top_rogo.gif (16396 bytes)

〈みんなの健康Q&A〉 アルコールと健康(中)−関連疾患

 Q:酒の席ですぐに顔が赤くなる人がいますが、酒に弱いということですか。

 A:飲用アルコールであるエタノールが代謝されて生成されるアセトアルデヒドは生体に対する毒性が強く、悪酔いや二日酔い症状をもたらす主な原因となります。この物質を分解処理するためにアルデヒド脱水素酵素が活躍するのですが、この酵素の作用が弱いか失われている人はアルコールに弱いといえます。飲酒時の体調にもよるのでいちがいには言えませんが、アセトアルデヒドがすみやかに減らないと飲酒後すぐに赤ら顔になりやすいようです。また、すぐに動悸や頭痛、あるいは吐き気をもよおすので、楽しくお酒が飲めませんね。

 Q:酒の強要や一気飲みによる急性アルコール中毒が社会問題化しています。

 A:比較的軽い場合だと、全身紅潮、ほてり、動悸、頭痛、悪心、嘔吐ですみます。前夜ぐでんぐでんに酔って記憶がはっきりしないのに、朝目覚めてみると、ちゃんと自室でパジャマに着がえてベッドに寝ていたという笑い話もよく聞きます。

 重症化すると、自分のしゃべったことをあとになってすっかり忘れてしまい、あばれて暴力をふるったことや器物破損などの危険な行為をしたことが記憶からとんでしまいます。だいたい言語は支離滅裂となり、じっと座っていることも、まともに歩くこともできなくなります。さらにアルコール血中濃度が上がると、意識が低下して昏睡状態におちいり、体温も維持できなくなり、全身の血液循環が悪化します。酔って眠っているのではなく、意識を失っているのだということをまわりの者が認識して、すぐに病院に連れて行かなければなりません。

 Q:毎日のように相当量のアルコールを飲んでいると身体にどんな悪影響がもたらされますか。

 A:たくさんありますが、代表的なものをかいつまんで解説することにします。

 脳への影響をみますと、意外と知られていないのが脳出血と飲酒量が直線的な比例関係にあるということです。すなわち、飲酒量が過ぎると怖いことに脳出血の危険度が増すのです。そのほかの中枢神経障害として、アルコール性健忘、言動異常、てんかんなどがあります。アルコール常飲者が急に飲酒をやめると、神経細胞の興奮性が逆に高まり、断酒24〜96時間後にふるえ、「壁に虫がはっている」などの幻覚、不穏な言動、けいれん発作が起こりやすくなります。これをアルコール離脱症候群といいます。

 Q:ビタミンB欠乏症が生じやすいと聞いたことがあります。

 A:はい、とくにビタミンB1が不足しやすく、エタノールそのものの毒性とあいまって、性格変化、うつ病、認知症、運動障害などを引き起こします。末梢神経障害として、両足のピリピリ感、疼痛といった感覚障害をきたすことがよく知られています。易疲労感、食欲不振につづいて両下肢のしびれ、筋力低下、動悸などが特徴的に認められ、合併症として心臓機能不全をきたす疾患もあります。

 Q:アルコールといえば肝臓によくないというのが一般的ですが。

 A:はい、昔からアルコールといえば肝臓病でしたね。肝臓は体の栄養、物質代謝などにとても重要な役割をはたす臓器です。

 アルコール過飲により最初に起こる疾患は脂肪肝で、大量飲酒者のほとんどに認められます。この脂肪肝の状態にある人が、連続大量飲酒を繰り返すと、その20%にアルコール性肝炎が発症します。この場合、黄疸、発熱、嘔吐、下痢などにおそわれ、重症化して生命がおびやかされることもあります。さらに長期に大量飲酒すると、多くはアルコール性肝硬変に至ります。アルコール性肝硬変は、日本酒換算で5合程度以上を約20年以上続けている人に多発します。ただし、女性の場合はその3分の2の飲酒量で、飲酒期間も約12年程度で肝硬変になってしまうことが多いといわれています。そのまま飲酒を続けると5年以内に3分の1以上が死亡するという統計があります。

 Q:やっぱり恐ろしいですね。

 A:急性膵炎の約30%、慢性膵炎の約70%がアルコール性です。へたをすると命取りになるので膵炎も軽視できません。

 Q:糖尿病や高血圧などの生活習慣病には影響を与えますか。

 A:大いに関係があります。アルコールは胃酸分泌を増加させ、食欲を亢進させる作用があり、なおかつアルコール自体が体内でエネルギー源になるため肥満を助長します。こういったことから長期的には糖尿病を悪化させ、中性脂肪を上昇させます。また、血糖調節に関係する膵臓の機能を低下させる一方で、糖尿病薬の作用を邪魔して低血糖を引き起こすこともあります。

 また、アルコールを飲むときの肴として塩分の多いものを摂りがちです。高血圧を促進する原因になるので、注意しましょう。

 Q:アルコールを飲むと動脈硬化や心臓病の予防効果があると聞いたことがありますが。

 A:酒飲みが喜びそうな疫学的報告があるようですが、その場合、もちろん適度のアルコールという条件付きです。だいたいアルコール換算にして30ml、1合程度がそれに相当します。適度の飲酒によって動脈硬化を抑制する作用を持つHDLコレステロールがふえるとのデータがあるのです。しかしながら、過量の摂取は中性脂肪を上昇させるため、逆に動脈硬化が促進される危険が生じます。(金秀樹院長、医協東日本本部会長、あさひ病院内科、東京都足立区平野1−2−3、TEL 03・5242・5800)

[朝鮮新報 2006.6.16]