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〈こどもの本だな〉 新学期 さあ子どもと一緒に朝鮮の絵本の世界へ!

昔ばなし、民話、創作童話 民族情緒あふれる絵の魅力

朝鮮の絵本にも楽しいお話がいっぱい

 新緑のシーズンを迎え、子どもたちと青空のした、楽しいレジャーを計画している家庭も多いはず。ジメジメした梅雨を前に、ちょっとした余暇を利用して、子どもたちと朝鮮の絵本に親しんでみてはどうだろう? また、誕生日のプレゼントに、子どもと一緒に書店を訪れるのも楽しいかも。

 絵本は一般書店ほか、コリアブックセンターでも注文できる。

 問い合わせ=コリアブックセンター(TEL 03・3813・9725、FAX 03・3813・7522、Eメール=order@krbook.net)。

「あかてぬぐいのおくさんと7にんのなかま」−さいほう道具の自慢大会

「私がいちばん!」というものさしふじん(福音館書店、TEL 03・3942・1226、1500円+税)

 あかてぬぐいのおくさんは針仕事がとてもじょうず。

 おくさんの部屋にはいつも7つの裁縫道具が置いてある。物差し、はさみ、針、糸、ゆびぬき、のしごて、ひのし。

 あるひ、おくさんがちょっとうたた寝をしている間に、この7つ道具たちが「うちのおくさんがお針がじょうずなのは私のおかげ」と、自慢ばなしをはじめて言い争いをはじめたからさあ大変。

 ものさし婦人、はさみお嬢さん、針むすめ、糸ねえさん、ゆびぬき婆ちゃん、のしごて乙女、ひのし姉やの騒ぎに、奥さんはついに目を覚ましてしまった。

 そして、「私の腕がいいからおまえたちが自分の役目をはたせるんじゃないか!」と厳しくぴしゃり。

 7つ道具たちは悲しくなって、泣いたり、飛び出していこうとしたり…。

 登場人物の衣装や髪型のほかに、たんすや机、針箱、枕など室内に描かれた細かな調度品にも民族色がたっぷり込められている。鮮やかな色彩も美しい。7つ道具たちのユーモラスな表情が見るものの心を和ませてくれる。

 読んであげるなら3歳から、自分で読むなら初級部低学年向き。全文ひらがなとカタカナで書かれている。

「あまのじゃくなかえる」−かあさんにさからってばかりのあおがえる

かあさんがえるはついに病気になってしまった(少年写真新聞社、TEL 03・3264・2624、1500円)

 朝鮮でいちばん知られている昔話。

 あおがえるは、かあさんがえるの言うことにいつもさからってばかりいた。

 かあさんがえるが「東へお行き」と言えば西へ行き、「西へお行き」と言えば東へ行った。

 「きょうは雨で水かさがましているから川で遊ばないで山へ行って遊びなさい」と言ってきかせると、いつのまにか川に入ってじゃぶじゃぶ遊び、日差しがかんかんで「一緒に川でおよがないかい?」というと、暑くてふうふう言いながら山に登って遊んでいた。

 なんでもかんでもさかさまのことばかりするので、かあさんがえるは困っていた。心配し続けるうちにとうとうかあさんがえるは病気になってしまった。

 かあさんがえるはさかさまのことばかりするあおがえるに「最後のおねがい」をするが、あおがえるは…。

 緑色を基調とした朝鮮画が心を和ませる。絵を通して朝鮮画にも親しみを感じられる1冊。

 あおがえるの鳴き声もおもしろい。

 巻末には朝鮮語の原文も掲載されている。初級部高学年以上なら、日本語を読んだあと、朝鮮語の原文を読んでも楽しめる。

「さんねん峠」−ころぶと3年しか生きられない!

おじいさんは転ばぬようにと気をつけるが・・・(岩崎書店、TEL 03・3812・9131、1200円+税)

 さんねん峠にはむかしからこんないいつたえがあった。

 「さんねん峠で ころぶでない さんねん峠で ころんだならば 三年きりしか いきられぬ ながいきしたけりゃ ころぶでないぞ さんねん峠でころんだならば ながいきしたくも いきられぬ」

 だから、さんねん峠を越えるときは、みんなころばぬようにおそるおそる歩いていた。

 しかし、ある日おじいさんがさんねん峠で石につまづきころんでしまったからさあ大変!

 あと3年しか生きられぬとおじいさんはその日からすっかりびょうきになってしまった。

 おじいさんを助けるために、ある日、トルトリ少年がいいことを思いついて、おじいさんのお見舞いにかけつけた。はてさて、おじいさんは助かるのか!?

 朝鮮学校の初級部2年生の音楽と、日本の小学校3年生の国語の教科書にも出てくる物語。

 文と絵を、在日2世の同胞女性が手がけた点も注目される。リズミカルな文章と、たんねんに描かれた朝鮮の農村の人たちの暮らしや風景、機知に富むお話が読む人の夢を広げてくれる。

「水宮殿」−ウサギとカメの知恵くらべ

カメにのり水宮へとびたはしる(あートン、TEL 03・5459・2752、1500円+税)

 物語は朝鮮学校の国語の教科書に登場する「トッキ(兎)伝」と同じもの。

 昔、南海の水宮の竜王が原因不明の病にかかった。薬という薬はすべて効かず、医者は唯一地上に住むウサギの肝が効くと言う。

 竜王は臣下を集め、地上に赴きウサギの肝を持ち帰るよう求めるが、みなそれぞれに言い訳をし、行こうとしない。ただ1人名乗り出たのは忠義者のカメだった。

 カメはウサギの絵を手に地上に赴く。いろんな獣がいる中、やっと出会ったウサギを何とか言いくるめて水宮に連れ帰るが、ウサギは腹を割かれる寸前に「地上に忘れてきた肝を取ってくる」と竜王をだまして逃げてしまう。

 ウサギとカメ、ウサギと竜王との言葉のやりとりがおもしろい。

 本書は、朝鮮の口承芸能であるパンソリの絵本。パンソリは、18世紀初めに朝鮮半島南部に生まれた民俗芸能。1人の唱者が鼓手の太鼓拍子に合わせて、節をつけながら物語を語り歌う。2003年にはユネスコ世界遺産の無形文化遺産として指定された。

 本書は、パンソリ「水宮歌」から抜粋したパンソリ部分は橙色の文字で、再構成された解説部分は黒色の文字で表している。付録のCDに収められたパンソリの歌い手は12歳の男の子。見て聞いて歌って楽しむ絵本。 

[朝鮮新報 2006.5.13]