top_rogo.gif (16396 bytes)

〈本の紹介〉 現代韓国の安全保障と治安法制

 本書は南の軍事政権から民主化に至る歴史的過程を概観し、米国の軍事戦略の影響下にある安全保障の現況を分析。経済活動の相互依存がかつてなく強まり、人的、文化的側面もその結びつきが急速に強まっている東北アジアにおける平和構築をめざす。

 本書の編集者・徐勝立命館大学教授によれば、分断60年の間に韓国社会を規定してきた軍事態勢、軍事文化の影響と支配、そこからの脱出である民主化運動の過程、ならびに独裁政権の統治装置として動員されてきた治安法体系の持つ諸問題を概観したという。

 9.11以降、対テロ戦争を掲げて激変するブッシュ政府の軍事戦略の余波を受けた21世紀初頭の北東アジアにおける平和、安全保障の環境変化とそれが南に与えた影響、さらに金大中政権後期および盧武鉉政権下の韓国政治の変動と北南関係の変化を検討し、米韓相互防衛条約と日米安保条約、地位協定の日韓比較がなされたタイムリーな刊行となった。

 同時に、現代韓国にとっても最大の関心事である、日本の改憲と軍事大国化への動向を日韓双方の視点から論じた。また、従来は法、政治分野で扱われることの少なかった、軍における「死者の弔い」の問題を取り上げた。

 本書は14本の日本と南の専門家による論文を大きく4部に分けて構成している。
第1部、現代韓国の軍事、治安法制の歴史と性格、第2部、現代韓国の安全保障政策とアメリカ、第3部、軍事、治安法制の日韓比較、第4部、日本の軍事大国化と東アジアである。

 本書によって、かつて国家安全論による民主主義の抑圧や、2重、3重に張りめぐらされた治安弾圧体系を現代韓国がどのように克服してきたかという道筋と、それにもかかわらず、今もなお、いかに多くの難題を抱えているのかという点が浮き彫りにされている。これは、平和主義、民主主義を重視してきたはずの日本が、戦後半世紀を過ぎて、軍事、治安重視へ傾斜を強めていることときわめて対照的なことである。

 現在の東アジアの政治、経済、軍事、文化の潮流を洞察するうえで、待望の書といえよう。(徐勝 編、法律文化社、TEL 075・791・7131)(朴日粉記者)

[朝鮮新報 2006.5.29]