本整形外科学会専門医、大阪市浪速区湊町1−4−48、TEL 06・6568・1601) [朝鮮新報 2006.5.12] |