ハングル絵本で学ぶ文化 東京 渋谷で連続講座 絵本を通して「根っ子」を伝える |
東京・渋谷の東急プラザで4月15日から毎月1回ずつ3回に分けて連続講座「絵本で学ぶ韓国の文化」が開かれている。講師は韓国絵本翻訳者としても知られる東京純心女子大学・大竹聖美助教授(こども文化学科)。20日は、南の絵本の代表的な作家、作品の紹介と、魅力的な未邦訳作品を多数原書で紹介した。 はじめての絵本
大竹さんはまず、パソコンを使って、前回紹介したはじめてのハングル絵本「あかいきしゃ」(アートン刊)の原書(《기자 ㄱ ㄴ ㄷ》/비룡소)のパソコン絵本を紹介。参加者らと共に原文を音でたどりながら、「ㄱ」「ㄴ」「ㄷ」「ㄹ」…とハングルの旅を楽しんだ。「ハングルは母音と子音の組み合わせでできている。語順は日本語とほぼ同じ」。 次いで日本でも小さな子どもたちに人気が高い「いない いない ばあ」の韓国絵本(《열두띠 동물 까꿍놀이》/보림)の紹介。スクリーンに映し出された動く絵本のこいぬが前足で顔を覆いながら、「いなーい いなーい わんわん こいぬ いなーい」と言った直後に「ばあ!」と勢いよく顔を明かすと、場内からは思わず「あははは!」と、笑いがふきだした。 また、南で翻訳出版されベストセラーとなっている日本の絵本「おててがでたよ」(林明子)も動く絵本で紹介。幼児が初めて触れる絵本を次々に取り上げた。 伝統へのこだわり
ほかにも、「チョガクポ(쪼각보=ハギレ)」をつなぎ合わせてその数をかぞえながらポジャギを作るすうじ絵本(《한조각 두조각 세조각》/초방책방)や、伝統的な民族音楽を絵本にした作品(《사물놀이》/길벗어린이) も紹介。 大竹さんは講義の中で「数字の本に登場するチョガクポの布は自然の草木で染めたもの。巻末には生地の色が紹介されており、その名は、栗色、ヨモギ色と、植物の名前をそのまま使ったものが多い。韓国の人は自然との調和をとても大切にしている」と説明した。 「そもそも、ハングルという文字も、天、地、人を象徴したもので、天と地の調和の中に生きる人間を理想とする基本思想がその形態に表現されている。農楽で使われる4つの打楽器(プク、チャンゴ、ケンガリ、チン)は、それぞれ雲、雨、雷、風を表したもの。絵本は、独特のリズムを流れるような絵と波打つ文字などで表現した」と語った。 一昨年、アートンから刊行された「あずきがゆばあさんとトラ」は、朝鮮の伝統的な紙である「韓紙」を使って製作された。近年出版された絵本作品を通して、作家たちの「伝統」へのこだわりが垣間見れた。 民衆の視点
また大竹さんは、「韓国の絵本には、日本でよくある子どもの遊びなどのナンセンスな絵本より、リアリズムの作品が多い」と強調した。「南では、『386世代』(政治、文化などの分野で活発な行動をしている世代。30代で、民主化運動が盛んだった80年代に学生時代をすごした、60年代生まれの人たち)と呼ばれる人たちが、子を持つ親となり、作家をはじめ出版に携わる人たちの中にも民主化運動や学生運動に関わった人が多い。彼らが自分の子どもたちに外国のものではなく、自分の『根っ子』をしっかりと伝えようとする運動もある」と語った。
その作品が、民衆歌謡の創作者としても知られる金民基の歌を絵本化した「白い珍島犬」(《백구》/사계절)。「お姉ちゃん」(《누나》/세상모든책)は、貧民街で暮らす幼い姉弟の姿を描いたリアリズム絵本である。 参加者の長田雅子さん(神奈川県川崎市、58)は、「韓流ブームがきっかけで言葉や歴史を学ぼうという人たちが増えてきた。私はドラマ『バリでの出来事』のヂソクのファンで、先日もドラマの舞台に行ってきたが、南では小さな子どもたちも現代史をしっかり学んでいるのに対して、日本では現代史をちゃんと教えていない。南で若い作家たちが民衆の側に立って意欲的な作品を出版していることにとても感銘を受ける。また、大竹さんのような若い日本人もいるということも励みになる。これからの講座も楽しみにしている」と話した。(金潤順記者)
7月から毎月1回第3土曜日に「絵本で味わう韓国の子守唄とハングル」が開講される。内容は、7月15日=絵本や映像を使いながらハングルの成り立ちと特性を学ぶ、文化としてのハングル講座。8月19日=子守唄の絵本をテキストに、伝統的な育児文化と宇宙観に触れる。CDを聴きながら、独特なリズムと言い回し、ユニークな擬音語、擬態語を楽しむ。9月16日=世界の注目を集める韓国絵本の代表的な作家、作品の紹介、魅力的な未邦訳作品も多数原書で見せる。受講料は全3回9900円、15時30分〜17時。東京・渋谷東急プラザ7、8階「東急セミナーBE」。 【問い合わせ】 TEL 03・3477・6277。 [朝鮮新報 2006.5.27] |