李玉禮先生 創作人形写真集 「꿈나라 고향길 ふるさと 夢の国」を刊行 |
詩的、情緒あふれるたたずまい 40年余りを民族教育の現場で過ごした李玉禮さんが、退職後に取り組んだ創作人形の仕事。これまでの10余年間に、ひとつひとつ手仕事で作った人形は100体を数えるという。 本書は李さんが渾身の力で生み出した作品の一部を、写真と文章で紹介したもの。詩的な情緒あふれる楽しい仕上がりとなっている。 李さんの創作人形の特徴は、「私自身がふるさとで見て、聞いて、体験したことを表現したもの」と自身が述べているように、ディテールにまで生活感があふれていることだ。しかも、その思い出をオブラートに包んだような上品なたたずまい。見る者に、何ともいえぬ居心地のよさを与えてくれる。 李さんが渡日したのは45年7月、解放の1カ月前、19歳のときだった。ふるさとの村で無邪気に遊んだ幼き日々、そり遊びやなわとび、陣地取り、コマ回し…楽しかった思い出は、今も鮮やかなままに、まぶたに蘇ってくると述懐している。 出稼ぎに出て帰らぬ父を待つ母、息子からの手紙を繰り返し眺めていた祖母の姿、昼も夜も働き詰めだったふるさとの大人たちの姿を、李さんは人形の世界にみごとに投影した。薄暗い灯りのもとで機織りをしていた母の姿を、丁寧な人形作りによって再現している。また、作品は、昼は畑仕事、夜は機織りや針仕事など厳しい労働によって生計を支えていた朝鮮の農村女性たちの姿を浮かびあがらせていく。 糸を紡ぎ、機を織る人形たち。そこに、伝統的な家内労働の厳しさを想像できるが、李さんはここにある思いを込めた。それは、人形たちに絹の衣装をまとわせたことである。貧しかった朝鮮女性たちの当時の生活実態からは離れていても、「私は母や祖母、ふるさとの女性たちに贈ることのできなかった絹の服を、せめて人形にだけでも美しく着せてあげたかった」と言う。 自らの暮らしの体験から生まれた伝統美、風習、生活様式…それらが人形に写し出され、農作業や村祭り、結婚式などの場面毎に、圧倒的なリアリティーで迫ってくる。1世ならではのふるさとの香りが作品から立ちのぼってくるようだ。 異国に生まれ、育ちゆく3、4世たちに、本書はホンモノの感性や情緒を 抱かせてくれるに違いない。(朴日粉記者) 李玉禮先生 創作人形写真集
[朝鮮新報 2006.7.21] |