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〈みんなの健康Q&A〉 アルコールと健康(下)−疾患とのつき合い方

 Q:酒が過ぎると尿酸値が高くなって、痛風になりやすいというのはよく知られていますね。

 A:アルコールは生体内での尿酸生産を増加させ、かつ尿酸排泄を低下させるため、血中尿酸値を上昇させます。

 Q:尿酸のもととなるプリン体がビールに多く含まれているということで、最近、プリン体を少なくしたビールや発泡酒が市販されています。これだとたくさん飲んでも平気なのでしょうか。また、ビールはだめでも焼酎なら大丈夫ですか。

 A:どちらも誤った考えです。確かに酒類の中ではビールは比較的プリン体含有量が多いのですが、食品全体からみるとむしろ少ないほうなのですよ。実際はビールから摂取するプリン体よりも体内で合成されるプリン体に由来する尿酸のほうが圧倒的に多いということを知るべきです。それに、さきほど言いましたように、アルコール自体の尿酸値上昇作用を忘れてはなりません。

 Q:アルコール飲料がガンの原因になることはありますか。

 A:世界保健機関によると、発ガンの原因の一項目としてアルコール飲料が列挙されています。もちろん長期、大量摂取が問題となるわけで、とくに口腔ガン、喉頭ガン、食道ガンおよび肝臓ガンの原因になりうると指摘されています。実は、その一方で少量の飲酒によりむしろ発ガン危険度が下がるともいわれています。

 Q:アルコールの妊娠、授乳におよぼす影響について教えてください。

 A:母体を通じて胎児や乳児の体内にとりこまれ、受動的に障害を与えるとされています。母親が妊娠早期から慢性アルコール症であること、または相当量のアルコールを妊娠中に飲用していることが前提ですが、知能、発育障害、顔つきの異常、心臓や腎臓の奇形などが報告されています。

 Q:酒を飲んでは仕事を休んだり、暴力行為で周囲の人に迷惑をかけたり事故をおこしたりするのも大問題ですね。

 A:そのような問題飲酒は、急性アルコール中毒、二日酔い、アルコール精神病などを除くと、ほとんどがアルコール依存症によるものです。アルコール依存症は飲酒による一種の生活習慣病といえます。早期発見、対処が求められますが、詳しい話は別の機会にゆずります。

 Q:ワインには動脈硬化を予防してくれるポリフェノールというのが多く含まれているとかよく耳にします。

 A:ポリフェノール以外にもビールのホップなども体によいということで推奨されているようですが、これらはいわば非アルコール成分ですからアルコール飲料からあえて摂取する必要はなく、ふだんの食品からでも十分摂取することができる物質です。節酒すべき患者にとってどうのこうのという選択肢にはなりえません。アルコールそのものの実質摂取量が問題となるわけですから。

 Q:二日酔いの特効薬、よい対処法はありますか。

 A:なかなかむずかしい質問です。頭痛、吐き気と嘔吐のため口から薬や食物を入れるとかえってつらくなります。吐き気が強くなければ胃腸薬の類やおなかに負担がかからない吸収のよい飲み物を少しずつ飲むようにすれば、時が解決してくれるでしょう。ゆったりと横になって点滴でも受けるのが一番ですが、休日でなければなかなかそうもいかないのが現実でしょう。

 Q:これまでいろいろお話をうかがってきて、もう明日からはお酒を飲むのがためらわれます…。

 A:いやいや、そんな神経質にならないでください。酒は文化であり、儀式や日常生活にとってなくてはならないものです。朝鮮の言葉に「薬酒」という表現があるように、その効用も忘れてはなりません。

 中国唐代の詩人杜甫は「李白一斗詩百篇」と詠い、同時代の偉大な詩人であり、こよなく酒を愛した李白を讃えています。

 Q:お酒にもいろいろ種類がありますね。

 A:原料の糖分が酵母によってアルコールと炭酸ガスに分解されることを発酵といいます。この発酵によってつくられた酒が醸造酒です。日本酒、ワイン、ビールがこの仲間です。一方、醸造した酒を熱してできた蒸気を冷やし、再び液体に戻したものを蒸留酒といい、焼酎、ウィスキー、ブランデーがこれにあたります。醸造酒よりエキス分が少なく、アルコール度が高いのが特徴です。

 各種リキュール類、薬草酒、梅酒は混成酒といって、主に蒸留酒にいろいろな薬草や果実をつけ込んで独特の風味をかもし出したものです。

 Q:蒸留酒は炭水化物を含まないので肥満や糖尿病の人にはよいという説がありますが、本当ですか。

 A:蒸留酒の方がいいということはありません。食事療法で大切なことはその人にとって適正なエネルギーを摂取することと、その範囲内で必要な各種栄養素をまんべんなくとることです。エネルギー摂取の許容範囲内なら酒類を問わず少しぐらい酒を飲んでもちっともかまいません。

 Q:お酒はおいしく、楽しく飲むのが最高ですね。

 A:その通り。また、酒の種類によってそれぞれ飲み方も違うので、いろいろ試してみるのもいいですよ。

 Q:ビールの注ぎ方、日本酒の選び方、ワインの味わい方、ついでに教えてください。

 A:残念、時間がなくなってしまいました。お酒がおいしく飲める店も紹介したいところですが、またの機会ということで…。(金秀樹院長、医協東日本本部会長、あさひ病院内科、東京都足立区平野1−2−3、TEL 03・5242・5800)

[朝鮮新報 2006.6.21]