top_rogo.gif (16396 bytes)

若きアーティストたち(37)

金剛山歌劇団高音チョッテ奏者・李淑任さん

「日本公演中のコンクール参加。大変だったけど団員と家族が支えてくれた」

 先日、東京都千代田区の朝鮮会館で第16回「2.16芸術賞」個人競演民族竹管楽器部門2位を受賞した金剛山歌劇団・李淑任団員(26)に、朝鮮の文化省から贈られてきた証書とメダルの伝達式が行われた。「2.16芸術賞」は、朝鮮で最も権威ある芸術コンクールで、国内でも有名な芸術家をはじめ芸術教育機関の教員、学生たちが参加する。今回は民族声楽、民族指弾楽器、民族竹管楽器、バイオリン、チェロ、アコーディオンおよびバヤン部門に分かれて行われ、1月末から2月にかけての本選には、昨年2回にわたって開かれた予選を通過した155人の優秀なアーティストたちが参加した。

 李さんにとって今回の挑戦は、学生時代から「憧れの存在」だった先輩楽士たちと肩を並べて演奏する、プロのアーティストとしての「自信」と「箔」をつけるためのものとなった。

 高級部のときから民族器楽部に所属し、民族楽器の音色と民族音楽の世界に深く魅せられてきた。高3の進路指導で当時、金剛山歌劇団の指揮者だった白在明さんに音楽の道に進みたいとの夢を打ち明けたことがあった。「待ってるから、遊ばずしっかり勉強しなさい」と言われた言葉を励みに、大学時代は民族音楽の世界に没頭した。

 卒業後は晴れて憧れの金剛山歌劇団に入団。しかし、器楽部といえばその大半が学生時代に平壌音楽舞踊大学で朝鮮の名高い芸術家たちによって直接指導を受けてきたエリートたちばかり。高級部から民族器楽をはじめた李さんは人知れず胸のうちに負い目を感じていたこともあったという。

 「(今回の受賞で)まだまだヒヨッ子だけれど、これでやっと金剛山歌劇団の楽士の一員になれたんじゃないかなと思えます」と笑顔がこぼれる。

「高音チョッテは特有のもの悲しさと華やかさをもっている。男らしくもあり女らしくもある楽器」

 李さんが吹く「高音チョッテ」という楽器は、朝鮮に伝わる新羅三竹(横に構えて吹く3種類の竹管楽器)のひとつであるチョッテを改良し、その音色、奏法を生かしながら、より高音域の演奏を可能にしたものである。チョッテの歴史は古く、5世紀初頭に築かれた徳興里の高句麗古墳壁画にチョッテを吹く楽人が描かれている。

 本場朝鮮で竹管楽器は「男の楽器」として知られている。今回コンクールでも竹管楽器部門出場者のうち女性は李さんのみだった。

 「チマ・チョゴリを着て立つだけで注目を浴びました。『総聯から女性が来た』『笛を吹く女性だ』と場内がわくんです」

 金剛山歌劇団でも現在、チョッテ奏者で女性は李さん1人。だが、「日本では(朝鮮学校の)民族器楽部自体に女子生徒が多いため女性奏者がそれでもいる。心強く思っている」という。

 「高音チョッテはアンサンブルの中で光る楽器。金剛山歌劇団のサウンドの中の1つとしてこれからも花を添えたい」。普段はオーケストラピットの中で歌や踊りの伴奏をしている。「それでも公演が無事終わり、客席から拍手が響くととてもうれしい」と笑顔で語った。(金潤順記者)

[朝鮮新報 2006.5.31]