〈朝鮮と日本の詩人-10-〉 佐藤惣之助 |
青き大同江のほとりに立ちて この詩は佐藤惣之助が1928年に朝鮮、旧「満州」、モンゴルを旅行したあとに著わした紀行文「アリラン・アラリヨ」に収められている即興詩である。 詩人は仲秋の空の下に広がる平壌のたたずまいを、芸術美の建造物である「大同門」と「乙密台」に集約して「川」「月」「秋風」「星」という自然の風景で優美につつみ、そこから、旅人にありがちな郷愁の情を「涙そそぐは」と吐露している。 擬古文調で書かれているために、詩人の旅愁がさらに効果あるリズムをつくり出している。詩全体のトーンは「古きよき時代」の朝鮮への憧憬であり、そこに植民地的現実への批判を読むことができる。 この詩人は自分について「私は理想派だ。そしてロマンチックで…極端に美しいものを愛する」と語っている。平壌をそのようなものとして即興的に詠んだ詩だと解釈してもよいだろう。 彼はまた色彩感覚の鋭さとエキゾチシズムをもってよく北原白秋と比較される。右の詩にも、いささかはこうした特徴が見られなくもない。 「詩魔に憑かれた魔性の人」(朔太郎)と評された生活派詩人佐藤惣之助は、演歌「赤城の子守唄」「人生劇場」なども作詞して、日本の現代詩に大衆性を付与した詩人として名を残している。(卞宰洙、文芸評論家) [朝鮮新報 2006.5.26] |