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平和への静かな鐘の音を

高麗美術館 常務理事 鄭喜斗さん

 京都の市内には、小さな美術館があちこちに点在する。鴨川を北に上った所にあるのが、88年、在日1世の故鄭詔文さんによって開設された高麗美術館。鄭さんは1億5000万円の私財を投じ、建物と蒐集品を財団に寄贈、オープンから4カ月後に帰らぬ人となった。

 その鄭さんの遺志を継いだのが、長男で同美術館常務理事の鄭喜斗さん。

 「父は在日同胞や子どもたちが、民族の文化遺産を実際に目で見、手で触って、民族の心を知り、誇りを培ってほしいと願っていた。今年で開館18年になるが、ウリハッキョの先生が子どもたちを引率して来たり、米国、フランス、イギリス、中国など世界各地で暮らす同胞たちがブラッと来て、静かに、じっくりと作品を見てくれるのがうれしい」と話す。

 今年から来年にかけては美術館の研究講座「朝鮮通信史」が8回開催される。豊臣秀吉の朝鮮侵略の爪あとを克服し、不戦と対等な外交関係を築くため知恵を絞った朝鮮朝と徳川幕府。鄭さんは、現在の朝鮮半島と日本の関係をみる時に、善隣友好の歴史を振り返り、先人の知恵に学び、真の友好関係を築くうえで参考になればと企画したと、謙虚に語る。

 数々の天災や戦乱をまぬがれ、京都の美術館の中で静かにたたずむ美術品。そこから発信される平和への静かなメッセージ。そして、騒々しい世相に、「朝鮮通信史」研究講座の企画のようなアグレッシブな鐘を鳴らそうとする試み。何事にも情熱的に取り組むのは父から受け継ぐDNAなのかもしれない。

[朝鮮新報 2006.6.13]