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〈本の紹介〉 李玉禮先生 創作人形写真集 「꿈나라 고향길 ふるさと 夢の国」

ふつふつ溢れる民族への愛

 この本を手にした読者は、その語りと愛らしい人形の表情や遊び、労働やくらしの風景に心癒されることであろう。そして幼い頃の「ふるさと」をしのび、自分の人生と重ね合わせて、民族の美しい伝統文化に新たな感動を覚えるに違いない。

 私たち「朝鮮女性と連帯する日本婦人連絡会」が、李玉禮先生と出会い、その人形と出会ったのは、1995年、阪神淡路大震災の年であった。被害を受けた朝鮮学校の復興カンパを呼びかけるために、李先生にハラボジとハルモニの人形を制作していただくよう依頼した。この人形は、民族学校を創設した在日一世の努力と、志を消してはならないという意味を込めたものであり、その発案は「朝鮮学校を支える兵庫女たちの会」であった。

 その後、李先生は、創作人形の研究所に学び、本格的な創作活動に打ち込まれた。民族教育の教師を退職し、自らの中に潜在する人間の能力を見事に開花させられた70歳からのチャレンジに驚嘆した。

 19歳で日本に渡り、在日朝鮮人に対する差別と苦難の日々を生き、闘い抜いてきた李先生の作品には、心の中に生き続けた「ふるさと」への愛と、祖母、母から受け継いできた民族文化への愛がふつふつとあふれ、人形に温かい雰囲気と優しさを醸し出し、人々の心を捉えてはなさない。しかも、その愛と民族の尊厳を、確実に次の世代に伝えたいという李先生の意思が伝わってくる不思議な力がある。

 しかし人形の中には、日本に連行されて、行方のわからぬ肉親を待ち続け、祈り続けている老いた母の姿がある。それは、まさしくふるさとの現実の光景であることを忘れてはならない。日本人は、このような朝鮮民族の心と暮らしの中に深く打ち込まれた傷痕を、どのようにして取り除くか、私は李先生のメッセージを重く受け止めたいと思う。

 そして、李先生が愛する「ふるさと夢の国」は、統一された「ふるさと」で、創作人形が醸し出す風景であり「民族文化」の豊かな「ふるさと」だろう。

 私はこの本が、一人でも多くの人々に読まれ、李先生とともに「民族の心」を共有し、子供たちに語り伝えてくださることを心から願ってやまない。同時に、真の日朝友好を実現したいと願うものである。(朝鮮青年社、TEL 03・3813・2291)(元参議院議員 朝鮮女性と連帯する日本婦人連絡会代表 清水澄子)

[朝鮮新報 2006.7.22]