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〈本の紹介〉 人間選別工場−新たな高校格差社会

服従のメカニズムに警戒を

 フリージャーナリスト・斎藤貴男氏の自分自身の生いたちを明かす、書き下ろしルポ。

 構造改革のもとですすむ高校再編、全国で吹き荒れる高校統廃合を通して、無慈悲に若者が「人間価値」として選別、切り捨てられる実態をつぶさに描く。

 第1章「わが母校の声を聞く−都立北園高校」、第2章「強きを助け弱きを挫く−石原都政下の高校改革」、第3章 「改革の洪水で山河は荒廃す」、第4章「自律のために」で構成される。

 あとがき「若い人たちへ」で著者は、「本書で縷々綴ってきたような教育政策のあり方、新自由主義と呼ばれる諸改革、その背後にある政官財界のトップたちの思想、人間観を顧みる時、ぼくは言いようのない怒りに襲われる。このままでは本当に、特に恵まれた家庭に育ったわけでもない人間の希望は閉ざされ、まるで奴隷のような人生を強いられてしまう」と指摘する。

 そして、「階層間の格差が上から一方的に拡大されていく現代の日本社会は獣じみた野蛮な社会」「生まれつき恵まれた一部の『エリート』たちが立場を利用して何もかもぶん取ろうとしている」「彼らは高い所から若者たちを見下ろし、整列させ、分類し、格付けして、否も応もなく囲い込む。立場を利用して服従のメカニズムを浸透させていく。ジャングルの獣社会よりもはるかに、悪知恵、クソ知恵が働いてる分タチが悪い」と批判している。

 著者が、高校生や大学生、社会人になりたての若者に贈る渾身のメッセージ。(斎藤貴男著、同時代社、TEL 03・3261・3149)

[朝鮮新報 2006.7.8]